リクルート出身の女性社員が語る、 転職後に気づいた大手企業思考の落とし穴 ~株式会社キッズライン 榊 和花~

社会的な課題となっている待機児童問題を解決すべく、ベビーシッターのオンラインサービスを運営している株式会社キッズラインは、子どもを預けたい親だけではなく、理想の働き方を模索する保育士の人たちにとっても満足度の高いサービスを展開するベンチャー企業だ。そんな同社でベビーシッターの採用戦略などに携わっている榊和花氏は、株式会社リクルートジョブズでキャリアを積んだのち、結婚を機に留学を決意。帰国後、キッズラインに入社した異色の経歴の持ち主だ。そんな榊氏がベンチャー企業に転職して気づいた、大手企業時代には意識していなかった、ある思考の癖とは―。

社会の課題を解決したいという深層の思いに気付く

―新卒でリクルートジョブズにご入社されたと伺っておりますが、その経緯についてお話いただけますか?

榊 和花:
当初は新聞記者を目指していたものの、就職活動で知り合った友人に「あなたにはきっとリクルートがあう」と薦められて説明会にいったのがはじまりでした。そこで「僕たちは企業、そして社会の課題を解決する会社です」という言葉を聞き「私が本当にやりたいことはこれだ」と気づいたんです。また、面接官の社員の方が素敵な人ばかりで、「こんな人たちと一緒に働きたい」と思い、入社を決めました。

自分の価値を見つけるきっかけとなった上司の一言

―新入社員時代にはやはり苦しい時期もありましたか?

榊 和花:
入社当初は1日に200件近く朝から晩まで電話をかけていました。その時期はやはり「自分がここにいる意味は何なんだろう」という思いもありました。また営業だったので、やはり数字を上げなければいけないというプレッシャーは感じていました。


―ご自身にとってブレイクスルーとなったきっかけは何ですか?

榊 和花:
入社2年目の時が転機になりました。その頃までは、お客様が「買う」と言っても「買わない」と言っても、それをそのまま社内に伝えているだけの、仕事をしていたんです。「それって言われた通りに、売っているだけでただの伝書鳩だよ。君が介在する価値は何なの?」と上司に言われ「これでは介在価値はないし、対峙する企業の課題解決からは程遠い」と思い知ることになりました。それがきっかけで、「私は求人広告を売る人間ではなくて、お客様の採用課題を解決する人間なんだ」というふうにマインドを切り替えることができたことが、大きかったです。

留学先で知った“外から見た日本”

―その後、リクルートジョブズを退職しようと思われた理由についてお聞かせいただけますか?

榊 和花:
リクルートで社内で半期に一度「価値ある仕事」としてがいくつか選出され、プレゼンテーションをする舞台があるのですが、それを目標としていまして、そこに立つまではまずは頑張ろうと決めていました。4年目の終わりに実際に叶えることができ、またそれと同じくらいのタイミングで結婚もしました。そこで、今後子どもができればなかなか難しくなると思い、以前から興味のあった中華圏への留学を決断したというのが、退職の経緯です。


―留学先ではどのような経験をされたのでしょうか?

榊 和花:
学校に通いながら現地のITベンチャーなどでの勤務も経験しました。やはり知り合いが1人もいない土地での海外生活の経験は自信につながりましたし、様々な気づきを得ることができました。語学学校のクラスメイトの20歳のベトナム人の女の子に「日本はもう古い国だよね」みたいなことを言われたこともあり、「そう思われているのか!」と新鮮さと同時に寂しさみたいなものを感じました。ただ、そのおかげで「日本人として、もっと価値あること、面白いことをやっていこう」というふうに思う原動力にもなりました。

“女性社長”に対する自分自身の先入観が崩れた出会い

―留学から帰国されて、御社に入社された経緯をお教えください。

榊 和花:
実は前職を退職したあと、留学までに3ヶ月ほど期間が空いていまして。当時、弊社代表の経沢のことを本で読んでいて、「実際のところ、どんな人なんだろう」という興味があり、潜入してみたい!と思い、短期アルバイトとして入ったのがキッズラインとの出会いです。短い勤務でしたが、その後留学中も経沢から連絡を頂いたり、たまに帰国した時に食事に誘っていただいたり、関係を続けさせていただいておりました。留学を終えて就職活動をしている時、様々な企業をみて悩んだりもしましたが、リクルート時代からの自分のスタンスである「社会課題を解決したい」という思いと、短期アルバイトの時に本当に驚いた圧倒的スピード感が忘れられず。また裁量権を持って仕事ができるというキッズラインの環境に魅力を感じたのが、最終的に入社の決め手となりました。


―経沢社長の第一印象についてお聞かせいただけますか?

榊 和花:
“女性社長”って時に斜に構えて見られる部分があるかもしれないのですが、経沢は実際のところ、非常に論理的で、決断力や機動力が凄まじく、「キラキラしている」というイメージ以上にビジネスパーソンとしての側面が強くて、本当に「格好いい」と思いましたね。

ベンチャー企業で働くことが病みつきになる理由

―現在のお仕事内容についてお教えください。

榊 和花:
全国のベビーシッターさんの採用がメインミッションとなります。採用人数は毎月100名を超える数となります。採用戦略の立案から、実行。また活動するベビーシッターの皆さんは1500名を超えますが、働きやすく満足度が高い環境作りのほか、現在はサービスの全国展開なども担当しています。


―リクルートという大手企業からベンチャー企業に転職をされて感じた違いや、またはベンチャー企業ならではの面白さはどういったものがありますか?

榊 和花:
今までBtoBのビジネスだったのですが、今はカスタマーと距離が近づいたので色々な声を拾うことができるというのがとても面白いです。社会の課題に対して、国がなかなか動けないところを民間が解決していく。しかもこんな少人数で、保育について困っているたくさんの親御様を救うことができるという点でも、非常にダイナミックさがあると思います。自分が関わる仕事の幅も、以前では考えられないくらい広がりましたし、スピードは凄まじく面白いです。またサービスをより良くしていくために、小さなこと積み重ねですが、1日に何十個もの決断を下していく時もあり、瞬間的にの判断する力が少しずつ養われていることを感じます。ベンチャーならではの面白さを知り、病みつきになってしまいましたね。


―御社で働かれてやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

榊 和花:
活動するベビーシッターの方と会話すると「キッズラインでの活動をはじめて、自信を持って働けるようになって幸せです」などという声をたくさん頂きます。中には、かつて保育園で働いていた保育士の方で、子どもが好きで一生懸命仕事をするけれども、親御様から改めて感謝をされる機会は多くはなく、また長時間労働、勤務時間に対して給与は低い、などが重なりやるせなさを感じていた方もいるのが現状です。しかし、キッズラインで、1対1で子どもの成長に蜜に関わることにやりがいを感じたり、親御様にお仕事の度に「ありがとう」と感謝していただいたりされる中で、「自分の人生が変わった」と仰ってる方もいます。

さらには保育園勤務時代の2倍3倍の収入を得て、イキイキ働く人も。1500名以上のベビーシッターの皆さんの人生に関わっているので、幸せに働くことのできる人が1人でも増えていくことには大きなやりがいを感じますね。

“評論家にならないこと”を心掛ける

―お仕事をする上で心掛けていることは何ですか?

榊 和花:
2つありまして、1つはリクルート時代から心掛けていることで、「他責にしない」ということです。もう1つは、キッズラインに入社してから学んだのですが「評論家にならない」ということです。大手企業は分業なので、その癖が抜けず、入社当初は「このシステムをこう変えたほうがいいんじゃないですか?」と軽く言ってしまっていました。ただ、十数名が必死に走っている組織の中で、自分は手を動かさずに指示だけして、誰かに丸投げするということはなく、協力してやります。

やればベターなことはたくさんありますが、限られたリソースで優先度の高いものから今のベストな選択をしていく必要がある。その点が欠落していたということに気付き、自分が恥ずかしくなりました。外から評論家のように指摘をするのではなく、自分が責任をもって実務まで関わる覚悟が必要ということを、この会社で学ぶことができました。

より良いサービスをつくるためのインプットを増やす

―今後のご展望についてお聞かせください。

榊 和花:
現在、37都道府県まで利用可能エリアを展開してきましたが、現在も「私の地域はサービス対象には入ってないんでしょうか?」というお声も頂くことがあります。日本中どこでも気軽に頼れる育児パートナーがいる、という世界観を目指しているので、まだまだ広げていきたいと思っています。また、弊社を通して働いているベビーシッターの方々に「ずっとここで働きたい、キッズラインと出会えて良かった」と思ってもらえるような環境を更につくっていきたいと考えています。


―それを実現させるために、今努力されていることはありますか?

榊 和花:
特に去年1年間は頭の中の95%くらいが仕事でしたので、ほとんど家族か仕事関係の方としか人と会っておらず・・。ただ、今後サービスをより良くしていくためにも、外からのインプットが必要と感じていて、思考を固定化させないためにも、今年は週に1回は家族や会社以外の人と会うことが目標にしています。色々な人の話を聞いて、サービスに還元していけたらいいなと思います。

編集後記

まさに「待機児童問題」という社会課題の解決に直結するキッズラインのサービス。ベビーシッターを受ける親御様だけではなく、保育士の方をはじめとしたベビーシッターに登録している人たちにも新たな働き方や、やりがいを提供できる同社のサービスは、今後更に需要が伸びていくに違いないと感じた。

榊 和花(さかき・わか)/1988年12月18日生まれ。
長崎青雲高等学校卒業後、早稲田大学に入学。2011年4月、新卒で株式会社リクルートジョブズに入社。2015年9月に同社を退職し、その後、香港・台湾に留学。2017年2月、株式会社キッズラインに入社。現在、ベビーシッターの採用戦略立案や全国展開等などを担当している。座右の銘は『はきものをそろえる』。

※本ページ内の情報は2018年3月時点のものです。

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