ーそのような状態から再起を目指すということは、並大抵の努力ではないはずです。再起を目指そうと思った時に、サポートしてくれる人が現れたのはなぜだと思いますか?

杉本会長:
民事再生の後、エスグラント時代にお世話になっていた方に頭を下げて回りました。

でも、意外にも皆さんの反応は「ノーサイド」つまり、終わった事を今さら言ってもしょうがない。まだ若いんだから次を頑張れという方々が多かったことがとても印象に残りました。

僕は本当に救われた気がしたんです。そして、ある日、五反田の雑居ビルに、残った社員が3人しかいない会社に帰った時、一緒にやってきた湯藤から「もともとゼロから始めたんだから、また2人でゼロから始めましょうよ」と声を掛けてもらい、スイッチが入ったのを思い出します。

ご迷惑をおかけした方々も含め、様々な方の元に伺い、もう一度チャンスをいただけないかとお願いに回りました。

当然、了承してもらえないだろうとは思っていたのですが、このまま終わる訳にはいかないという想いから、必死さが伝わったのでしょうか。10億単位のお金を貸してもらうことができたんです。

その資金を元手にして、当時、2011年に遡りますが、東日本大震災で全体が弱気ムードになる中、当社は大きな取引を成功させることができました。それがシーラホールディングスの基礎になっています。

あと、大事だなと思ったのは仲間の存在ですね。会社が潰れて給料が半分になっても自分のところに残ってくれた社員がいました。また、親しい先輩経営者は僕を信じてくれました。応援してくれた人の為に頑張りたい。その一心でした。

民事再生後しばらくして、分かった事なのですが、サイバーエージェントの藤田さんは1株も売らずに最後まで復活に賭けてくれていました。

当時は、役員の方々から「エスグラントは売ってください!もう泥舟です」と何度も言われていたようです…。なのに売らずに持っていてくれた…。

結局、ご迷惑はお掛けしてしまいましたが、この話を友人から聞いた時、覚悟が決まりました。

自分で言うのも大変おこがましいのですが、こうやって多くの人がサポートしてくれたのは、リーマンショックの時に逃げ出すことなく、正面から受け止めたことが大きかったのではないかと思っています。

今になって、本当にあの時逃げ出さなくて良かったなと痛感しています。本当に苦しくて「死」をも想像する1年でしたが、あの時、逃げ出していたら、私の人生はつまらないストーリーになってしまっていたと思います。

ーこうやって再起することができたのは、多くの人のサポートと杉本会長自身の大きな覚悟があってこそということになりますね。では、杉本会長はエスグラントコーポレーションの時代から今まで、どのような価値観を、仕事をする上で大事にしてきたのか教えていただけますか?

杉本会長:
特に大切にしている考えは、お客様と社員の為に「デザインとモノづくりに対し徹底してこだわる」、「全てにおいて“資産価値”を考える」といったことです。

「モノづくりにこだわる」というのは、自分自身が住みたいと思える物件を作るということにつながります。

僕は、神は細部に宿るという言葉を好んでよく使うのですが、細部に徹底してこだわりぬき、コストをかけてでも品質の良いものを作る事こそが、ディベロッパーとして永続する意義だと思っています。

今はまだ分かりませんが、40年、50年経った時にその価値観が必ず評価され、本物であるという証明をしてくれると信じています。

人生100年時代と言われますが、人間の寿命だけでなく、技術の進歩によって、建物の寿命も大きく伸びています。当社では、将来的な資産価値を重視した物件を手掛けていきたいと考えています。

マーケットの競争が激化していく中、良い物を良い場所で良い人たちが作り続けていく、そんな孤高の職人のような会社であり続けたいと思っています。

次に、「全てにおいて“資産価値”を考える」というのは、街の再開発などの将来性、人口動態を踏まえて、将来的に資産価値を維持することができ、「銀行から40年でも50年でも貸し付けたいと言われる物件」に投資する事を意味します。

また、不動産だけではなく、アートや車・時計など、一見、個人的な嗜好品と思われがちなものも、資産価値があるものに「投資」するようにしています。

マーケット価格はもちろん、オークションでどのような価格で落札されたか等、ヨーロッパやアメリカのデータを見ていると、楽しく学ぶことができますし、好きなものに投資をするということは、楽しく学ぶ機会になっていると思います。

以前はこんなことは全く考えていませんでしたが、倒産したことや自己破産してしまったことで、お金に対する価値観は180℃と言ってもいいほど、大きく変わりました。

2011年から、利益の一部を恵まれない子供たちに寄付をしています。また、最近では環境に恵まれていない若者を支援しようということで、杉本建築デザイン財団という公益財団法人を2019年7月に設立する予定です。

これからも、ライフワークの一つとして、恵まれない若者たちを支援することも続けていきたいと思っています。

ープライベートでは何をされているのですか?会社にはワイン部があるとお聞きました。

杉本会長:
プライベートでは、やっぱり経営者の方々と交流をもたせて頂くことが多いですね。

特に先輩が多いですね。大体、みんなでワイン飲んでます。(笑)

会社のワイン部では、社員とお客様と一緒に「ワイン会」を開催しています。当社のファンでもあるお客様に僕のコレクションからワインをご提供することもあります。社員とお客様とのワイン会は、とても充実した時間を過ごさせてもらっています。

また、スポンサーをやっているので、野球観戦はよく行きますね。広島カープはかれこれ30年ファンをやっています。

ー最近ではメディアでも騒がれていらっしゃる様子ですが・・・(笑)、何か一言お願いします。

杉本会長:ノーコメントでお願いします・・・。

ー最後の質問になります。杉本会長が掲げられている理念や行動指針の中で特にこだわっていることを教えてください。

杉本会長:
当社の行動指針の中に「リーマン・ショックを忘れるな」というくだりがあります。一言で分かり易い行動指針ですが、これが原点になっていると思います。

わが社では、グループの役員に対しても行動指針を定めています。

行動指針は、「日頃から倹約を心がければ経費削減など必要ない」、「収入を生まない物は資産ではなく無駄な荷物である」、「分からない事を分かるふりをする事は最も愚行である」「周囲が悲観的な時、景気が悪い時は攻めの時であり、周囲が楽観的で景気がよい時こそ守りの時である。」などなど、16個あります。

簡単にできることではありませんが、これを常に心に留め置き、我々が会社の舵取りを担っているという責任感を常に持ってもらうようにしています。

■インタビューを終えて

杉本会長へのインタビューはこのようにして終わりました。

およそ45分のインタビューの中で、杉本会長の壮絶な生い立ちや仕事に対する独自のこだわりに触れることができました。

インタビューの中で「正しいことを正しくやるということは、当たり前のようで時に難しい。仕事もきれいごとばかりじゃない。利益を出さなければ存在すらできないのが会社だ。しかし、きれいごとを言い続け理想を目指すのが大事なことだ」と仰っていました。

営業を積み重ね、とてつもない大きな失敗をして、多くの仲間に助けられた経験があったからこそ、こうした一つ一つの言葉に繋がっていくのでしょう。杉本会長の経営哲学が見える言葉だと思います。

自身が泥臭く営業で経験を積んで、失敗をして、仲間に助けられた経験があったからこそ、社員が大事だと気づけたのでしょう。


挑戦を続けるシーラホールディングス杉本会長の今後に注目です。

※本ページ内の情報は2018年3月時点のものです。