テクマトリックス株式会社
代表取締役社長 由利 孝

由利 孝(ゆり たかし)/1983年早稲田大学理工学部を卒業後、ニチメン株式会社(現双日株式会社)入社。1987年ニチメン株式会社情報部門の戦略子会社テクマトリックス株式会社に出向。アドバンストシステム営業部長を経て2000年、現職。以来2005年ジャスダック上場、2010年東京証券取引所2部上場、2013年東京証券取引所1部上場を果たした。

本ページ内の情報は2016年11月当時のものです。

大手商社の情報関連子会社として1984年にスタートしたテクマトリックス株式会社。大きな環境の変化を経て2013年東証1部に上場するまでに成長、現在も売り上げを伸ばし続けている。
同社代表取締役社長の由利 孝氏へのインタビューを通して、成長軌道に乗っている同社の強みに迫る。お話を伺っているうちに見えてきたものは、同社の成長を支えている強い“個の力”を生み出す企業文化だった。

時代のニーズに合わせた一流のサービスの提供

御社の事業内容についてお聞かせ頂けますでしょうか?

由利 孝:
当社には二つの事業セグメントがあります。一つ目は、インフラを提供する「情報基盤事業」、二つ目はソフトウェアを提供する「アプリケーション・サービス事業」です。「情報基盤事業」において、現在注目度が高いビジネスがセキュリティ対策です。インターネットを介して企業の情報が漏洩することがないようにセキュリティ対策製品の提供に力を入れています。

「アプリケーション・サービス事業」においては、マーケットを絞り業界ごとに使えるシステムを開発し、インターネットを介して提供するクラウドサービス化を進めています。ITサービス業界においては、営業中心の会社、もしくは開発中心の会社が多く、開発中心のシステムインテグレーターを頂点にその下に中小の下請け会社があるというピラミッド構造になっています。下請け会社は基本的に労働集約的で、特定の分野の業務ノウハウも培いにくいという欠点があります。当社はその真逆の形態で、限られた分野においては大手企業とも直接競合していく覚悟をもって、自分たちでアプリケーションの開発から営業まで全てを行っています。

成長軌道に乗せるまでの軌跡

1984年に当時のニチメン株式会社(現双日)の子会社としてスタートとした貴社に、入社5年目で出向されましたが、どのような思いで出向されたのでしょうか?

由利 孝:
当時は、他の商社に比べてIT分野の進出が10年ほど遅れていたという背景の中で、大きなマーケットを狙っていくというよりは、絞ったマーケットで最先端の技術で勝負していこうとしました。当時は知名度もなかったので、自分がさぼったら会社がつぶれてしまうという危機感を抱いていました。その後、自分が担当していたソフトウェアの事業が初めて成功し、会社としての価値も認められ、その延長線上に今があります。

社長就任の経緯について、お教え頂けますでしょうか?

由利 孝:
2000年に社長になったときに時価会計の仕組みが導入され、見込みのない投資は損切りするという減損会計をしなければならず、IT バブルがあった一方で、ほとんどの商社が厳しい経営状態に陥りました。ニチメンが日商岩井と合併する前に、ニチメンと日商岩井の情報関連の子会社が先に合併することになり、私が社長になった年に会社の株主が変わりました。そういった大きな変化の中で創業当時から携わった経緯や、周りからの推薦もあり社長に就任しました。

就任したからには、上場を目指したいと従業員の皆さんに話をしたのを覚えています。従来は単体決算中心でありましたが、連結決算中心になったことで子会社としても儲けなければならないという背景もありました。子会社それぞれが独立した意思決定のもと、独立した組織として成長して上場を目指すという目標を立てたのです。

2005年にジャスダックに上場し、2010年に東証2部に上場、2013年に東証1部に指定され、売り上げも伸ばし続けていらっしゃいます。

由利 孝:
基本的に成長軌道で来ています。リーマンショックの時など景気が厳しい時代は買収等を行うことで乗り切りました。人間と同じで企業も成長しなければいけないと思っています。当然高いハードルを越えるのはストレスも抱えるし大変なことではありますが、急にジャンプアップするようなビジネスではなく、持続可能なビジネスで少しずつ確実に成長していくことが大切だと思っています。

強い“個の力”を育む企業文化

新しい採用への取り組みについて教えて頂けますでしょうか?

由利 孝:
女性の活躍も含めて多様性、ダイバーシティは大切だと思っています。女性の採用や留学生の採用を積極的に行っています。多様な人材が活躍した方が切磋琢磨できると思っているからです。人口減少に伴い、将来日本のマーケットが小さくなる見込みから、アジア地域への進出を考えているのでアジア圏の人材を採用していますし、今後も重要になると考えています。

また社内においては外国籍の人材が入ってくることで良い競争意識が生まれます。彼らは、言葉や文化の違いにおいてハンディキャップを抱えている中で、日本の会社の社員としてやっていこうと大変な努力をしていますし、ハングリー精神を持っています。こういう精神や努力に間近に触れて学ぶということは個人の成長にとても大切なことです。学ぶということは個が強くなる上での最低条件であると考えているからです。

社長と社員の距離感が近いイメージがありますが、社内のコミュニケーションをどのように図っていらっしゃいますか?

由利 孝:
毎月一回全社員で朝会を行っていて、私自身が全社業績について月次報告を行い、各事業部からは業績の詳細報告を行います。また、現在取り組んでいるビジネスを持ち回りで発表しています。その他にも、定期的に社員とランチ会を開いたり、私が情報発信するニュースレターを月に1回発行したりしています。情報は透明な方がよく、大事な情報をお互いにシェアできているから距離が縮まり、全員参加の意識を持ち帰属意識を高めることができるのではないかと思います。

求められる人物像とは

新卒の学生には、努力できるポテンシャルを発揮することを、中途の方には「テクマトリックスで何をしたいのか」という目的意識の明確化を求めている。

採用に関して、新卒の学生に求めるものは何でしょうか?また中途採用としてはどのような人材を採用されたいとお考えですか?

由利 孝:
一番大きなポイントは、努力できるかというポテンシャルです。大学まで学んできた内容よりも、社会人になってプロフェッショナルとして学び続け、チャレンジ精神があるかどうかということを大切にしています。
中途採用としては即戦力を求めているので、やってきたことはある程度重要かと思います。一方でITの世界は技術がどんどん進化していくので、将来も新技術をどんどん吸収していくことを実践し続けられる人材が求められます。この会社で何をしたいのかを明確に話せる人にきてほしいと思っています。社員が努力し続ける環境を作るためにも、上に立つリーダーが率先して頑張る姿勢を示すことが大切で、結果、企業の成長へとつながるのだと思っています。

編集後記

企業が成長し続けるためには、まず企業を支える社員自身が成長し続けなければならないという由利社長の言葉が印象的だった。社員に全員参加の意識を持たせるために上に立つリーダーが情報をオープン化したり、切磋琢磨できる社員を採用したりするなど、こういった企業文化が、一人一人の学ぶ姿勢を促し、企業の更なる成長へと導くのだと思った。