温度計測の専業メーカー、世界一への挑戦 ~国内トップクラスの製品も有する、温度計測のパイオニア企業~

温度計測の専業メーカー、世界一への挑戦


株式会社チノー 代表取締役社長 苅谷 嵩夫

※本ページの情報は、2017年5月時点のものです。

1936年設立の株式会社チノーは、計測制御機器の専業メーカーとして国内のみならず世界各国に製品を供給しており、近年ではIoT領域においても積極的な事業展開を行っている。特に温度計測などの分野においては「温度のチノー」と呼ばれるほどに高い技術力を誇っており、同分野における世界一を目指しグローバル展開を進めている。長年培ってきた技術力で世界に挑む同社代表取締役社長、苅谷 嵩夫氏に、同社の強みや求める人物像について話を伺った。

苅谷 嵩夫(かりや たかお)/1944年生まれ。1968年、東京理科大学理学部卒業。同年株式会社千野製作所(現:株式会社チノー)に入社。1997年に取締役に就任し、常務取締役を経て、2006年、同社代表取締役社長となる。2015年に代表取締役社長執行役員に就任した。2007年より千野測控設備(昆山)有限公司董事長を務めている。

会社の要は“人”

チノー本社社屋(東京都板橋区)

―御社は1936年に株式会社としてスタートされていますが、創業はそれよりも前だと伺っております。御社の沿革についてお話し頂けますか?

苅谷 嵩夫:
弊社の初代社長が事業を興したのは、1913年のことでした。当時から外国の技術を積極的に取り入れ、大学教授たちの協力を仰ぎつつ、かなりレベルの高い計測機器を製造していました。その後、工場も建設し順調に事業を拡大していきましたが、1923年に関東大震災が発生し、工場も機材も全て焼失してしまいました。それでも逆境に負けず、新たに工場を建設し、1936年の株式会社化に成功したのです。しかし、徐々に戦時色が濃くなり、1945年、やっとの思いで再建した会社は再び灰燼に帰してしまいました。そのような状況の中でも、戦争から帰ってきた数少ない社員たちで再び会社を創り上げていったのです。社屋も機材も何もない中、数人の同志で会社を再興させていった社史を振り返ると、会社にとっての本質はやはり“人”だと痛感します。

―社長にご就任してから、特に大変だったことは何でしょうか?

苅谷 嵩夫:
2008年に起こったリーマンショックの際には、弊社も非常に大きな打撃を受けました。受注は6割に落ち込み、当時は売上も激減しましたね。しかし、それでもメーカーとして、弊社の得意とする分野の製品をしっかりと作り続けることが重要だと思い、人員削減を一切行うことなく業務を遂行しました。確かに厳しい状況ではありましたが、2年ほどかけて少しずつ回復していきました。もっとも弊社は会社を創立して80年以上経ちますが、1回も人員削減をしたことがありません。そういう会社です。同じように、採用規模も縮小しませんでした。人員を減らせば、一時は余裕が出るかもしれません。しかし、再び事業が軌道に乗った時、必要な人員を割くことができなければ機動性を損なうことになりかねません。先述の通り、会社の要は“人”です。この非常時に人員削減を行わないという選択は、“経営者”としては間違っていたのかもしれませんが、私はそこだけは譲れませんでした。これからも人が辞めない、人を辞めさせない会社でありたいと思っています。

最大の武器は高いブランド力と現場力

―御社の強みについてお聞かせください。

苅谷 嵩夫:
弊社は工業用の計測技術をベースに様々な製品を製造しています。工業というのは、圧力や流量など、様々なもののコントロールが必要になります。その中でも、温度の管理を必要とする産業は60%にも上ります。弊社の得意分野はまさにこの温度に関する製品ですので、需要の高さがひとつの強みだと言えます。また、計測というのは正確な物差しが必要です。その元となる物差しは、国家原器になります。国家原器に基づく“標準”は国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)が設定します。弊社も長い間、そうした研究を産総研と共同で行ってきております。国家原器に準ずる計測器を製品として弊社が開発し、様々なところへ供給していますが、こうしたバックグラウンドがひとつの信頼性となり、海外でも高く評価されています。特に先述の温度の領域については、「温度のチノー」とお客様にも認識して頂けるほど、高いブランド力を誇っています。

また、弊社は開発だけではなく、営業にも技術系出身の社員が多く、現場でお客様と一緒に課題を解決するフィールドエンジニアリングを得意としています。クレームがきっかけとなって、駆け付けた現場でのディスカッションから新しいアイデアが生み出されることも多々あります。製品の精度やクオリティの高さはもちろん重要ですが、face to faceでお客様の要望に応え、新しい知見を得て課題をクリアしていく力も、弊社が提供できる付加価値のひとつだと考えています。

更なるグローバル展開を目指す

今後の展望を語る苅谷社長。新興国での工場用計測器の需要増加を見据え、海外展開を加速させる。

―今後の海外事業に関してどのようにお考えでしょうか?

苅谷 嵩夫:
10年ほど前に、グローバル展開をより積極的に行う方向に舵を切り、現在ではアメリカ、インド、タイ、韓国にそれぞれ1社、中国に2社、合計6つの海外子会社を保有しています。基本の技術は国内で開発し、それを現地で製造・販売するという手法を取ることで、為替のリスクなどを最小限に抑えることができています。

工業用の計測器というのは、国内はもとより、今後新興国での需要が高まると思われます。これから入社する社員たちは、どんな形であれ海外事業に関わる機会が出てくるでしょう。

私は、精度の高い計測機器を新興国に供給していくことは、その国の経済発展や環境改善の一助になると考えています。例えば、工業用の排水を浄化するためにも、まずはどの程度汚染されているかを計測しなければなりませんし、食品や薬品の安全安心のためには、適切な温度管理が必要なことは言うまでもありません。中国は現在、安全性や環境への配慮に関心が出てきています。かつては中国内に出回る計測機器も粗製濫造が多く、弊社の強みである正確性や信頼性を訴えてもなかなか響きませんでした。しかし、ここ数年は2、3倍の伸び率で売上が伸びています。環境改善や安全性の高さを求めるためには、まずはそういった計測機器の精度が重要になりますので、今後更に中国での売上は伸びていくと思われます。また、ほかの地域の子会社も、基盤を整えることができましたので、これからますます供給量が増えると考えており、その中でも特にインドにおける売上の伸び率に期待しています。

また、アメリカでシェールガスの採掘が活発に行われておりますが、ガスを運ぶためのパイプの溶接を行うにも、適切な温度管理が必要になります。そこでは、現地の方が行った作業のプロセスをきちんと記録するために、弊社の紙製の記録計が使われています。紙製の記録計など前近代的かと思われますが、この需要に対しては世界中で使用されているのです。こうした分野におけるニーズにも積極的に応えていきたいと考えております。

求める人物像

―御社の求める人物像についてお聞かせください。

苅谷 嵩夫:
海外展開は今後もますます積極的に行っていく予定ですので、私は社長面接の際に海外赴任について確認しています。海外では、現地の人と信頼を築くことが重要になります。現地でマネージメントをするというより、彼らとディスカッションをして油まみれになりながら仕事をするくらいの意欲が必要です。人種や文化の違いは、本気の付き合いの中では障壁に感じないものです。私自身、片言の英語を話す方々と仕事をした際も、お互い必死にディスカッションをした後は、まるで日本人同士で話していたような錯覚に陥ることもあるほどです。海外事業で、新しい地域を開拓したいというパイオニア精神を持った方は大歓迎です。

また、スキルよりもチャレンジするマインドや仕事観をしっかりと持っていることが重要だと考えています。お客様にはエンジニアや学者の方もいらっしゃいます。そういう方々と一緒に、失敗を恐れず、新しいことにチャレンジしようという気持ちが必要です。私も、かつては大きな失敗を何度も経験してきました。売上よりもフォロー費用の方が上回ってしまったこともあります。しかし、開発というものはまだ誰もしたことがない分野に挑戦するということです。付加価値の高い仕事をすれば社会からも評価され、それによって収益が上がります。そうしたチャレンジを続けることで、社員自身の自己実現にも繋がります。そういう良いサイクルを作っていきたいと考えていますので、新しいことに挑戦する勇気を出すことができる人を、私は応援したいと思いますね。

編集後記

株式会社チノーの強みは、エンジニアや技術系出身の営業が、直接現場で発生する問題に対峙する中で新たな知見を得ていく、技術部門と営業部門が一体となった開発体制である。実際の現場の声を直に聞くことで、リアルタイムに需要を把握することができ、新たな開発へと繋がっていくのだろう。また何よりも「人」を大切に思う会社だからこそ、基幹産業であるチノーの技術の進歩は、これから先の工業や環境を変えるきっかけになるのだろうと感じた。

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