nms ホールディングス株式会社 製造業界を変える。一代で800億企業を創り上げた経営者の成長物語 nms ホールディングス株式会社 代表取締役社長 小野 文明  (2023年3月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
モノづくりを設計・開発から、修理・カスタマーサービスまでトータルにサポートする「nmsホールディングス株式会社」。

国内32拠点、国外では10の国と地域において31拠点で事業を展開し、製造・生産現場に人材を派遣するHS事業、大手家電メーカー等向けに電子機器等の設計や製造の受託業務を行うEMS事業、社会インフラに不可欠な各種電源の開発・設計を行うPS事業の3つの柱を擁する。

近年では40代~60代の人材や海外人材を積極的に採用しており、さらなるグローバル企業へ進化すべく、挑戦を続けている。

製造業の人材派遣における課題解決のために立ち上がった経営者の軌跡と、彼が見据えている展望とは。

【ナレーター】
自社の強みについて、小野は次のように語る。

【小野】
当社は、EMS事業やPS事業と人に関するビジネス(HS事業)が共存しているのが大きな強みです。

人に関するビジネスが他の事業と共存している会社は何社かありますが、おそらく当社ほど自前で人材を調達してきたところはないと自負しています。

人材調達のネットワークを独自に築いて、ローカルの人材に頼ることなく、まず自分たちで人材を調達する仕組みを立ち上げようと考えたんです。政府との折衝や法的な解釈、それに順応するための制度設計なども全部自分たちでやってきたんですね。

そこから築き上げた人脈に関しては、信頼が積み上げられていると感じています。何か困ったことがあったら彼らに相談することもできますし、何かアクシデントがあっても乗り切れるような体力がついたんです。

それらをやってきたからこそ、当社より後に育っていったパナソニックやソニーから、事業を継承することができたと思います。金額の設定や契約の仕方などもすべて自前でできましたので、そういった部分が強みだと感じています。

あとは、モノづくりに特化した人材の育成も当社の強みのひとつですね。

人が会社に入ったり、辞めたりという流れは業界的に多いのですが、当社にはずっと現場で頑張ってくれている10年選手の社員もいます。長く働いてくれている彼らはやはり財産だと思いますね。

そういう方々が今、支店長になったり、現場の管理者になったり、トレーナーとして人を指導する役割を持っていたりと、各方面で活躍してくれています。

中には海外に赴任している社員もおり、海外を含めた事業の横展開やEMS事業の拡大にきちんとシフトできていると感じています。

【ナレーター】
小野のキャリアの転機は社長就任時にある。1996年にnmsホールディングスの前身企業に入社。取締役を経て、2002年に代表に就任した。当時の心境について次のように語る。

【小野】
最初に感じたのは、「今の社員をちゃんと守らなければいけない」とか「会社の業績を落としたくない」というプレッシャーでした。

もうひとつ強く感じたのは、「この業界を変えたい」という思いで同業から転職し、事業部が独立して社長になったため、「これからは社長として大なたを振るえるな」というのはありましたね。

【ナレーター】
小野は当時から製造派遣において、適材適所に人材が配置されていないことを問題視していた。どうすれば解決できるのか。熟考の末にたどり着いたのが、後の主力事業になったHS事業だった。

【小野】
社長就任時には、製造派遣が解禁されていませんでした。しかし、その後小泉政権で派遣法に製造派遣が含まれることになり、一気に加速しました。

しかし、製造業はただ人を派遣して賄えるものではなくて、モノをつくらなければならないため、モノづくりをできない人間を送ってもあまり意味がありません。

我々がちゃんとモノづくりをできる人材を教育して送り込み、ラインの中でお客様の社員と同等か同等以上の力を発揮するようにしないと、この業界自体が生き残ることもできないし、働く人たちも誇りを持てないと感じたんです。

そのため、政策が解禁した後も、当社はずっと製造派遣を標榜していました。同じことをしていた同業者は、私の知るところではいませんが、その中でも当社は自分たちの信念を大切にしてきました。

どうしてかというと、そのころはまだ年商が100億に満たないような会社でした。そのため、同業者に勝つためにはやはり他社と違うことを提案しなければならないし、少し違うアプローチをしなきゃならないと考えたのです。

人材教育も当社が担当すれば、お客様の手間がかからなくなります。実際のニーズもこちらのほうが高く、ニーズに合ったサービスを提供することで、当社は成長してきました。

【ナレーター】
その後、電子機器等の設計や製造受託を行うEMS企業を子会社化、中国・ASEAN諸国への進出など、順調に成長を続けているnmsホールディングス。この成長を支えているのは、かねてから意識している「限界を設けない」という考え方にあると小野は言う。

【小野】
「できない」とか、「難しい」とか、「前例がない」という言い訳をしたくなかったですし、限界点を自分で設けるとその器で終わってしまうと。これはずっと自分に言い続けてきたことであり、律してきたことです。

何かに挑戦する際、「それは成功しづらい」とか「難しいんじゃないですか」と周囲から意見されることもありました。

EMS企業の子会社化に関しても、当時の感覚から「そんな簡単じゃないよ」と何度も意見されましたが、顧客ニーズがある以上は進んだ方がいいという考えがありましたので、この方向(EMS事業の立ち上げ)に進めたと考えています。

また、「夢を語らない」ということも大切にしています。

人は夢を語りますが、夢は夢で終わってしまうんですよ。私の考えでは、夢という体(てい)ではなく、目標やKPI、達成するためのベンチマークとして捉えています。ビジネス上で夢というものはなく、実現するものだと考えていますね。

達成するためのひとつの指標であって「夢」ではない。だから夢を語らないし、指標を「夢」と定義しないと自分の中でずっと決めてきたことですね。

【ナレーター】
2023年4月、nmsホールディングスは新たな中期経営計画を策定。重点施策として挙げた3つのこととは。

【小野】
1つ目は、外国人材の活用ですね。

今は半導体の工場が新しくでき始めていますけれども、「やっぱり日本でモノづくりをもう1回やりましょうよ」と。

もともと基幹部品の製造は日本で行うことが多かったのですが、「最終組み立てまで日本でやりましょう」という製造業も増えてきているため、ますます人材が必要とされています。

当社ではすでに人材の選定と適切な教育をして、派遣するシステムが構築されていますので、これを見直し、日本で働きたい優秀な外国人の方々をきちんと教育・雇用して、安心して働けるような就職先を紹介することで、外国人材を活用したいと思っています。

2つ目は、中高年者の雇用促進。製造業で働いた経験があり定年退職した方の再就職先の提供ができると考えています。

高齢化が進む中で、製造業で働いた経験のある方々へ機会を与えていけばいくほど日本の経済は潤うと思いますし、雇用された方々の収入も増えますよね。今後はこの枠をさらに拡大し、社会へ貢献していこうと思っています。

3つ目は、メキシコ工場の黒字化です。おそらく今年の10月か11月に単月黒字が達成できると考えています。

外国人材の活用と中高年齢者の活用、メキシコ工場の復活。これが中期経営計画における大きなポイントになります。

【ナレーター】
今後は製造派遣以外の事業領域にも積極的に参画していきたいと語る小野。見据えている展望とは。

【小野】
家電の物販や修理に特化した事業を、もう少し体系化しようと一部、動き始めています。これが大きな柱になる可能性も十分あると思いますね。

あとは、もう少し海外のネットワークを強化して、グローバル人材の調達や工場の展開など、グローバルに事業を拡大させていきたいという思いもあります。

もうひとつは「農業」ですね。

世間では限界集落の増加や過疎化により、農業を引き継ぐ人がいないと言われています。しかし、若者がIターン・Uターンで戻ってくれば、高齢者が持っている農業のノウハウや知識、バイタリティを受け継いで、村を復活させることができると考えています。

たとえば、小さな集落で田んぼを再生したり、畑をつくったりとその一助となる取り組みをしていこうと思います。

これら以外にも、たくさんの事業を構想中でして、おそらく直近では2つの事業が中期経営計画以降にスタートできると思っています。

【ナレーター】
さらなる成長のためには、より多くのチャレンジャーを育てていくことが必要になると小野は言い切る。

【小野】
先程「限界を設けない」と申し上げたように、自分の後継者はどんどん挑戦をしていく人間じゃないと困るなと思います。

社員においてもチャレンジ精神がある方を、もっとたくさん育成していかなきゃならない。

これから50年100年と、この企業が続いていくのであれば、それぞれがきちんとこの会社としての志を突き詰めないと存続できませんし、存続したとしてもいい企業にはなれないんですね。

また、志を具現化する方法を、私自身もまたこれからつくっていかなければならないと感じています。

常に経営層、中間層を含めて、志というものを大切にしてほしいと思っていますね。

―大事にしている言葉―
【小野】
“臥薪嘗胆”という言葉を座右の銘にしています。

この言葉は元々紀元前5世紀の呉と越の戦争に由来するものです。言葉の意味としては「復讐するために今を耐えるんだ」なのですが、私の解釈としては、「目的を達成するために努力を重ねる」というような意味合いで捉えています。

これから経営していく中でいろいろな困難やアクシデントがあると思いますが、日々努力を重ねて成功するために頑張るということで、この言葉を座右の銘にしています。

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経営者プロフィール

氏名 小野 文明
役職 代表取締役社長
生年月日 1959年2月1日
出身地 長崎県
座右の銘 臥薪嘗胆
愛読書 青春の門/五木寛之 著
尊敬する人物 SBIホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 北尾 吉孝氏
略歴
1994年、教育・研修事業を経て、モノづくりのベースとなる「人材」そのものに関わる仕事がしたいとの思いから、製造分野を中心とした派遣・請負に携わる。

1996年、移籍したテクノブレーン株式会社で新たにアウトソーシング事業を立ち上げ、1999年、製造分野を中心とした請負事業を行う会社(1985年設立、当社の前身会社)と合併。アウトソーシング事業の営業権を譲受し、事業責任者として事業拡大を推進。

2000年9月、社名を「日本マニュファクチャリングサービス株式会社」に変更、2002年4月同代表取締役社長に就任。

2017年4月からは持ち株会社体制に移行、nms ホールディングス株式会社へ社名変更し、現職。

会社概要

社名 nms ホールディングス株式会社
本社所在地 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー45階
設立 1985
業種分類 サービス業
代表者名 小野 文明
従業員数 13,885名(グループ連結/2023年3月31日現在)
WEBサイト https://www.n-ms.co.jp/
事業概要 ヒューマンソリューション(HS)事業・エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス(EMS)事業・パワーサプライ(PS)事業におけるグループ事業統括および経営管理等
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