株式会社ディア・ライフ 従業員約30名で年商200億円。創業者が語る少数精鋭経営成功の裏側 株式会社ディア・ライフ 代表取締役社長 阿部 幸広  (2019年10月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】

バブル崩壊後、ビジネスモデルの大幅な改革を迫られた不動産業界。地価低迷の回復を狙う2000年代前半は、不動産本来の価値を見極める眼力が、これまで以上に企業に求められる時代となった。

そんな中、2004年11月に1社の不動産会社が産声を上げた。

その会社の名は「ディア・ライフ」。

同社は創業からわずか3年で東証マザーズへ上場。不動産会社として記録的な成長を続けていた。

都市部メインのリアルエステート事業を主力とするディア・ライフ。創業期から少人数効率経営を貫き、2019年11月時点での従業員数は約30名で、売上高は約200億円。

2015年には東証一部への市場変更を果たし、投資魅力の高い会社を構成銘柄とする「JPX日経中小型株指数」にも選定されている。

リーマン・ショックを乗り越え、成長を続ける企業を創り上げた創業者の軌跡と組織マネジメントの真髄に迫る。


【ナレーター】

園芸店を営む両親の元で生まれ育った阿部。早稲田大学卒業後、家族に納得してもらう就職先をと、大手総合商社へ入社。当時考えていたキャリアプランについて、阿部は次のように語る。

【阿部】

一つは実家に帰って後を継ぐ。もう一つはその前に一旦自分で独立してチャレンジする。どちらにしろそういう大きな組織を辞めて仕事をするのであれば、自分の力というのを試したかったというのはありました。

それがいつなのかということは考えながら仕事をしていましたね。

【ナレーター】

その後、ビジネスマンとしてのキャリアを着実に積み、順風満帆な日々を送っていた阿部。しかし、36歳の年に大きな転機が訪れる。

【阿部】

ニチメンと日商岩井が2002年くらいから経営統合して、2004年に正式に双日株式会社になって、そこで大きく変わった組織になったなというのを感じたのが一番の独立をするきっかけだったと思います。

2004年の4月に完全に合併して、私はそこで最年少課長になりました。そして、入社時の上司が当時の双日の社長に就任したんですね。

二人で焼鳥屋に行った際に、その上司(社長)に「お前なんて独立してもうまくいくんじゃないか」みたいなことを言われたのですが、その時は「社長がいる間はいますよ」という話をしていました。

ただそこから3ヶ月が経ち、やはり大きく会社は変わったなというのを感じて、8月ぐらいに「やはり退職します」という話をしたところ、「お前が中途半端な気持ちで会社に残っていると影響が大きいから、退職するのであれば早いほうが残ったみんなのためになる」というような話になって、10月末で退職をして11月1日に会社の登記をしました。

【ナレーター】

2004年11月に株式会社ディア・ライフを立ち上げ、晴れて独立を果たした阿部。

不動産仲介やコンサルティング事業、人材派遣業などを展開し、またたく間に成長。創業からわずか3年後に東証マザーズへの上場を果たした。

業界では驚異的とも言える上場スピードだったが、阿部はあくまでひとつのステップにすぎないと冷静に捉えていた。

【阿部】

上場をしたことで、まずはマ-ケットで(資金を)調達できるようになりました。社会的な信用も得られ始め、人材も集められるようになりましたが、まだまだこれからという感じでしたね。早く東証一部に行かなければいけないと思っていました。

【ナレーター】

上場から1年後の2008年にはリーマン・ショックが発生。当時の状況について、阿部は次のように語る。

【阿部】

2007年8月に上場して、その当時から少しサブプライムの兆しは見えていたんですよね。ですので、あまり不動産の仕入れをせず抑えていたため、実は大きな傷というのはなかったんです。

今期で15期目に入りますけれども、2009年の9月期、この一期だけが赤字でそれ以外は黒字でした。ですが、リーマン・ショックの後は銀行からはお金は当然借りられませんし、社員もいるのでどうやって手金で仕事をしていくかを考えていましたね。

同業者はどんどん毎日のように倒産していって、ゼネコンも設計事務所も不動産系の会社というのはどこも調子が良くない中で、どうするかということを考えながら飲食店や親子カフェや整骨院などの経営もしていました。

その流れで、現在マザ-ズに上場しているグル-プ会社のパルマ社をM&Aしたのです。とにかく手金でできることはないかと、動いていましたね。

厳しい状況でしたが、やはり会社を潰さないということと、社員を自分から解雇しないこと、これらは意識していました。

何かしら仕事を与えるということが大事だと思っているのですが、当時、待遇などは厳しかったです。それで辞める人もいれば入ってくる人もいました。

【ナレーター】

リーマン・ショックを乗り越え、現在、都内の不動産開発を中心に不動産業界向けの人材派遣やトランクルームなどのアウトソーシング事業を展開し、躍進を続けるディア・ライフ。

阿部が描くディア・ライフの未来像とは。

【阿部】

今はまだやっていきたい仕事量というのは小さいので、もっと大きな仕事をしたいですね。

ディア・ライフでは、双日にいたときの規模の仕事はまだできていません。最低でもそれくらいの仕事ができるようになりたいし、もっと言うと、双日くらいの会社にしたいなと思います。

【ナレーター】

2019年11月時点で、40名に満たない従業員数ながら、約200億円の売上高を誇るディア・ライフ。

少数精鋭経営を成功させた組織マネジメントと求める人材像に迫った。

【阿部】

新卒採用は規模とか売上とか、そういうものの増加に合わせて最低人数ぐらいの採用で毎年2名~3名くらいなんですよね。ですので、基本は大量採用するつもりは今後もないです。

まずはデベロッパーや仕入れをする上での心構えなどを伝えるようにしています。当社では、土地を購入した人が設計からゼネコンとの折衝、販売のやり方、金融機関への紹介など、それらを基本は担当者一人でやれるような人材を育てたいんですね。デベロッパーとして、資金さえあればいつでも独立ができる、そんな人材にしていきたいのです。

様々な考えがある中で、私的には当社は物件を取得するということにかなりフォーカスをした会社なんですね。

内部で設計してそういうプランを入れたりする部署もありますが、基本はアウトソーシングを活用する。そして、それをオ-ガナイズできるような社員を育てる。そのため、少人数でもこれだけ(200億円)の売り上げが出せるのです。

【ナレーター】

少数精鋭で会社を運営し続けるためには、日々のコミュニケーションが重要だと語る阿部。特に従業員同士の交流には力を入れており、社員旅行、皇居一周マラソン大会、ドッジボール大会、クリスマスパーティーなど、開催されるイベントは枚挙に暇がない。

このような遊びや趣味を最大限に楽しめる考え方について、阿部は自身の趣味を引き合いにこう語る。

【阿部】

時間は限られているので、何かを辞めないと新しいことはできないですよね。ですので、ゴルフをやらないでサーフィンと柔道をしばらくやっていたことがあります。

私の場合、サーフィンや柔道以外に本も読みたいし、映画も見に行きたいし、銭湯に行きたいし、マッサージも好きだし、ピアノの練習もしなきゃいけないし、『いだてん』も見なきゃいけないしと、やりたいことはたくさんあります。

時間は一番大事だと思っているので、結局はどれを重要視するかだと思います。

仕事でも、不要な業務や会議などを出し合ってどんどん無駄なものをそぎ落としていくというのは常に考えています。それは趣味でも同じですね。

【ナレーター】

自身の時間をどのように使うかで人生の厚みは変わる。

これを全ての従業員が理解しているからこそ、それぞれが個として成長を続け、それがまたディア・ライフの成長を支えているに違いない。

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経営者プロフィール

氏名 阿部 幸広
役職 代表取締役社長
生年月日 1968年2月20日
出身地 福岡県北九州市
座右の銘 精力善用 自他共栄「心身の持つすべての力を最大限に生かして、社会のために善い方向に用いる」という「精力善用」の精神と、柔道の修行を通して体得した「相手に対し敬い、感謝することで、信頼し合い、助け合う心を育み、自分だけでなく他人と共に栄えある世の中にしようとする」という「自他共栄」の二つの規範
愛読書 フランクリン自伝
尊敬する人物
略歴
平成2年4月 ニチメン株式会社(現双日株式会社)入社
平成16年10月 双日株式会社 退社
平成16年11月 株式会社ディア・ライフ設立
平成28年12月 株式会社パルマ 取締役会長 就任
株式会社ディアライフエージェンシー 代表取締役社長 就任

会社概要

社名 株式会社ディア・ライフ
本社所在地 東京都千代田区九段北一丁目13番5号  ヒューリック九段ビル2F
設立 2004
業種分類 不動産業
代表者名 阿部 幸広
従業員数 37名
WEBサイト http://www.dear-life.co.jp/
事業概要 リアルエステート事業、アセットマネジメント事業、不動産向け人材派遣事業(子会社株式会社ディアライフエージェンシー)より構成され、東京23区及びその周辺を営業地域として展開。
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