※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

街の喫茶店からチェーンのコーヒー店へ、時の流れとともに変化していくコーヒー文化。コーヒーシュガーをつくるために設立されたサクラ食品工業株式会社も、時代に合わせて主軸製品を変えながら会社を成長させてきた。

喫茶店の衰退やコロナ禍の到来など、さまざまな苦難を乗り越えながら同社はどのようにしてOEMで会社を発展させてきたのか。代表取締役社長の藤原拓氏に、サクラ食品工業の歴史と今後の展望を聞いた。

始まりはコーヒーシュガーの製造から

ーー貴社はコーヒーシュガーやカップゼリー、ポーション、アセプティック製品などさまざまな商品を製造・販売していますが、どのように会社を発展させてきたのでしょうか。

藤原拓:
サクラ食品工業株式会社は、先代の父がコーヒーシュガーをつくるために工場を立ち上げたのが始まりです。コーヒーシュガーは冬場に売れる商品で、夏場はあまり売れるものではありません。夏場でも売れる商品として、カップゼリーやポーションのガムシロップを商品ラインに追加したのがきっかけです。

当初は、コーヒーシュガーとポーション、カップゼリーの3つが主力製品でした。しかし、コーヒーシュガーは製品になるまでに時間がかかるのが課題。また、弊社のコーヒーシュガーは喫茶店に置いてもらうことが多かったのですが、チェーンのコーヒー店が増えたことでコーヒー文化が変わり、徐々にコーヒーシュガーを使われることが少なくなってきました。

弊社は先代がコーヒーシュガーをつくるために始めた会社ですので、コーヒーシュガーを今後事業としてどのように進めていくかかなり悩みましたが、将来に向けて動いていくことが大切だと思い、カップゼリーとポーションを増強することに決め、2020年11月に竜王工場を竣工しました。

コロナ禍で苦戦しながら辿り着いた「水」事業

ーー実際にカップゼリーとポーションに注力してみて、最初から上手くいきましたか。

藤原拓:
コロナ禍と重なり苦戦しました。ニュートリー株式会社様と共に専用のアセプティック紙容器製造設備を導入し、竜王工場竣工式を行おうとしたときにコロナ禍が始まりました。竣工式は弊社として重要なイベントだったのでその中止は大打撃でした。

また、ゼリーは病院などに向けて開発していましたが、コロナ禍では病院へ営業にも行けない。新しい設備を入れたのに売り上げがなかなか追いつかない状況で、かなり苦労しましたね。そこで新しく始めたのが、水の紙容器充填製造・販売です。

ーーなぜ水に辿り着いたのでしょうか。

藤原拓:
水は匂いを吸着する性質があるため、充填製造するのが難しいのです。

そのため、水の販売という市場はレッドオーシャンではあるものの、紙容器の製品においては他社との競合は多くはありませんでした。当時は水の紙容器充填製造している企業が少なかったので、事業として確立できるのではと考えました。

意匠を凝らしたパッケージでインバウンド対策にも対応

ーー貴社ではただ水を売るのではなく、パッケージなど細部にこだわった商品を販売しているように感じます。

藤原拓:
水を製造販売するというだけでなく、パッケージに意匠を凝らそうと思いました。まず、パッケージに紙を使っているのは、サステナブルなイメージがあるから。また、水を買った人がパッケージを捨てず、つい集めたくなるようなデザインのものにしようと思いました。

パッケージは歌舞伎や浮世絵など日本を代表するようなデザインになっていますが、これは外国人観光客からの評判も意識しています。コロナ禍後にはインバウンドが復活すると思ったので、外国人観光客をターゲットにした商品にしようと考案しました。パッケージの絵は、画家の石川真澄さんが担当しています。

ーー貴社の水はどういったところで購入できるのでしょうか。

藤原拓:
石川真澄さんの作品のイメージに合った場所に置きたいと思い、高級料亭や高級旅館、あとはインバウンド向けの高級ホテルやお土産屋、空港などに置いています。

今後はOEMだけでなく自社商品の開発にも注力したい

ーー貴社はOEMビジネスで発展されてきた企業だと思いますが、OEMに対する思いや今後の展望などを教えてください。

藤原拓:
お客様から商品を受託するという、このOEMの仕事はとても良いものですが、その一方で自社ブランド商品をつくりたいという思いもあります。自社の商品をつくることで従業員の意識も変わりますし、それがやりがいにもつながるのではないかなと。

メーカー様のブランドを借りているままだと、やはり黒子で終わってしまいますから。「自分たちで良いものをつくりたい」という思いが社員に芽生えることが、結果としてほかのメーカーのブランドに向き合うことにもつながるのではないかと思っています。

今はまだCMなどの派手なコマーシャルは打てていませんが、ECや公式サイトなどで少しずつ自社の知名度を上げていこうとしているところです。

編集後記

食に関わる企業として「社員にはお昼ご飯を楽しみにしてもらいたい」と、新しく社員食堂を設立したサクラ食品工業株式会社。藤原社長は今後さらに、一生懸命働いている社員を正しく評価するための仕組みづくりにも力を入れていきたいと話した。

OEMだけでなく自社製品の開発に注力し始めたサクラ食品工業が、これからも日本の食に革新を起こす商品を提供してくれることに期待したい。

藤原拓(ふじわら・たく)/1965年京都府生まれ、近畿大学卒。同大学卒業後2社のIT企業を経て2000年にサクラ食品工業株式会社へ入社。2005年に同社代表取締役社長に就任。