※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

大手人材会社マイナビの調査によると、2022年の正社員転職率は7.6%で、これは2016年以降最も高い水準とのこと。終身雇用が当たり前だった昔と比べて、より良い待遇や職場環境を求めて転職を考える人は多い。

しかしその一方で、自分がどのような働き方をしたいのか、上手く言語化できる人は少ない。ポジウィル株式会社は、そんなキャリアの悩みを抱える人々をサポートする事業を展開している。

「生き方支援カンパニー」を理念に掲げる同社は、一体どのようなサービスを通して人々の課題を解決しているのか。代表取締役社長の金井芽衣氏に、同社の事業内容や叶えたい未来を聞いた。

「辛くないことが辛い」多くの壁にぶつかった創業初期

ーー独立後、事業はすぐに軌道に乗りましたか。創業初期のお話を聞かせてください。

金井芽衣:
独立前からのお客様がいたので、すぐに新規顧客を獲得しなければという苦労は特にありませんでした。ただ、独立して1年目のとき、ほかのスタートアップ企業の知り合いができたのですが、その方たちと自分を比べて辛いと感じることはありましたね。

ほかの経営者たちは睡眠時間を削って働いているのに対し、自分は何もしていないように感じる。何も起こらないことで「辛くないことが辛い」と感じるようになり、自分から何か仕掛けていかなければと思うようになりました。

ーー創業後、どのような壁にぶつかりましたか。

金井芽衣:
弊社では、お客様の理想のキャリアの実現をサポートするパーソナル・トレーニングサービス『ポジウィルキャリア』を提供しています。

『ポジウィルキャリア』の事業を始める前は、キャリアについて悩む方が相談できる『そうだんドットミー』というサービスを運営していました。

この『そうだんドットミー』を利用している方のフィードバックを聞く機会があったのですが、「何回も利用しているけど転職が成功しない」いう声を聞いて、愕然としました。

自分は今まで何をしていたのだろうと思いましたし、やはりもっと一人ひとりと深い関係を築かなければ結果は出ないのだなと。この出来事が、事業の根本を見直すきっかけとなりました。

ゴールは転職成功ではなくキャリアの課題解決

ーー貴社の強みを教えてください。

金井芽衣:
私は、キャリアとは職業選択だけを指すのではなく、人生そのものだと考えています。転職活動が上手くいくようにサポートするだけでは、その方の根本的な課題が解決されないため、転職してもまた同じ課題にぶつかってしまいます。

そのため、弊社ではただ転職活動をサポートするのではなく、心理学をベースにしながら、その方の根本にある課題を解決することを意識して取り組んでいます。この点については、他社にはない弊社ならではの強みではないでしょうか。

ーーキャリアの課題を解決することが目的であって、必ずしも転職成功がゴールではないということでしょうか。

金井芽衣:
弊社には、キャリアの判断軸をつくるための『キャリアデザインプラン』というプランもあります。このプランには「転職成功」という明確なゴールがあるわけではないので、当初は事業として始めることにあまり賛成ではありませんでした。しかし事業化してみると、こちらのプランもとても人気があり驚きましたね。

実際、弊社のサービスを利用する方は、転職という選択肢をとらないことも多いです。サービスを利用し、今の自分と向き合ってみた結果、もう1度今の場所で頑張ってみようと思い直す方も多いのです。

キャリア相談の支援文化を日本に根付かせたい

ーー会社として大切にしていることを教えてください。

金井芽衣:
弊社は「生き方支援カンパニー」を理念に掲げており、社員の中にはこの理念に共感して入社した方も多くいます。生き方支援という言葉には、一人ひとりの人生を応援したい、いろいろな生き方がある社会にしたいという願いを込めています。

海外にはキャリアカウンセラーが当たり前のようにいますが、日本はまだそこまでではありません。キャリアで悩んでいる方が、気軽に相談できる「伴走者」のような人がいる文化を日本にも根付かせたいと思っています。

何をするにしても、後悔しない選択をすることが大切

ーー貴社ではどういった人材が活躍していますか。また、キャリアで悩んでいる若手人材は、どのようなことを意識すべきでしょうか。

金井芽衣:
弊社で活躍している人材の共通点といえば、過去に何か苦労した経験があって、それを乗り越えたことがある人ですかね。自分の力で悪戦苦闘して乗り越えた経験があるから、お客様に説得力のある向き合い方ができるのだと思います。

また、特に若手の方には、悔いを残さない選択をしてほしいと思います。何かやりたいことがあるなら挑戦してほしいですし、20代のうちにのめり込みたいことがあるなら、全力で取り組むことをお勧めします。

編集後記

金井社長は取材中、「女性がもっと活躍できるようにしたいと考えています。しかし、その一方で自分自身がその難しさを経験しているので、大きなもどかしさも感じます」と語る。

出産や育児などでキャリア形成に難しさを感じる女性は多く、今後はそういった人たちの力になれるような事業も考えていきたいとのこと。

働き方に多様性が生まれている昨今では、ポジウィルのように「キャリア=生き方」という考え方を持つ企業がより一層求められていくのだろうと感じた。

金井芽衣(かない・めい)/1990年生まれ。短大で保育士・幼稚園教諭の免許を取得後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入学。2013年に株式会社リクルートエージェント(当時)に入社し、法人営業として勤務。2017年、国家資格キャリアコンサルタントを取得、ポジウィル株式会社を設立し、代表取締役に就任。現在、キャリアに特化したパーソナルトレーニング「ポジウィルキャリア」などを運営中。