昭栄薬品株式会社は、天然油脂を原料とする基礎化学品およびこれに関連する誘導体を扱う専門商社だ。オレオケミカルをベースに、化学品や、日用品、土木建設資材の分野にて環境にやさしい商品を提供している。

今回は、昭栄薬品の藤原社長に就任したときの心境や、新卒時代の苦労、就任後に行った改革、事業の強み、今後の展望などについて話を聞いた。

長い歴史を持つ専門商社の社長に就任するまで

ーー新卒入社時代に大変だったエピソードがあれば教えてください。

藤原佐一郎:
今でこそ座学研修やOJTなどの教育体制がありますが、当時はそのようなものはなく「失敗を前提にまずはやってみる」という教育スタイルでした。

私は入社して最初は営業に配属され、働いていたので、たくさんのお客様のところに営業に行きました。もちろん、営業は未経験だったので失敗の連続でした。それでも何度も営業をしに行かなければいけなかったのが大変でした。

そこで、まずは一生懸命お客様に向き合おうと思い、お客様から「製品のサンプルがほしい」と朝に依頼をされたときは、その日の夕方にはサンプルを渡しに行くといった迅速な対応を継続して行いました。

周りに私と同じような対応をしている人がいなかったこともあり、お客様から高く評価されて少しずつ認めてもらえるようになり、良い顧客関係を築くことができました。

当社のように昔から長く続いており大きなビジネスを扱う会社の中では、「自分の強みを活かせないのではないか」と思った時期もありました。しかし、周りの人と少し違ったことをするだけでも相手の印象に残り、喜んでもらえることもあるという学びになりました。

ーー社長に就任するときの心境はいかがでしたか?

藤原佐一郎:
思っていたよりも早かったのでとても驚きました。私よりもベテランの役員と常務がおり、また会社は上場を控えている大事な時期でした。そのタイミングで私に社長就任の話がくると思っていなかったので、責任の重さを感じました。

同時に、その重大なポジションに指名してもらえてありがたさも感じ、最終的には承諾し、2015年に当社の代表取締役社長に就任しました。

ーー代表取締役社長に就任してから嬉しかったことは何ですか?

藤原佐一郎:
2023年3月期に過去最高の売上高を達成できたことが嬉しかったです。タイミングも良く当社の成長を後押しする要因も大きかったので、私たち経営陣の力だけで達成できたことではありません。社員の皆がチャンスをしっかりと掴んで売上を伸ばした結果、この成果を得られたと感じています。

環境に優しい事業展開の大切さを再認識

ーー社長に就任してから取り組んだ改革があれば教えてください。

藤原佐一郎:
主に2つあります。

1つ目は、SDGsの活動を促進させたことです。当社は創業当初より、天然油脂から発生する化学品をメインに扱ってきました。石油は再生産ができませんが天然油脂は再生産ができるので、SDGsの取り組みにも貢献できていることを再認識しました。

そして、これは当社が今まで成長し続けてきた強みの1つでもあると感じたので、改めてSDGsの活動を進められるように推進チームをつくって体制を強化しました。

2つ目は、DXで働きやすい環境づくりを進めたことです。たとえば、営業は今まで出先から会社に戻ってきた後に日報を書く必要があり、長い時間をとられていました。その日報を出先でもどこでも入力できるようにしたところ、作業コストを減らすことに成功しました。

同時に、日報という形式的なものではなく、営業活動で気になったことをコメントする内容に変えたところ、社員が自ら情報発信をしようと思える仕組みにすることができました。

環境を意識して原材料を活かせる事業を提供

ーー貴社の事業の強みを教えてください。

藤原佐一郎:
環境を意識した事業活動をしていることが強みです。社内ではもちろんのこと、社外の環境活動にも貢献しています。

具体的には、環境への影響に配慮できる原材料の提案や、脱臭機器、水処理装置などの商品を提供しており、各工場で環境面の問題解決に取り組んでいます。

また、当社はWWFの呼びかけに応じた形で発足した「持続可能なパーム油の生産と利用を促進するための円卓会議」(RSPO)の正会員として加盟登録しており、より環境を意識して事業に取り組もうと動いています。

ーー貴社の今後の展望を教えてください。

藤原佐一郎:
前期は過去最高の売上高を達成できたので、今後はそれを超える「連結売上高250億円以上」というのを早期目標として掲げています。

その目標達成のために特に海外展開に注力しています。海外で売上をつくることはもちろん、海外の商材を日本で販売し、売上をつくることも海外戦略の1つだと考えています。

海外と国内の事業を連携させ、双方向の仕事にも積極的に取り組んでいけるよう、グローバル展開を進めていきたいと思っています。

海外志向やチャレンジ精神のある若手人材に入社してほしい

ーー貴社はどのような人材を求めていますか?

藤原佐一郎:
若手の社員が少ない組織なので、特に若手のビジネスパーソンに入社してほしいと思っています。また、先ほど申し上げた通り、当社は国内だけでなく海外展開も積極的に進めています。

今後、経済が成長する可能性が高いのは、インドネシアやタイ、ベトナムなどの東南アジア諸国だと予想しているので、そこに当社の拠点も築いていく必要があると考えています。

そのため、海外出向や海外ビジネスにも挑戦したいという気持ちを持った方だと、より当社にマッチしているので、そんな方にぜひ入社してほしいと思います。

編集後記

環境を意識した事業活動を行うことを大切にし、化学品だけでなく日用品や土木建設資材など幅広い商品を提供し、昭栄薬品株式会社の強みをつくってきた藤原社長。

次の早期目標として掲げた「連結売上高250億円以上」の達成に向けて、国内だけでなく海外展開にも力を入れている。

さらなる成長と発展を続ける昭栄薬品株式会社から、今後も目が離せない。

藤原佐一郎(ふじわら・さいちろう)/1959年、大阪府出身。1980年に昭栄薬品株式会社へ入社。2003年名古屋営業所長(部長)、2010年に取締役大阪化学品副本部長、2012年取締役大阪営業副本部長を経て、2015年に代表取締役社長に就任。