※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

株式会社海洋堂は、大阪に本社を置くフィギュアの造形企画・制作・販売を行う会社だ。

1999年には食玩「チョコエッグ」の企画を手がけて一大ブームを巻き起こし、世の中に「フィギュア」を浸透させた。ヒーロー、ロボット、美少女から自然史や仏教美術に至るまで、フィギュア、食玩、カプセルトイなど、これまでに5000種を超えるオリジナル商品を企画・制作してきた。

今回は取締役専務の宮脇修一氏に、幼少期のエピソードや事業の強み、今後の展望などについて話をうかがった。

プラスチックモデルに囲まれて育った原体験

ーー小学校時代のエピソードを教えてください。

宮脇修一:
子どもの頃からプラスチックモデルが大好きでした。父親はもともと小説家だったのですが、プラスチックモデル好きな私のために私が小学校に上がるタイミングで一畳半の長屋の一角を改造して、弊社のもととなる模型店を開業しました。

プラスチックモデルの展示会が開催されると、小学生の私もそれに参加し、プラスチックモデルを売ることも経験しました。

ーー中学生時代はどのように過ごしていましたか?

宮脇修一:
中学2年生になると学校から帰ったら店を手伝うようになりました。そして、中学卒業後は高校には進学せずに店を引き継ぐことになりました。

弊社にはもとはお店の常連客だった社員が何名かいるのですが、弊社を「日本で一番の素晴らしいプラスチックモデル店だ」と言ってくれて、今に至るまで一緒に頑張ってきたので「彼らを採用した、あの時の選択は間違っていなかった」と思っています。

ただの模型メーカーではなく造形制作集団であることが強み

  ©カラー ©SUNRISE

ーー「ARTPLA(アートプラ)」について教えてください。

宮脇修一:
「ARTPLA」は、「エヴァンゲリオン」や「ゆるキャン△」といった弊社のさまざまな代表的作品をプラスチックモデルでリニューアルし提供している新ブランドです。世の中にはプロゴルファーやプロ野球など、さまざまなプロフェッショナル名がありますが、創業当初はプラスチックモデルのプロがいませんでした。

そこで父が「プラスチックモデルに対する意識を高め、興味を持つ人を増やしたい」という思いから、「ARTPLA」という弊社のブランドがつくられました。

ーー他社と比較したときの貴社の強みを教えてください。

宮脇修一:
ただのメーカーではなく造形制作集団であることが強みです。弊社のプラスチックモデルは頑丈で分厚く組み立てやすいのですが、ただの組み立てられる模型ではなく、そこに作家性の高いアレンジを加えています。

そして、弊社の模型には原型制作者や造形作家、造形師の名前が全部入っているのですが、このような模型メーカーは弊社だけです。

また、弊社はいろいろな美術館や博物館で展示会をしているので、模型メーカーとしてだけでなく、フィギュアの魅力を発信する役割も担っています。

今後は世界中に模型の素晴らしさを伝えていきたい

ーー今後の展望について教えてください。

宮脇修一:
1つ目は、日本にもっとフィギュアの魅力を広めることです。日本はアニメや漫画といった2次元コンテンツが好きな人が多い国ですが、フィギュアに興味がある人はまだ一部の層に限られています。

「作品は好きだけどフィギュアは買わない」という人に向けて、私たちは立体が持つ魅力と模型の楽しさや面白さを広めていきたいと思っています。「チョコエッグ」は発売後の3年間で1億個以上売れたので、またそのようにフィギュアで世の中を盛り上げたいですね。

2つ目は、プロ作家を増やしていきたいと考えています。先ほどいったとおり、「ARTPLA」は世の中のプラスチックモデルへの興味を高めるためにつけた名称です。この「ARTPLA」が、「模型のプロになりたい」というプロ作家を目指す人が増えることにつながってほしいと思っています。

3つ目は、海外展開です。弊社はワンダーフェスティバルというガレージキットの展示即販イベントを主催しており、私も実行委員長として参加していますが、海外からのお客様は造形作家や模型に対するリスペクトがとても高く、熱狂的なファンも多いのです。このような方々にこそ弊社の商品を提供したいと思ったので、今後は海外での商品販売も拡大し、模型の素晴らしさを世界中に届けていきたいですね。

編集後記

プラスチックモデルの魅力や自社の商品のこだわりなどについて熱く語る宮脇専務は、誰よりもプラスチックモデルを愛し、その可能性を信じているようだった。

「フィギュアを好きな人が少ない」という課題を抱えているものの、チョコエッグで世の中にフィギュアの魅力を爆発的に広めた経験を武器に、その壁も乗り越えられるだろう。

海洋堂が「世界で活躍する日本の造形制作集団」となる日は近いのではないかと感じた。

宮脇修一/1957年大阪府生まれ。父が一畳半から始めたプラスチックモデル店を中学卒業と同時に任される。1980年代初め、個人で複製・量産できる“ガレージキット”の制作販売を業界に先駆けて手がけ、おもちゃとは一線を画した造形作品を次々と発売し、業界を代表するメーカーとなる。1999年、「チョコエッグ」のおまけが一大ブームを巻き起こし、フィギュアを普及、浸透させた。