※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

AI技術を活かした医療機器の開発を手がける株式会社カルディオインテリジェンス。

専門医並みの「心房細動(AF)検出機能」、非心臓専門医による確定診断を支援する「説明可能AI」、非発作時の心電図波形から心房細動の兆候を検出する「発作性心房細動(pAF)兆候検出AI」などのAI技術を開発することで医療現場を支えている。

医療分野でどのようにAIが活用され、さらにDX推進まで領域を広げているのか、代表取締役社長CEOの田村雄一氏に話をうかがった。

医療分野におけるAIとデジタルヘルスの役割とは?

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。

田村雄一:
弊社は、AI技術を活用して医療現場の業務効率化や診断精度の向上など、医療従事者の時間短縮や医療の質の向上を支援しています。患者さんが直接AI技術を利用するのではなく、あくまでも医療現場で診断を支援する医療AIを提供しています。

医療現場では、まだ紙文化が残っており、効率が良くないフローが多く見られます。たとえば、一部のクリニックでは採血の結果が印字された短冊状の紙を、そのままで管理しているケースもあるため、医療現場にDXが普及しているとはいえません。これまで紙でやっていたことが、ようやくパソコンに置き換わった段階です。

弊社が提供しているAIを活用したサービスを医療現場に導入することで、これまでの古い体質を変える新事業として取り組む必要があると考えています。

ーー医学部のご出身ですが、DXという切り口で医療界に貢献したいと思ったきっかけは何でしょうか?

田村雄一:
私が医療現場で働くようになってから、医療機器のOSは変わっても、性能は20年前からほとんど変わっていません。中身があまりアップデートされていないような印象ですね。

つまり、当時の私たちが困っていた課題が、いまだに同じ非効率な状況で存在したままであるということです。東日本大震災を経験した際、電話回線がつながらない状況でもSNSはつながるということが多くありました。そのときに医療現場を支えるツールもたくさんあると感じ、医療現場のDXに寄与する技術の開発を始めたのです。

スピード感あるフィードバックで周りの信頼を獲得

ーー開発において苦労したことはありますか?

田村雄一:
お金の面で期待していたベンチャーキャピタルさんから、出資を断られたことがありました。それを受けて事業計画を練り直し、他社の事例から勉強させてもらい、出資できない理由をフィードバックしてもらいながら、改善していきました。

ーー実際に製品を販売し始めて、反響はいかがでしたか?

田村雄一:
医師の先生方から非常に高い評価をいただいています。ユーザーのフィードバックをもとに製品の改良を進め、1~2カ月ごとに先生方から意見をうかがっています。

最初はあまり期待していなくても、製品が少しずつ改良されていくところを見て支持してくださる先生方が増えていきました。

医療技術の進化は現場の作業時間の短縮にもつながる

ーー貴社の製品が活用される場面や具体的な使用例を教えてください。

田村雄一:
製品が最も活用されるシーンは心房細動を主とした不整脈を見つけるための長時間心電図検査ですね。不整脈は治療だけでなく、早期発見が重要だと考えています。

実際に製品を検査に使用した方からは、「今まで見つからなかった心房細動を見つけることができた」といううれしい声もいただきました。これまでは検査結果をチェックするのに1件あたり30分以上もかかっていましたが、弊社の製品を使えば3分程度まで短縮でき、医師の負担も軽くできました。

ーー貴社の医療業界での立ち位置について、どのように考えていますか?

田村雄一:
病気の早期発見や治療に貢献できる立ち位置でいたいと考えています。私たちが提供するAIを活用したサービスは医療現場にとって非常に価値のあるものと考えていますので、あらゆる病気の検査に対応した製品を開発することを目指しています。

ーー最後に読者へのメッセージをお願いします。

田村雄一:
私たちの仕事では、周囲からのフィードバックをたくさん受け、トライアンドエラーを繰り返しながら成果を出しています。良い結果が出ればそれを継続し、失敗したら改善する姿勢が大切ですね。

弊社ではベンチャー企業ならではの経験や成長を実感することができますので、社員は経験を積むことで自信を持つことができます。

他の企業様とは異なる領域で活動していますが、医療現場での貢献度においては自信があります。

編集後記

テクノロジーが進化し続ける現代においても、医療現場のDXはまだ進んでいないのが現状だ。カルディオインテリジェンスは、この状況を改善し、病気の早期発見を大きな目標としながら、医療現場の負担の軽減に役立つ医療機器開発に取り組んでいる。

同社の取り組みは、医療界に変革を起こし、患者にとっても希望の灯火となることだろう。

田村雄一/1978年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、医学博士。国際医療福祉大学医学部 循環器内科学 教授、国際医療福祉大学大学院 医療機器イノベーション分野教授。2019年に株式会社カルディオインテリジェンスを設立し、代表取締役社長CEOを務める。その他、循環器内科専門医・総合内科専門医・欧州心臓病学会フェロー(FESC)・日本心臓病学会フェロー(FJCC)など、多方面で活躍をしている。