※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

リスクに尻込みし、なかなか不動産投資に踏み切れない人は多いだろう。ジャパン・プロパティーズ株式会社は不動産特定共同事業法の3号・4号の事業許可を得て、自社との倒産隔離など安全性の高いスキームを活用し、投資家から高い評価を受けている。

銀行に預けているだけでは資産が目減りしていく時代、より安全で賢い投資活動の選択肢として注目されるスキームについて、代表取締役CEOの高将司氏にうかがった。

苦難の道を乗り越え、思い描いた事業を立ち上げるまで

ーー起業に至った経緯を教えてください。

高将司:
幼少期、父が金融・貸金業を、叔父が不動産業を営んでいました。そんな2人の背中を見て「ゆくゆくは自分も起業したい」と思っていました。バブル崩壊を迎え、父の事業が傾いていく一方で叔父の不動産業は順調で悠々自適に暮らしているのを、幼いながらに見ていました。

学生時代は野球一筋でしたが、大学1年生の時に父が病気で倒れました。父が救急車で運ばれていくのを見ながら「これから中学、高校へと進学する妹弟達もいて母を支えなければ」と就職を決意し、不動産会社に飛び込んだのが19歳の時です。頑張れば頑張るほど評価されてインセンティブ報酬を得られたので、妹弟の学費を払い、家計を支えることができました。

その後、イギリスから進出してきた企業に声をかけられ、日本でのオフィス・リーシング事業の立ち上げに参加しました。とても良い経験でしたが、父から「30歳までに自分が何をやっているかで人生が決まる」と言われていたこともあり、25歳の節目までに独立しようと考えていました。

不動産投資の新たな道を切り拓く

ーー事業を構想したきっかけは何だったのでしょうか?

高将司:
以前私が勤めていたイギリス資本のサヴィルズという企業は、ヨーロッパ市場で年金などのファンド資金を運用していました。そのスキームを日本に普及させることで、金融の「民主化」をしたいと思ったことが今の事業を構想したきっかけです。

一般的な不動産クラウドファンディングサービスでは、運営会社に対し投資資金を投入して、投資対象不動産を運営会社が所有することになります。そうすると、運営会社が倒産した場合、対象不動産が運営会社の債権者に差押えられる可能性があり、差押え金額によっては出資額が全額棄損する可能性があります。

こういった不動産クラウドファンディング事業は、不動産特定共同事業法の1号・2号のライセンスがあれば行うことができます。

しかし、不動産特定共同事業法の3号・4号の許可に基づく特例事業スキームを利用すれば、特例事業者(SPC)の資産は運営会社の倒産リスクから隔離されることになります。

ファンドごとに設立する不動産投資を目的としたSPCが資産を保有することになるので、不動産の登記名義も運用会社ではなくSPCの名義になります。投資家の方々にとっては、より安全性の高いスキームであるといえます。

不動産特定共同事業法の3号・4号事業は、他の多くの不動産クラウドファンディングサービス(1号・2号事業)とは異なり、国土交通省大臣と金融庁長官それぞれの許可を取得する必要があります。そのため、この事業許可を取得する要件は、1号・2号事業に比べ厳しく、時間もかかると言われています。

弊社は3号・4号事業許可をとるために長い時間を要しました。その間にほかの不動産投資企業が成功していくのを見て歯がゆい思いもしましたが、「事業許可がおりてファンドの扱いを始められれば結果はついてくる」という確信がありました。最終的に、私たちの初号ファンドは応募率2,787%という記録的な成果を達成することができました。

金融のコングロマリット型サービスカンパニーを目指して

ーー今後はどのように事業を展開する予定でしょうか?

高将司:
私たちは、クラウドファンディング事業を通じて日本の価値を最大化させたいと考えています。

今後は、不動産に関するソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング。資金を確保したい企業と個人投資家をインターネット上でマッチングさせるサービス)事業やベンチャーデット(金融機関がスタートアップに対して融資を行い、スタートアップは新株予約権を発行・付与して金融機関のリスクを補う金融商品)など、事業投資の資金調達側に回っていきたいと考えています。

資金調達のあらゆるニーズに応える、金融のコングロマリット型サービスカンパニーを目指しています。

星野リゾートが不動産の保有数を増やすにあたり、資金調達をするためにリート(不動産投資信託。不動産を運用する法人などが発行する証券を購入し、賃貸や売却によって得た利益の分配を受けられる金融商品)として証券化し、100億円のキャッシュインに成功しました。

これは大きな会社だから自社でできたわけですが、これと同じことを中小企業でもできるように、「私たちがプラットフォームになっていきたい」と考えています。地方銀行と連携して地方創生にも乗り出していく予定です。

ーーこれからの職場環境について教えてください。

高将司:
人は失敗して成長していくので、たくさんチャレンジして失敗できる環境をつくりたいと思っています。大企業だと、失敗すると左遷されたり、出世街道から外されるケースもあると思いますが、そのような企業では失敗が怖くてチャレンジできなくなります。私は、「失敗が許されないことが日本経済の低迷にもつながっているんじゃないか」と思っています。

ーー最後に若手の方にメッセージをお願いします。

高将司:
新卒でもぜひチャレンジ精神旺盛な方に来てほしいと思っています。たくさんの経験をして、たくさん失敗してほしいと考えています。ただ、失敗したときにも諦めず、挑戦し続けることが大切だと思いますね。

編集後記

ジャパン・プロパティーズ株式会社の経営理念の根底には、より安全性の高い新しい金融商品を社会に普及させたいという、一貫した思いがある。その実現のためならば、事業の準備に関する苦労もいとわない。目先の利益に飛びつかず、自分の信じた道を邁進する姿がそこにあった。

高将司/1985年生まれ。2006年にサヴィルズ・ジャパン株式会社(本社:英国)に入社し、オフィス・リーシング事業の日本マーケット立ち上げメンバーとして参画。最年少ながら売上を伸ばし、日本マーケットでの基盤構築に貢献した。2012年にジャパン・プロパティーズ株式会社を設立。上場企業からベンチャー企業まで、世界中に幅広い経営者ネットワークを持つ。