【ナレーター】
世界40以上の国と地域に拠点を有し、事業を展開するグローバルメーカー「ブラザー工業株式会社」。
ミシンの修理業を祖業とし、以降、家庭用・工業用ミシン、タイプライター、プリンター、業界初の通信カラオケシステム『JOYSOUND』など、革新的な製品を次々に生み出す。
2021年10月には同社の存在意義を再定義し、“あり続けたい姿”を起点にした新たなグループビジョン“At your side2030”を発表。
進歩をし続けたい全ての人々の願いを叶える存在であり続けるべく、その歩みを着実に進めている。
経営者が語るグローバルメーカーの矜持と、次なる成長ビジョンとは。
【ナレーター】
あらゆる場面でお客様を第一に考える“At your side.”の精神で、ものづくりを通して優れた価値を創造し、迅速に提供することで、グローバルに事業を展開するブラザー工業。
自社の強みについて、佐々木は次のように語る。
【佐々木】
お客様にとってメリットのあるものを提供していくという考えで進める。この考え方が結構、グループの中で浸透してきて、これがある意味強みではないかと思っています。
やはり自分たちの世の中を良くしようとする努力が世界中のお客様のところに届いて、効果を発揮するという、これが本当にやりがいがあるというか、ありがたいというか。
お客様からのフィードバックもありますし、そうするとまた社員たちは非常にやる気が出て一生懸命やってくれますし、こういうことがメリット、強みではないかと思っておりますね。
【ナレーター】
“At your side.”の精神を常に持ち、顧客の視点に立ったものづくりをするために様々な取り組みを推進していると佐々木は言う。
【佐々木】
イーコマースの会社がユーザーレビューというのをたくさん載せてくれていますから、そのようなユーザーレビューを社員に共有したり、後は若い社員に販売会社に行ってもらい、お客様のもとに訪問していただいたりだとか、そこですよね。
いかにお客様の気持ちと自分たちの気持ちを合わせていくことができるのか、これが“At your side.”の実現だと思うので。そういうことを一生懸命やっていますね。
【ナレーター】
ブラザー工業をけん引する佐々木の原点は中高時代にまで遡る。当時の身の回りの便利さに気づいた佐々木が決心したあることとは。
【佐々木】
当時の自分の身の回りを見回してみると、水道があったり電気があったり病気になるとお医者さんがいて薬があったりとか、大変便利な世の中だったんですね。
だからこの便利さの中で生きるとしたら自分も少しでも今の世の中を前進させて、少しでもいいので便利な世の中をつくることに寄与する。これが自分の使命だろうと思ったわけです。
ですからエンジニアとしてそういうところに貢献したいということを強く願うようになりました。
【ナレーター】
その後、在学していた大学教員の勧めもありブラザー工業へ入社。新卒2年目にアメリカへ長期出張し、営業現場に同行する機会を得る。
その中で訪れた展示会で競合他社の技術に圧倒され、危機感を募らせた佐々木は、ある行動に出る。
【佐々木】
たとえば活字プリンターだと1分間に40字、ドットマトリクスプリンターでも1分間に約240字と一番早い商品でもそれぐらいしか印刷できないんです。
ところがレーザープリンターは、1枚2000字程の用紙が1分間に8枚、16,000字印刷できたんです。
値段はもちろん10倍以上するんですけれども、もうこれは全然勝負にならないので、当社もこれをやらなければいけないということで、それ以降、私は残りの期間、日本に書くレポートの最後に「ブラザーは絶対にレーザープリンターをやらなければならない」というようなことを必ず書き添えて、毎日毎日送っておりました。
そして、しばらくしてようやくレーザープリンターを始めることができたわけです。ところがその後、どうしても部門長が取り組みたい別のテーマが出てきまして、でも私はとにかくレーザープリンターは当社でやらなければいけないと思っているものですから。
部門長に直訴して、「とにかくコントローラーだけでも絶対にブラザーでやらないといけないからやらせてくれ」と。
「そのコントローラーは絶対あなたが推進しているプロジェクトにも役立ちますし、共通で使うこともできる。こんないいことはないからとにかくやらせてくれ」ということで、直訴してやり始めました。
結果的に入社して間もなかったですが、リーダーのような形でプロジェクトを推進したということです。
【ナレーター】
佐々木の執念が実り、1987年、ブラザー工業はレーザープリンターの生産を開始。その後、販売の現場を深く知りたいと思った佐々木は、自ら希望してイギリスの販売子会社の代表に就任した。その中で得た学びとは。
【佐々木】
イギリス人のロジカルな考え方、これが非常に勉強になったわけです。
自分が「来年、これに取り組むぞ」と言っても、「ミスターササキ、なぜあなたはそれがベストだと思うんだ?私はこっちの方がいいと思う」「私はこっちの方がいいと思う」と非常に議論をして。
それを「いやいや、あなたの意見ももちろん考えたんだけれどこういうリスクがある。だから自分はこっちのほうがいいと思ったんだよ」というように、全部ロジックで説明していくことが求められる。
面白いことに、その説明をしてみんなが納得するとその後の動くスピードは日本より格段に早いわけですよ。
ですから、普段から物事を突き詰めていろいろなことをしっかりと考えておく。そういう訓練をしてくれたこと、それからロジックで説明する重要性を学ばせてくれたこと。これが自分にとっては非常に大きかったです。