新型コロナウイルス感染症。2019年12月、中国・武漢で初めて感染が確認されてから世界での感染者数260万人以上、死亡者数18万人以上(※)と未だ猛威をふるっております。

日本国内においても、今般の新型コロナウイルスに関連した感染症の感染者は1万人(※)を超えました。
※いずれも2020年4月24日正午時点

2020年4月7日には、ついに日本政府から緊急事態宣言が発令。学校の一斉休校や各種イベントの中止、外出自粛が求められる事態となり、経済的なダメージが業種・業態問わず拡大しています。

2020年4月9日に報じられたロイター通信の記事によると、IMF(国際通貨基金)の専務理事が、コロナウイルスが世界経済に及ぼす影響を「1930年代の大恐慌以来のマイナスになる」との見解を示しています。

とはいえ、日本は戦前の世界恐慌、オイルショック、バブルの崩壊やリーマン・ショック、震災等、これまでも多くの経済危機を乗り越え、経済回復をしてきました。

今回、社長名鑑特別企画として、日本を代表する企業の経営者が危機に直面した際にどのような考えを巡らせ、どのような行動を取って乗り越えることができたのか、現在の状況をどのように捉えているかといった情報を収集し、要約した内容を1名ずつご紹介していきます。

33期連続増収増益を実現。日本を代表する家具メーカーの創業者

ご紹介するのは、リーズナブルで実用的な家具・インテリアを製造、販売する株式会社ニトリホールディングス(以下ニトリ)の創業者であり、代表取締役会長の似鳥昭雄氏です。

出典:怖いほど当たる!ニトリ会長の経済予測2020 「景気が悪くなる兆候」を探る方法 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

まず、ニトリの企業概要を簡単にご紹介します。

連結売上高は6500億円超(2019年3月期)、33期連続増収増益を果たしており、国内に541店舗を展開する他、台湾、中国、米国など海外にも進出。「お、ねだん」以上のキャッチフレーズは、すっかりおなじみとなりました。

似鳥会長は、常に一歩先を見据え、増収増益を追求してきた日本を代表するリーダーと言っても過言ではありません。同氏は、非常事態宣言が発令される前日に開催された4月6日の決算会見で次のように豪語しました。

「不況こそチャンス。うちは無借金で預金もあるから、攻めていくことができる」。
ニトリ、コロナ禍でも「増収増益宣言」の衝撃 | コロナショック、企業の針路 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

似鳥会長はこれまでも数々の危機を乗り越え、自社の成長につなげております。その経験や実績が、コロナショックで暗雲が立ち込める現在においても、ゆるぎない自信となっているのではないでしょうか。

ニトリがどのように危機を乗り越え、チャンスに変えてきたのか。その足跡を一緒に見ていきましょう。

バブル崩壊もリーマン・ショックも追い風にした似鳥会長の「先見力」

もともとニトリは北海道の小さな家具店からスタートしました。そして、1989年の9月に札幌証券取引所に上場します。当時40代だった似鳥会長は、業績拡大を目指していましたが、道内で足踏みする状態が続いていました。

利益や店舗数を伸ばせていない状況にも関わらず、似鳥会長は「本州進出」という大きな決断をしました。しかもそれは、バブルが完全にはじけた1993年のことでした。

一見無謀とも言える挑戦に至ったのは、似鳥会長が“世間と同じことをしていては勝てない”と認識していたからです。

「バブル時は従来比で土地も建物の価格も2倍に上がる。しかし、不況になれば半値になって元に戻る。この法則がわかったので、景気のいい時は投資は半分に控え、逆に不景気になったら投資を2倍にして土地も建物も積極的に取得していく。この繰り返しで、世間とは逆を行くのがセオリーだと考えています」
引用元:ニトリが不況を経るにつれ成長した理由、似鳥昭雄会長に聞く|週刊ポスト(株式会社小学館)

本州進出後のニトリの快進撃は周知の通りで、右肩上がりの成長を続けていきました。

その後迎えた第二の不況が、世界経済に大打撃を与えた「リーマン・ショック」です。


しかし、このリーマン・ショックが訪れることは似鳥会長にとって折り込み済みでした。

リーマン・ブラザーズが経営破綻する以前の2008年の年明け早々に、後々訪れる不況を予見し、いち早く定番商品の値下げを敢行。その後、2年間に渡り値下げ商品を増産し、店舗出店も加速させるなど、攻めの姿勢を貫き続けました。

当時行った施策の意図について、2019年5月号の週刊ポストに掲載されたインタビューでは、次のようにお話されています。

「次に景気が悪くなるのはいつかを常に調査し続けることに尽きます。景気が悪くなったほうが、当社にとってはチャンスが多い。投資がしやすくなり、優秀な人財も採用できるからです。逆に景気が良い時は好材料が生まれない」
引用元:ニトリが不況を経るにつれ成長した理由、似鳥昭雄会長に聞く|週刊ポスト(株式会社小学館)

似鳥会長が何歩も先を読み、同業他社と逆を行くスタンスを取り続けた結果、ニトリは業界において好調をキープし続ける、唯一無二のポジションを築くことができました。

コロナ大恐慌下にあっても「増収増益」を掲げるニトリの今後の展望

新型コロナウイルス感染症は2020年4月21日時点で、まだ終息の兆しは見えておらず、長期化が予想されています。

冒頭でも取り上げましたが、世界経済への影響について、IMF(国際通貨基金)の専務理事は「リーマン・ショック以上のものになる」と2020年4月9日のロイター通信の記事で発言をしています。

このような状況下での投資について、似鳥会長はこのように予想を立てました。

「物流センターの土地や建物に投資するチャンスが来る」
引用元:ニトリ、コロナ禍でも「増収増益宣言」の衝撃 | コロナショック、企業の針路 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

これは、建築費が下落することを見込み、ニトリのビジネスモデルをさらに強固にするため、この状況下でも店舗建設や設備増強を進めていくということを意味しています。

まとめ

メディアで取り沙汰されている情報や、未曽有の事態に直面すると、どうしても考えが硬直し保守的になり、視野が狭くなりがちになってしまう傾向があります。

日本全体がコロナショックに沈む中、似鳥会長は「増収増益」を目指す姿勢を変えず、この危機を「チャンス」と捉えています。

その姿勢は過去にあったバブル崩壊、リーマン・ショックにおいても経済予測を的中させ、新規出店や設備投資を行うなど「逆転の発想」で事業展開を続けてきました。

この逆を行くという視点について、2017年5月号の週刊現代の記事で似鳥会長はこう述べています。

『「いままでに無いもの」や「不可能」と言われる分野に入って行き、その分野の人ができないようなものを作り上げる。私がしたいのは、そんな革命であり、アドベンチャー』
引用元:ニトリ会長が明かす、30期連続増収増益「一人勝ち」の極意(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(3/3)

また、似鳥会長は定期的にアメリカ経済を定点観測し、常にその動向に目を向けているそうです。

肌で経済の変化や潮流を感じ、日本の未来におきかえ、先に先に行動するスピード感。どんなに混乱した状況下であっても、皆と同じ方向には流されない、ブレない姿勢が結果につながっているのだと感じました。

困難な状況にあっても悲観的になるだけでなく、ポジティブに次のチャンスを見定め、行動していくことが自身の成長へとつながっていきます。

今こそ「逆転の発想」で、常に難局を力に変えてきた似鳥会長の姿勢を参考に、行動を変化させてみてはいかがでしょうか。

【記事掲載日 2020.4.24】

▼参考サイト
新型コロナウイルス感染 世界マップ:日本経済新聞
新型コロナ危機、1930年代の世界恐慌以来の大不況に=IMF - ロイター
ニトリホールディングスWebサイト
ニトリ、コロナ禍でも「増収増益宣言」の衝撃 | コロナショック、企業の針路 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
ニトリが不況を経るにつれ成長した理由、似鳥昭雄会長に聞く|週刊ポスト(株式会社小学館)
ニトリ会長が明かす、30期連続増収増益「一人勝ち」の極意(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社
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