株式会社コロンバン 倒産寸前から奇跡の復活。老舗洋菓子メーカー 波乱万丈の再生物語 株式会社コロンバン 代表取締役社長 小澤 俊文  (2019年11月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】

当時のコロンバンはヒト、モノ、カネ、時間、全てが不足しており、再生は困難を極めていた。

しかし、従業員たちの想いに触れ、小澤は一人の人間としてコロンバンを再生させたいと思ったと語る。

【小澤】

コロンバンを創設したのは、門倉國輝という日本の洋菓子業界の父と呼ばれる人です。

日本を代表する洋菓子店を、銀行員的な目で「この会社は財務も悪いし再生する人もいないから潰してしまおう」というのは簡単です。

しかし、そういうものを無くしてしまっては、日本の食文化のひとつであるお菓子の文化が途切れてしまいます。

文化というものは社会にとって非常に大事なものですから、それを無くしてはいけない。また、熱い想いを持ってその文化を引き継いでいる人たちもいるのですから、そういう人たちの母体であるコロンバンを簡単に潰してはいけないと私は考えました。

【ナレーター】

コロンバンの再生を誓った2年後の2006年に、小澤は代表取締役社長に就任。

再生の第一歩として、ヒット商品が不可欠だと思った小澤は、限られた資源を最大限に活用し、生み出したのが『東京サクサクチョコ』というチョコレート菓子だ。

コロンバンの販売店がある東京駅で、当時はチョコレート菓子を販売している店舗が少なかったことや、試食販売の効果も相まって、『東京サクサクチョコ』は大ヒット。

まさに起死回生の商品となった。

【小澤】

本当に久々の大ヒット商品でした。そういったものができたというのも、皆の成功体験になり人の意識を変える一つの大きなきっかけになりました。

企業の再生には、財務の立て直しなど様々な立て直しがありますが、一番難しいのは人の心を変えることです。

「やればできるんだ」という気持ちを植え付けることが、本当の意味での再生なんですね。

【ナレーター】

この経験が転機となり、その後もヒット商品を次々に生み出したコロンバンは、見事再生に成功。小澤がこだわる組織マネジメントと求める人材像とは。

【小澤】

やはり自分でやらないと駄目ですね。

「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」という山本五十六の言葉がありますが、まさにそういうことです。

自分からやって見せないと周りはわかりません。

リーダーと言われる人は率先垂範であるべきです。

もしできなくてもやればいい。失敗したらそれを仲間と共有して、なぜ失敗したかを考えれば、それがグループとしての体験値になっていくので、次に失敗しないようにすれば失敗ではないのです。

そういったことをやらないで、ただ評論家のような物言いをしているだけでは組織自体が強くなりません。

採用時に気にかけるのは、本人の意欲です。

私は、能力というものは人によってそれほど変わらないと思っています。よく能力が高い、低いと言いますが、能力というのは意欲で十分カバーできると思います。

能力があっても意欲がない人は力を発揮できません。意欲のある人は能力がなくても意欲でカバーできます。

「やりたい」という気持ちが強い人はやはり何かを成し遂げていくだろうし、非常に高い知能指数と能力を持っていてもそれを発揮しない人は、やはり駄目なのではないかと思います。

【ナレーター】

コロンバンの今後の展望について、同社が2010年から取り組む都市養蜂を引き合いに、小澤は次のように語る。

【小澤】

これからの世界は、モノではなくコトを売らないといけない時代です。

AIやIoTといったものが次々と出てきて、マーケット自体も変わっているのです。

商品の内容物やそのストーリーなどを組み合わせていかないと勝負できない。そういった商品展開をこれからは考えていかないといけません。

例えば当社は社屋の屋上で養蜂をやっています。

原宿での養蜂というのは非常に珍しく、ここでしか採れない唯一のものとして強いフックになるのです。年間約500キロ程度しか採取できない蜂蜜を、原宿で販売することにやはり意味があります。

このように自分たちでコトを創ることもできるのです。

過去に販売していた『マーブルケーキ』は大ヒット商品でしたが、パティシエブームによって新しいケーキが次々と出てくると、次第に人気がなくなってしまい、当社でも売らなくなりました。

試しに食べてみると、確かに少しボソボソしているのです。

ではそこに『原宿はちみつ』を入れてみると、蜂蜜は保湿効果があるので非常にしっとりしました。

このようにして、昔ヒットした商品が、原宿産蜂蜜という他にはない競争力を持った新しいヒット商品となってまた売れ出します。

これは、当社の伝統的な商品と新しい商品が融合し、それら自体がコロンバンというブランドを醸成していく複合的な組み合わせになるわけですね。今後はこれが必要なのだと思います。

【ナレーター】

2024年で創業から100年を迎えるコロンバン。

その歴史を紡いだ小澤の「率先垂範の精神」は、これからも受け継がれていくことに違いない。

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経営者プロフィール

氏名 小澤 俊文
役職 代表取締役社長
生年月日 1953年11月21日
出身地 神奈川県
座右の銘 為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の為さぬなりけり
愛読書 『坂の上の雲』、『勝つためには何をするか』
尊敬する人物 平清盛、織田信長、渋沢栄一
著書 テスト
略歴
1976年 4月 三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
1992年 4月 築地支店副支店長
1997年 4月 中目黒支店長
2000年 4月 亀戸支店長
2002年10月 神奈川公務法人部長
2004年10月 参与(東京)に就任
2004年11月 株式会社コロンバン 監査役に就任
2005年11月 常務取締役管理本部長に就任
2006年11月 代表取締役社長に就任 現在に至る

会社概要

社名 株式会社コロンバン
本社所在地 東京都中央区銀座8-17-5
設立 1924
業種分類 食料品・飲料製造業
代表者名 小澤 俊文
従業員数 309名(令和4年9月)
WEBサイト http://www.colombin.co.jp/
事業概要 ●洋菓子製造・販売 ●喫茶室の運営 ●不動産賃貸(渋谷コロンバンビル他)●養蜂及び関連商品の製造・販売
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