島村楽器株式会社 音楽を楽しむ人を、一人でも多く創る。「島村楽器」挑戦の先に描く未来 島村楽器株式会社 代表取締役社長 廣瀬 利明  (2022年2月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
国内最大級の総合楽器店を展開する「島村楽器株式会社」。

2022年2月時点で、国内173店舗を構え、楽器などの販売を行うだけでなく、音楽教室、イベントの運営、練習スタジオ、楽器のメンテナンスなど多岐に渡るサービスを提供。

近年では、ユーザーが自ら演奏した動画を投稿するコンテストの開催や、初心者でもギターを楽しく学べる動画配信サービス『ギターセンパイ』などのオンラインサービスにも注力。

2021年12月には、中古楽器をインテリア製品として蘇らせる『楽器アップサイクルプロジェクト』を発足し、地球環境の保護に寄与。楽器小売業の枠組みを超え、その活動領域を拡大させている。

「音楽を楽しむ人を一人でも多く創る」という創業者の思いを引き継いだ経営者が描く、事業を通じて実現したい未来とは。

【ナレーター】
島村楽器の強みと現在注力している取り組みについて、廣瀬は次のように語る。

【廣瀬】
島村楽器の強みは、お客様とのコミュニケーションを重視した営業スタイルです。お客様がどのような音楽生活をしているのか、ニーズをしっかりお聞きした上で、商品のご提案をしています。

このスタイルは、創業者の島村が築き上げてきたものの中で、絶対に変えてはいけない、最も大きな資産だと思っています。

その一方で、オンラインショップへの取り組みが遅れていましたね。むしろ、リアルなコミュニケーションが図れないオンラインショップに対して、距離を置いていたんです。

しかし、それは時流に沿ったスタイルではありませんので、オンラインショップの運営についても積極的に取り組んでいくつもりです。

しかし、オンラインショップばかり強化することは、実店舗のスタッフから見ると、今まで築き上げてきたコミュニケーション重視のスタイルを否定されていると捉えられかねませんので、力を入れすぎないよう、注意して進めていきたいと思います。

【ナレーター】
海外で仕事をしたいと考えていた廣瀬は、大学卒業後、政府管掌の金融機関へ入行。印象に残っている仕事について、廣瀬は次のように語る。

【廣瀬】
私が担当していたのは「プロジェクトファイナンス」という業務で、企業などのプロジェクトに対して融資をし、そのプロジェクトから生じるキャッシュフローを返済の原資とするものです。

印象に残っているのは、中東のある国向けの案件を案件着手から融資契約まで、担当できたことですね。契約時の調印式のときには、先方の国の大臣などもいらっしゃいました。そのとき、大学生の時に憧れていた国際金融という舞台に立てたんだと感動しました。

一つの案件に対して、数年かけて交渉をし、融資契約を締結しますから、案件着手から契約までを一人の担当者が担うというのは、非常に珍しかった。それを最初から最後まで担当できたということも、達成感がありましたね。


【ナレーター】
その後、社会人2年目で結婚し、そのお相手が、島村楽器の創業者、島村元紹氏のご令嬢だった。しかし結婚当初は島村楽器に入社をするつもりは全くなくそのような話自体もなかったと振り返る廣瀬。どのような経緯で入社に至ったのか。

【廣瀬】
結婚して3年ほど経ってから、創業者の島村に会社を継がないかと話を持ち掛けられたことがきっかけで島村楽器に入社しました。

当時、私は、国際金融の道に進もうと考えており、MBA取得の準備をしていました。しかし、何のためにMBAを取得するのか考えたときに、会社を経営してみたいという思いがあると気づいたんです。

それであれば、日本で最大級の楽器店を経営しないかというオファーを断る必要はないと考えが変わり、入社を決意しました。

島村から楽器業界や島村楽器の話を聞いており、島村楽器の仕事は非常に有意義で面白いだろうと感じていたことも大きいですね。


【ナレーター】
2004年、28歳で島村楽器に入社した廣瀬。入社当時、意識していたことについて、次のように語る。

【廣瀬】
私は、島村楽器のことだけでなく、楽器業界のことを全く知りませんでした。ですので、わからないことは、スタッフの方々に素直になんでも聞くようにしていました。

お店の販売スタッフの方が、私より楽器のことも販売のこともよく知っていますからね。

そのため、スタッフたちからは少なくとも「偉そうな2代目社長が来たな」とは思われていなかったと思います。

【ナレーター】
その後、キャリアを重ねた廣瀬は、2013年に代表取締役社長に就任。創業者の後を継いでの社長就任となったが、特にプレッシャーは感じなかったという。その理由とは。

【廣瀬】
社長に就任する前にある出来事が起こり、その経験が経営者としての決断力を磨く経験となりました。

社長就任前の2011年のことです。東日本大震災が発生し、島村楽器の東北の店舗も多くの被害を受けました。そのとき、営業の再開時期やどう再開するかなど、イレギュラーな対応が必要でした。

私はまだ社長ではありませんでしたが、当時から代表権は持っていまして、私がすべて決める前提で物事を勧めなければなりませんでした。

これは、決断力を磨くという上では必要な経験だったと思います。

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経営者プロフィール

氏名 廣瀬 利明
役職 代表取締役社長
生年月日 1975年7月19日
出身地 東京都
座右の銘 矛盾することを両立させるのが仕事の醍醐味
愛読書 イノベーションのジレンマ(クレイトン・クリステンセン)、組織の盛衰(堺屋太一)
略歴
1999年3月 慶応義塾大学法学部政治学科卒業
1999年4月 日本輸出入銀行(現在の国際協力銀行)入行
アジア・中東におけるプロジェクトファイナンス及び船舶金融業務を担当
2004年3月 国際協力銀行 退職 島村楽器株式会社 入社
店舗販売業務および経営企画業務
2004年8月 米国留学(2006年6月に経営学修士号取得後に帰国)
2006年6月 取締役就任
自社ブランド商品販売促進、音楽教室事業の推進、インターネット関連業務、人事制度の整備、出店投資採算シミュレーション等を担当するとともに会社経営全般に携わる
2010年5月 代表取締役専務就任
2013年5月 代表取締役社長就任

会社概要

社名 島村楽器株式会社
本社所在地 東京都江戸川区平井6-37-3
設立 1962
業種分類 小売業
代表者名 島村 元紹
従業員数 2,275名(2021年2月)
WEBサイト https://www.shimamura.co.jp/
事業概要 1.国内外各種楽器・音楽書籍・音楽雑貨の販売 2.各種音楽教室、ミュージックサロンの運営 3.練習スタジオの運営 4.音楽関連イベントの企画・製作、運営 5.商品開発 6.技術サービス 7.音響工事の設計、施工 8.各種楽器、及び付属品のレンタル・リース 9.音楽教育システムの開発及び運営指導
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