老舗体質から脱却せよ!鹿児島発の総合酒類メーカー、世界進出への道筋 ~『桜島』ブランドを擁する老舗総合酒類メーカー~

老舗体質から脱却せよ!
鹿児島発の総合酒類メーカー、世界進出への道筋


本坊酒造株式会社 代表取締役社長 本坊 和人

※本ページ内の情報は2017年2月時点のものです。

鹿児島市に本社を置く本坊酒造株式会社は、本格芋焼酎『桜島』ブランドを筆頭に、本格焼酎やワイン、梅酒などを製造する鹿児島を代表する総合酒類メーカーだ。日本では数少ないウイスキーメーカーとしても知られ、「ワールド・ウイスキー・アワード2013」ではブレデッド・モルト部門において世界最高賞を受賞するなど、国際的にも高く評価されている。

本坊酒造の創業は明治5年(1872年)。当時の日本では、全く新しい最先端技術であった連続式蒸留機による焼酎を製造し確固たる地位を築き、1960年代以降、洋酒事業にも着手。山梨にワイナリー、信州にウイスキー蒸溜所と展開し、地域に根ざした日本の“酒”の可能性を追求してきた。そして2016年には本坊酒造発祥の地である鹿児島県南さつま市に、本土最南端のウイスキー蒸溜所である「マルス津貫蒸溜所」を竣工。“ジャパニーズウイスキー”に新しい価値を生み出すため、世界を見据えた挑戦を続けている。

140年を超える歴史を持つ老舗メーカーが、新たなるチャレンジを続けるその意義を、代表取締役社長、本坊 和人氏に伺った。

本坊 和人(ほんぼう かずと)/本坊酒造2代目社長・本坊常吉の孫として、鹿児島県に生まれる。慶応義塾大学卒業後、関連企業である南九州コカ・コーラボトリング株式会社(当時)に入社し、ブラジルにて現地蒸留酒の製造販売などを手掛けた。本坊酒造の取締役就任以降、酒類事業の再構築、ブランド再編など改革を断行する。2013年より代表取締役社長。趣味は“生き物”。学生時代は昆虫採集のために各地を飛び周っていたが、現在は微生物発酵から生まれる“酒”に熱中。

「このままでは潰れる。」改革の原動力は危機感とジレンマ

-焼酎で成功なさっていながらも、ワインやウイスキーと製造の幅を広げていかれました。どのような思いを持たれていたのでしょうか。

本坊 和人:
焼酎では確かにそれなりの利益を上げていましたが、私は入社当初から「このままでは酒類ビジネスの中で存続できない」という強い危機感を抱えていました。私には、新式焼酎(連続式蒸留焼酎)『寳星』がヒットした昭和30年代の良き時代を財産に、会社の体制が変わらぬまま続いているように見えたのです。

世の中は常に変わっています。新式焼酎が製造できる蒸留塔を持つことは当時とても付加価値がありましたが、どこが造っても同じような性質を持つ酒であるため、ある時から大量生産できる大手にかなわなくなりました。一方、昔は癖がありばらつきのある酒と思われていた乙類焼酎が、今では原材料が明確で各々の蔵で造りが異なることに価値があると、本格焼酎として人気を博しています。

世の中が求めるものは、時代によって全く違ってくるのです。従来の事業を転換できないままでは時代の流れに取り残されてしまう。関連会社から本坊酒造に入った私は、連続式焼酎から、売上げを見込めると考えた本格焼酎やワインに事業を注力する方向へシフトさせていきました。

-かなり大きな改革に、反発はなかったのでしょうか。

本坊 和人:
昔は「若年が何を言うか!」という世界でもあり、諸先輩や父親とも激しいやり取りをしました。しかし私は危機感と同時に、本坊酒造が持つもの、とても良質なコンテンツを生かす術がないことに、激しくジレンマを抱えていました。

このまま行けば事業が立ち行かなくなる。ある程度、力技ではありましたが、転換を大きく進め始めたのは、ある程度、権限を持てるようになった常務取締役就任以降です。当時は、決算内容的には厳しい状況もあり、株主でもある本坊家の皆様からも厳しいご意見をいただきました。お陰様で運にも恵まれ、1990年代後半のワインブームや、その後の焼酎ブームで市場が拡大していく中、ある程度うまく転換が進みました。

グローバルマーケットを見据えて

-本坊酒造は、昭和の早い時期からウイスキーの製造免許を取得されたり、洋酒製造の拠点としての山梨ワイナリーや信州蒸溜所を設立されたりと豊富なコンテンツをお持ちでした。しかし蒸溜所は、一時は休眠状態となっていたこともあります。それらの施設を再び整備された先見性は、どのように培われたのでしょうか。

本坊 和人:
私は関連企業在籍時にブラジルに勤務したり、海外取引の担当をしていたりと、世界のマーケットを目にする機会が多かったからだと思います。

確かに以前の当社の洋酒事業は全体の収益を押し下げており、長野でのウイスキー製造も一時は休止していました。しかし、私の感覚ではここには大きな価値があると思っていました。世界的に見ればワインやウイスキーのマーケットは大きな市場規模を持ち、かつグローバルな評価軸があります。そして自分達の造る製品は、そこと比べても決して引けを取るものではないと認識していました。問題はそれをどう生かすかです。ブームに乗り、ワインは比較的に早い時期に小さいながらも収益事業になりました。ウイスキーは日本のマーケットではなかなか厳しかったのですが、欧米のウイスキービジネスの活性化につれて日本製が評価され始め、また国内ではハイボール流行のきざしもありました。ここが売り時、この潮目でやらないと我が社が持つコンテンツをビジネス化できない。そう思って、長野の蒸溜所に再投資したのです。これは賭けでした。それでも、このタイミングを逃していたら、今のウイスキー事業はなかったと思います。

ウイスキーは20-30年経って評価されるある意味リスキーなビジネスモデルです。しかし数年前に蒸留を再開していたからこそ、少しずつですが世に出せる新しい商品が生まれ、流れができています。ウイスキーには、ビジネスの場所が山ほどあります。日本ではバブルの終わりから洋酒の売上は激減していますが、世界のハードリカーマーケットは非常に伸びています。日本だけを見ていては、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまいます。

本坊酒造発祥の地である津貫蒸溜所。石蔵樽貯蔵庫で数多くのウイスキー原酒が熟成の時を重ねている。

-グローバル展開において、どのような取組みをされていますか。

本坊 和人:
最も重要なのは、マーケットとの信頼関係を作ることです。商流の形ができつつある国や期待が持てるエリアからのオファーは増えていますが、ものを造って提供すれば売れるかといえばそうでもない。ここ3年くらいがひとつの大きなポイントになるでしょう。


海外マーケットが求める商材としてのウイスキーは徐々にできつつあります。原酒の在庫量の問題もあり、今は3億円ほどの売上規模ですが、なるべく早い時期に10億円レベルにしたいです。業界では以前から、少子高齢化の時代に備えるには海外に出ないと厳しいと言われてきました。ようやく、道筋が出来てきたと感じています。


-社長として取組みの強化を考えていらっしゃることはありますか?

本坊 和人:
本坊酒造には、焼酎やワイン、ウイスキー、また今取り組んでいるリキュールやスピリッツなどのコンテンツがあります。各々マーケットの性格が違うので、酒類ごとに事業部制でも、社内カンパニーのような形でもいいですが、一つ一つが独立したビジネスとして成り立つようにしたいですね。

全ての社員が営業職であってほしい

-御社に必要な人材についてはいかがですか。

本坊 和人:
求めるのは、当社の持つ強みをきちんとプレゼンテーションできる人です。我々はすでに良質なコンテンツをたくさん持っていますので、それを繋いで営業活動ができる人が望ましいですね。

そして我々のビジネスにはプロが必要です。酒のプロといっても必ずしも造り手ではありません。酒の文化は、消費の文化でもあります。消費にまつわる歴史的な逸話が積み重なってできる、いろいろなストーリーをまとめて価値として飲むのが酒なのです。知的会話が成り立つ酒ならば付加価値が付き、ウイスキーやワインのように世界で飲まれる酒にもなります。見識を備え、自分たちの創り出した価値を広められ、売ることに挫けない。そんなプロの人材を求めています。

この業界ですと、現場に飛び込める人は強いですね。高級クラブから居酒屋、問屋、組織量販…それぞれの酒の飲まれ方を知ることが、ビジネスに役立ち、説得材料にもなります。事務職や製造職にかかわらず、本当は意識の上で全員が営業職であってほしい気持ちです。

-就職活動中の読者に向けてメッセージをお願いします。

本坊 和人:
社員を見ていると、直近で活躍している人たちは、自分が何をやりたいかということをきちんとアピールできています。当初は希望と合致しなくても、目指すもののある方は入社してからの吸収力が抜群に早く、非常に伸びています。

どんなものでも、自分の興味を表に出している人は魅力的です。好きなものを深く掘り下げていくうちに、その周辺はどんどんと広くなります。そこで身についた事柄は、さまざまな形で生きてくるでしょう。

私は何かに熱中できる人は、突き詰めるうちに非常に大きくなると思っています。そして酒のビジネスにはそのような人が必要です。“オタク”であることは貴重なこと。ぜひ本坊酒造に来ていただきたいですね。

編集後記

「当面の課題は営業サイド」と語る本坊社長からは、自社の製品に対する強い自信が感じられた。そのうえで必要なのは、自分たちの持つ要素をきちんとアピールできる姿勢。現在主力である焼酎に関しても、コンセプトを明確にして戦略的に臨めば、日本酒のように一つのカテゴリーとして世界に認知させることが可能ではないかと話された。海外展開が今後の飛躍に欠かせないことは酒類業界の共通認識であるが、地方メーカーにとってハードルは高い。本坊酒造はその先駆けとして、ジャパニーズ・リカーの可能性を探る。

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