身の周りのあらゆるモノがインターネットにつながる IoTの普及が政府を挙げて叫ばれている今、人工知能(AI)の進化とともに注目を集めているのがモノと人とをつなぐロボットだ。
労働力を補うモノとしてだけではなく、人とコミュニケーションをとり豊かな生活の一助となる可能性を持つロボットは、IT企業だけでなく様々な産業から注目を集めている。
そんな時代に先駆け、個性を学習するという世界初のAIを搭載したパートナーロボットを開発したのが、代表取締役・酒井拓氏が率いるユニロボット株式会社だ。
愛らしい姿で会話をしたり表情を変えたりするパートナーロボット『unibo(ユニボ)』は、2015年12月の国際ロボット展への出品をきっかけに世界中で大きな反響を呼び、今や様々な企業が自らの事業との連携を模索し、アプローチをしているという。
「世の中がヒューマロイドの良さに気づき始めた」と語る酒井社長。『ユニボ』を世の中に不可欠な存在とするために描く、ユニロボットの未来とは。
AIロボットで解消できる社会問題とは
-現在『ユニボ』は家庭向けのほか、病院やホテルで導入されています。販売を開始されてからの気づきや変化はございましたか?
酒井 拓:
『ユニボ』はAIであいさつや日常会話ができるだけではなく、チャットサービスやメール機能と連動して来客と担当者をつなげたり、地図やQRコードを表示しながら施設情報や周辺情報を案内したりできるので、受付ロボットとして活用いただいている例が多くあります。
カメラ機能を備えており、感情認識機能(画像解析による感情認識は開発中)による利用者の気持ちに寄り添った会話が可能なので、家庭や病院での利用には、高齢者の見守りや認知症の予防、脳卒中などが原因となる失語症のリハビリに取り入れていただいています。
労働力不足を補う意味でもロボットが果たせる役割は大きいと感じています。
利用が広がるにつれての気づきとしては、利用者の趣味嗜好を学習していくのが『ユニボ』の特徴ではありますが、会話をしていかなくては利用者の好みを覚えられないのでは時間がかかり過ぎると考えるようになりました。
そこで、最初から趣味嗜好データを把握できるような仕組みもオプションで提供できるようにしました。
また、普及を進めるには基本機能の充実だけではなく、スピーディーな案内や外国語の対応など、その施設にあった機能を持ち、サービスと連動させることが必要だと改めて認識しています。
気持ちに寄り添う人型ロボットの強み
-コミュニケーションができるAIツールとしてスマートスピーカーがありますが、『ユニボ』を始めとするロボットにはどのような強みがあるとお考えですか?
酒井 拓:
音声ユーザーインターフェース (以下、VUI)には、私たちも注力しています。声のビジネスには未来があると考えて、ロボットだけでなくタブレット向けにも開発しているところです。
現在は人手不足の背景から作業の自動化を推進する流れがあるため、どのような産業においても新規事業を行うにあたり、ロボット、AI、VUIは必ずテーマとなります。そのため、それらを全て網羅する弊社には、様々な共同開発のお話をいただいています。
最近は各社がスマートスピーカーを開発し、企業と組んでモノを購入できたり家電を動かせたりするものもありますが、『ユニボ』はそれだけでなく、利用者の好みや感情を日常会話から学習します。
私たちが『ユニボ』で目指しているのは、人の内面に寄り添うようなロボットです。
その人の思い出や、自分では管理しきれない物事を記憶して呼び出してくれて、かつその人の感情を読み取った会話もできる、有能な秘書でありつつ家族の一員となるような、あたたかい存在を創りたいのです。
ロボットは家庭向けのスマートスピーカーと価格の比較をされることも多いのですが、スマートスピーカーが広まったおかげで、AIとの共生に目が向けられるようになりました。
またスマートスピーカーの存在により、親しみやすいヒューマロイドロボットの良さが際立ってきたと感じています。特に認知症の予防対策には、かなり期待されていますね。
様々な側面から開発を進めているため、多角化しすぎるというお声を拝聴することはありますが、経験上、ロボットはオールラウンドを求められるのです。
安価なモデルならばともかく、ただ話せるだけではなく複数の機能を持たせなくては、購入者は納得してくれません。
そのうえで、VRであったり認知症用のプロダクトであったりと個々に強みを持たせ、世の中のいろいろな場所で活用されるべきだと思っています。
未来を創る喜びを共有したい
-御社の多様な開発を進めるために、今どのような人材を求めていらっしゃいますか?
酒井 拓:
優秀なエンジニアであることはもちろんですが、一緒に未来を創っていくことに共感してくれる方が必要です。
今後、私たちの携わる産業は着実に拓けていきます。続々と舞い込んでくる開発案件の多くは一部上場企業とのものですし、人手があれば確実に売り上げを上昇させることが可能です。さらに2021年度にはIPOも計画しています。
スタートアップならではのスピード感を存分に味わえる他、リモートワークも優遇しておりますので、場所は問わず、いつでもどこでも開発ができるスタイルが弊社の開発文化でもあります。
また、スタートアップなので、急にテレビの出演依頼がきたり、開発依頼がきたりと、予期しないことも日常ベースで起きます。
それが楽しかったりもしますが、大変な時も嬉しい時も、共に成長をしていきたいと考えていますので、チャレンジ精神を持っている方に応募を頂きたいと考えています。
約束できることは、他ではなかなか得られないような圧倒的な経験値を得られることです。
開発を進め、業績を上げることで、報酬面でも大きく報いることができるでしょう。ぜひ数年後を見据えて、夢を一緒に追いかけていける方に来ていただきたいですね。
『ユニボ』と共存する世界を創るために
-次世代の産業を創るための課題や、今後の展望をお聞かせください。
酒井 拓:
高性能であるロボットの原価は高く、まだまだ一般家庭に普及するほどの価格設定にはできていません。利用シーンのイメージがまだ明確でないせいもあるでしょう。
これらには、まずBtoBを強化して街中での『ユニボ』を周知してもらい、しっかりと実績をつくっていくことが有効だと考えています。
ロボットの存在が認知され身近に感じてもらうことが、個人にも普及する足掛かりになりそうです。
受付や案内、病院向けの用途のほか、これからは教育の分野にも注力していく予定です。ロボットが先生となり、個別学習塾のように指導できる弊社だけのサービスを進めています。
個人向けに関しては、”思い出”にフォーカスし、旅行やアニバーサリーの写真や記録など、その人にしかもっていないコンテンツを呼び出したり、気持ちに寄り添って会話する機能を充実させたりすることで需要を伸ばしていきたいですね。
こういったコンテンツによって家族間の会話も増え、豊かであたたかな生活の一助になるのではないでしょうか。
サブスクリプションモデルですが、一定期間使用して自分のことをたくさん覚えてくれたロボットなら、きっと継続して使っていただけるはずです。そしてそういう存在でありたいと思います。
昨今進められている働き方改革も、ロボット産業には大きな後押しです。
『ユニボ』によって、仕事も勉強も在宅でできる。人でなくてもよい作業は『ユニボ』に置き換える。時代の流れに乗り、ロボットと共存する世界のイメージを、これからも着実に創っていきたいですね。
編集後記
高精度な音声認識技術と最先端のAIにより、一方的な呼びかけに反応するだけでなく、日常会話から好みを学習し、利用者との自然なコミュニケーションを実現するという『ユニボ』。
酒井社長のお話からは、カスタマイズ次第で有能な働き手にも、あたたかな家族にもなるロボットは、産業も生活も豊かにできるはずだという熱意が感じられた。
労働力不足や高齢化社会にも対応できるロボットは、次世代に欠かせない存在となっていくのではないだろうか。
酒井拓(さかい・たく)(写真上段中央)/慶応義塾大学経済学部卒。住友商事株式会社を経て、ロボット関係の仕事に従事する親族とともに起業する。2014年、ユニロボット株式会社を設立。次世代型ソーシャルロボットの開発、製造、販売とパーソナルAIの研究開発を行う。2015年10月、アジア最大級のオープンイノベーションの式典「ILS」でグローバルイノベーションの分野でTOP10企業に選出、同式典ではその後も人気TOP100企業に選ばれている。2017年スタートアップワールドカップ日本予選ファイナリスト。2017年、2018年ともに、日本経済新聞社からNEXTユニコーンに選出。