【ナレーター】
産業全体の生産性課題の解決を目的とし、AIを核とした産業協調を実現する株式会社JDSC。
製品の需要を予測し、在庫数の最適化を実現する「demand insight」や、電力データを用いて「不在配送問題の解消」を目指す取り組みなど、様々なAIソリューションサービスを展開。
近年では、産学官7社と合同で電力データを用いた高齢による虚弱状態を指す「フレイル」をAIで検知し、未然に重症化を防ぐプラットフォームの実証実験を開始。社会課題をAIで解決すべく挑戦を続けている。
“UPGRADE JAPAN”をミッションに掲げ、産業そのものの変革を目指す創業者の軌跡と挑戦に込めた想いに迫る。
【ナレーター】
自社の強みについて、加藤は次のように語る。
【加藤】
創業当初からデータサイエンス、ビジネスエンジニアリング、そしてコーポレートという、三位一体ないしは四位一体でやっている会社というのはまだまだ少ないと思います。
良いバランスを持ってアプローチできると何がいいかというと、今までほかの企業では解けないような難しい課題を解くことができるんですね。
不在配達のことを考えてみましょう。10年前の日本の荷物は約34億件で、今だいたい43億件。イーコマースも普及していますし、ステイホームもあり、たくさん普及しています。
そしてそのうち約20%が不在率です。約8億数千万件ですね。それをやったところで収益を得ることはできないので、ヤマト、佐川、日本郵便の3社だけで、20%の不在率で年間約2,000億円のコストがかかっています。
こういったものを減らすこと、によって非常に大きな収益機会を提供することができますし、 我々はそこに対して強力な基本特許を持っています。
加えて、しっかりと高齢者のドライバーでも働きやすい環境というのが実現されて、「昔は不在配達ってもっとあったけど、なぜか最近はない」といつの間にかなっている。
気づかれないけれども社会的な基盤になっている、というものを作ることができますし、不在配達に由来する配送の時間というのは全体の50%にも上ると言われていまして。当然CO2もその分だけ排出しているわけなんですが、それを減らすこともできます。
コミュニティも嬉しいし、お客様も嬉しいし、働き方改革にも寄与する。四位一体もできていて、これだけ熱い仲間がいて、社会課題も解いて、しっかりと企業成長を実現しようというメンバーがいるところに入ってこよう、ということを考える人にとっては、ここはもう天職に近い場所なんじゃないかなと確信しています。
【ナレーター】
JDSCの創業者である加藤は、東京大学卒業後、大手外資系メーカーを経てマッキンゼー・アンド・カンパニーへ転職。どのような経緯で起業に至ったのか。
【加藤】
マッキンゼーは複数のクライアントを抱えて、組織課題や経営課題を解決していくということを生業としています。
そうすると徐々に「会社経営って面白いな」と自分自身感じることが多くなって。当時は教育領域や医療領域に興味があったので、「医療で起業できないかな」と考えて、医療系の会社のDXを統括するような、ストラテジーのヘッド(責任者)として、ヘルスケアの会社に入ったんです。
2年ほどそこで仕事をした後に自分で起業ということになって、それが今の JDSC の前身となる社団法人の日本データサイエンス研究所というところだったのですが、それが2013年です。
【ナレーター】
大手企業でのキャリアアップという道を捨てる。この選択ができた理由について、加藤は次のように語る。
【加藤】
不安ではあるとは思うんですよね。しかし、いろいろな選択肢を取ったときに「一番後悔しないものはどこか」という意思決定をしていて、今でもそうなんです。
どの判断をしても、「ああやっていたらもっと違うことができたかもしれない」と思うのは嫌じゃないですか。
「起業したいと思っていながら、それができなかった」という鬱屈を抱えることのデメリットのほうがとても大きかった。
「今勝負しないことが最大のリスクだ」と考えて起業することにしました。
【ナレーター】
2013年に前身となる一般社団法人の立ち上げ後、事業は順調に推移し、2018年には株式会社化、2021年12月に東証マザーズへの上場を果たしたJDSC。挑戦を結実させるために意識していることとは。
【加藤】
我々は“UPGRADE JAPAN”と言っていて、どんな未来をつくろうとしているのか。具体的に、社会にとても良い影響を与えていて、かつしっかりと成長もできるといったものを、いったいどういう戦略でつくっていくのかといったことを、まず“ビジョン”として示していきます。そこに対して“変革のシナリオ”を描きます。
変革のシナリオというのはどういう手順を踏んで、どういうマイルストーンでその世界を達成するのかという内容ですね。
関わってくださるステークホルダーの皆様に対して「こうやって変わりたいんです」と示して、「あなたはここに貢献してほしい」ということをはっきりとお願いする。
その時にwin-winがなければ成立しないものなので「あなたにとって、これはこんなふうに嬉しいことです」という、それが実利であったり、やりがいであったり、給与であったり、成長だったりすると思いますけれども。
そういったことをしっかりと描いた上で、「これだったらうまくいくんじゃないか」と軌道修正しながら、ビジョンをつくって、変革のシナリオをつくっていく、という形です。