新型コロナウイルスの感染拡大により、働き方に大きな変革が求められた。三密を避けるためのテレワークの普及もその1つであり、社員の安全を確保しつつ業務をつつがなく遂行するために、導入に際し右往左往した企業も少なくないだろう。

一方、淀みなくリモート化が進んだ企業も存在する。世界シェアトップのクラウドサービス、アマゾン ウェブ サービス(AWS)に特化したクラウドインテグレーターである「株式会社サーバーワークス」だ。

同社では2011年からすでにテレワークを導入。新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する前の1月下旬からテレワークを奨励、3月初旬には全社員がテレワークへ移行した。

また、クラウド型仮想デスクトップ「Amazon WorkSpaces」や、不在にしているオフィスの代表電話への入電を担当者に自動で振り分けられるクラウド型コンタクトセンター「Amazon Connect」の導入ソリューションも提供しており、テレワーク中の社員の能力を最大限に発揮させるための環境整備に注力している。

代表取締役社長の大石良氏は「テレワークの急速な普及によって、クラウド化の重要性はますます高まる」と予想する。

クラウドの活用によって「アフターコロナ」の働き方はどのように変化するのか。テレワークの課題や自社でのエピソードなど、大石社長にその詳細を伺った。

※本ページ内の情報は2020年6月22日時点のものです。

有事で重要なのは社員を不安にさせないこと

サーバーワークスではAWSに特化したインテグレーション事業とサービスの提供を行っている。

―今回のコロナショックで、御社の働き方にはどのような影響がありましたか?

大石 良:
弊社はテクノロジーを専門としているので、このような非常事態でもテクノロジーの課題は簡単に解決できます。大切なのは社員の不安を取り除くことです。

緊急事態宣言という今まで経験したことのない政府からの要請に、皆不安になっていました。その光景を見て「Survive and Revive」と題して会社の方針を明確に示し、社員の心から不安を解消することに努めました。


―会社の方針を明確にすること以外にも、取り組まれたことはございますか?

大石 良
コミュニケーション量が減らないよう、チャット上で雑談ができる環境を整えていますね。これは元々緊急事態宣言の前から実践していたのですが、チャット上に雑談専門のチャンネルを設け、たわいのないことを気軽に話せるようにしています。

私たちは「部活」と呼んでいるのですが、音楽やゲームなどのトピックを決めた雑談チャンネルもあり、会社に来なくても社員同士で息抜きができる場を用意しています。

また、「Remo」というサービスを使ってバーチャルオフィスを設定し、まるで会社にいるかのような雰囲気の中、上司や同僚と気軽にコミュニケーションを取れるようにもしていますね。

ピンチをチャンスに変えたエピソード

―今回のコロナショックに限らず、過去にも危機に直面したことがあるかと存じます。どのように乗り越えていかれたのでしょうか。

大石 良:
たとえば東日本大震災は、揺れが来たときに「これは家に帰るだけでも大変だな」と思い、午後5時には帰宅指示を出し、また帰宅が困難な社員には会社に宿泊しても良いと伝え、緊急時のシフトに切り替えました。

「インフラもストップする可能性がある」と思ったので、さらにその場で1週間のテレワークを発表しました。出社する必要がないことを伝え、会社の近くに住んでいる社員にはボランティア活動への参加を呼びかけました。


ボランティアを通して日本赤十字社様とご縁を結ぶことができ(詳細はこちら)、新たな仕事にもつながっています。

結果論かもしれませんが、危機対応を迅速におこなったことでピンチをチャンスに変えることができたと思っています。

成果で評価されるからこそ重要になる仕事の「質」

―今回のコロナショックを受けて、どのような気付きがございましたでしょうか?

大石 良:
テレワークの質の重要さでしょうか。テレワークに移行するのは技術面ではそこまで難しくはないんです。パソコンは手軽に購入ができますし、今はポケットWi-Fiなど持ち運びができる通信機器があるので、インターネットの接続環境も簡単に用意することができますよね。

しかし、テレワークの質に無頓着な方がまだまだ多いと思います。例えばマイクやカメラなどが劣っていると、Web会議はスムーズに進みません。音や画質ばかりが気になってしまい、コミュニケーションの質の低下にもつながってしまいます。

そこで、弊社ではテレワーク期間中毎月2万円の在宅勤務手当を社員に支給して、家庭での設備向上に充当するようにと伝えています。テレワークの効率化に投資をして働きやすい環境をつくってもらおうというねらいです。

それに加えて、仕事の評価に対するコンセンサスが今以上に重要になってくると考えています。

会社で仕事をしていたときは、上司は部下の頑張りや仕事のプロセスを見て評価をすることが多かったと思います。しかし、テレワークに切り替わったことで、部下が仕事をしている途中経過が見えなくなってしまう。そのため、どうしても成果で評価する必要があります。

しかし、急に評価方法が変わると、社員たちも戸惑ってしまいますよね。ですので、会社全体の総意として「成果」で評価するということを、上司も部下も皆が意識を徹底しておく必要があると思います。

クラウドは新たな「インフラ」になり得る

―「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」が御社のビジョンですが、今後、クラウドの普及によってどのような世界になると予想されますか。

大石 良:
クラウドというのはあくまでも道具です。主役は人間なので、人間が働きやすいようにいかに上手にクラウドを活用するかが大切だと思っています。

クラウドは、古いITの潮流とはまったく違う概念なんですよ。これまで日本はずっとIT運用に巨額の投資をして、継続的に改善してきたんですね。これは日本で美徳とされている「カイゼンの精神」にも沿っています。

一方でクラウドは今までのコンピュータ技術とは利用形態そのものが異なるため、どんなに運用レベルを改善してもクラウドのレベルにはたどりつかないんです。ですので、今まで培ってきたものを捨ててジャンプアップしなくてはいけないのです。

このコロナショックの影響もあり、ようやくクラウド化の重要性が認知され始めましたが、クラウドのニーズはこの先、何十倍、何百倍にも増えると思っています。

なぜなら、今コロナの問題とは別に、日本では人口減少とビジネスのデジタル化いう2つの大きな波が押し寄せてきているからです。

人口が減るということは、コンピュータの管理などに企業が人員を割きにくくなるということです。今後はクラウドを用いつつ、弊社のようなクラウド導入・運用の専門会社を使う流れが顕著になっていくでしょう。

また、今まではインフラを会社で保有していたので、新しいテクノロジーを導入することは簡単ではありませんでした。しかし、デジタル化が進むことで、クラウドを活用して、安くそして早くAIなどの新しいテクノロジーを取り入れたいという企業のニーズは益々増えることになると思います。

テレワークの効率を高める注目すべき2つのサービス

サーバーワークスが導入ソリューションを提供する、クラウド型仮想デスクトップ「Amazon WorkSpaces」とクラウド型コンタクトセンター「Amazon Connect」は、 テレワークのセキュリティ対策強化と効率向上のツールとして注目を集めている。

―大石社長は、アフターコロナにどのようなサービスのニーズが高まるとお考えですか?

大石 良:
「仮想デスクトップ」と「電話」の2つのサービスです。いずれも弊社が導入支援サービスを提供しているものです。

たとえば今回、自宅のパソコンを使ったテレワークへの移行は、どこも意外と簡単に進んだのではないでしょうか。しかし、家庭のパソコンは会社ほどセキュリティ対策ができていないはずです。

そのため、仮想デスクトップを導入し、会社と同じセキュリティで業務を継続したいというニーズが高まると思っています。

「電話」については、全社でテレワークを実施した場合、会社の代表番号に電話をかけても、誰も出社していないため留守番電話となり、担当者に直接お問い合わせくださいというようなメッセージが流れるということがよく起こっていると思います。

これもAWSの「Amazon Connect」を使うことで、自動音声で電話を振り分け、自宅で業務をしている担当者に直接つなぐことができるんですね。

また、Amazon Connectは「コールセンター」としても活用できます。コールセンターはどうしても3密という印象がつきまといますが、これもテレワーク化が可能なんです。

しかも、会話をすべて文章化してチャットに張り付けることもできるので、後で見返したり検索したりすることもできるようになるため、電話対応の効率化が図れます。

今後需要が高まるであろうテレワーク関連のクラウド導入を加速させ、「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンが実現できるよう、「はたらきかた改革」を推進していきたいと思います。

編集後記

コロナショックによりテレワークが普及したことで、同社が推進している「はたらきかた改革」は、次のステップである「質の向上」へと進んでいるのだと感じた。

働く場所を問わず、高いパフォーマンスを発揮させるためのソリューションの提供が、ビジョンである「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」の実現につながると力強く語られていた大石社長。

クラウドという大海原を今後どのように舵取りをし、航海していくのか。その動向から目が離せない。

大石 良(おおいし・りょう)/ 1973年、新潟市生まれ。 1996年、東北大学経済学部卒業し、 丸紅株式会社入社。その後、インターネット関連ビジネスの企画・営業に従事。2000年に株式会社サーバーワークスを設立し、代表取締役社長に就任。2019年3月に東証マザーズ上場を果たす。