ヒロセ通商株式会社
代表取締役 細合 俊一
細合 俊一(ほそあい としかず)/1948年大阪生まれ。1982年に商品先物取引を行う北辰商品株式会社に営業として入社。京都・大阪支店にて支店業務全般を担当する。前職でのFXビジネスの知識と経験を活かし、2004年ヒロセ通商を設立し代表取締役に就任。
ヒロセ通商株式会社は、金融グループなどに属さない独立系外国為替証拠金取引大手だ。国内の小口の個人投資家まで顧客の範囲を拡げ、取引手数料無料、約定スピードの速さ、業界最高水準の低コストの実現、食品キャンペーンなどで支持を集め、2016年3月にジャスダック上場。オリコン日本顧客満足度ランキングでは、FX取引部門総合で13~15年と3年連続第1位を獲得している。
今回は、ヒロセ通商株式会社の独立系FXの会社としての展望や課題、人材マネジメントなどについて、同社代表取締役の細合俊一氏へのインタビューを通して紹介したい。
軍資金集めに奔走した創業期
なぜFXという分野で起業しようと思われたのでしょうか?
細合 俊一:
前職でFXは扱った経験がありました。商品の証拠金取引の業績が伸び悩んでいる中FXという分野は伸び続けていましたので今後まだまだ拡がっていくという手応えがありました。皆さん良くご存じのドルやユーロといった通貨を証拠金取引の仕組みで取引するFXという商品の可能性を強く感じていたので、この分野で起業しました。資本金は2,000万円からのスタートでした。
創業時に苦労されたことは何でしょうか?
細合 俊一:
体制作りと資金集めでしたね。金商業者としての形を整えるために、体制作りと資金集めを両輪で進める必要がありました。弊社は創業して間もない小さな会社ということで結構苦労した記憶があります。
顧客数増大の裏側
御社の強みは何でしょうか?
細合 俊一:
お客様のニーズを受け止め、そのニーズをできるだけ早く実現していることです。お客様も、自分の声が届くことを経験されますと、また何かあれば言って下さるようになります。
あとは、黒字体質でしょうか。売上に応じた費用の使い方を工夫していく中で、売上の変動に費用を上手く連動させることで黒字体質を確保しています。
どのようにして、お客様の数を増やされたのでしょうか?
細合 俊一:
FXを扱う会社として登録をする際に、不招請勧誘という、投資家自身が希望しない勧誘を会社が行ってはいけないという規制が出来たので、インターネット上でお客様のアクセスを待つという営業になります。ですから、いろいろ工夫をしてアクセスを増やしていくという形になりました。ネット上では証拠金取引の危険性について、しっかりと説明することでお客様のFXに対する理解を深め、先行する会社が狙わない顧客層にターゲットを拡げ、少ない金額からの投資を可能にしたりもしました。そうすることで初心者やライトユーザーの方々からの支持を得ることができ、徐々に顧客数が増大していきました。
国内市場を軸足に成長し続ける
今後の目標について、お教え頂けますでしょうか?
細合 俊一:
国内のFX業界はまだまだ伸びていくと思っていますので、当面は国内市場に軸足を置いています。でも国内は広告宣伝費の費用対効果がしだいに厳しくなってきていますのでコストと顧客獲得数のバランスを管理することに気を付けています。業界が伸び続ける中、業者数は減少し上位の企業に集まりつつありますので、当社も業界No.1を目指すことで業界平均よりも高い伸びを達成するのが目標です。
それに対して海外では国内に比べ顧客獲得コストが安いので、事業展開と経費とのバランスがとりやすく、非常に魅力的だと思っています。しかし、海外はまだFXがまだまだ認知されていない状況ですので、まずは啓蒙活動をして認知度を高めながら、お客様を徐々に増やしているところです。ここから数年のうちに海外を国内よりも大きく育てる事が目標です。
海外展開をする上で避けられない2つの課題
今後の海外展開について、お考えをお聞かせください。
細合 俊一:
世界一の為替取扱高を誇るロンドンに拠点を作っており、そこからヨーロッパ全体を視野に入れています。アジアでは拠点をマレーシアに作り、そこからアジア全体をカバーしています。特に中国に関しては変化に即対応できるよう香港に拠点を作りすぐに動けるように体制を整えています。
とはいえ、海外はFX自体が浸透していません。業績アップにはもう少し時間がかかりそうなので、今しばらく売上は国内市場を中心になるかと思います。
今後の展望をお考えになられる中で、課題は何でしょうか?
細合 俊一:
まずは、国内のメーカーで海外顧客向けのシステムの構築をすることが急務かと考えています。顧客ニーズの早期実現のためには国内メーカーの協力が欠かせません。後は、国境を越えたお金の流れについての課題ですね。通常、国境を超えると海外送金ということで時間もコストも増加し、お客様にとっても弊社にとっても非常に使いづらい状態です。その問題を解決するために、今はクレジットカードを利用して入金が可能になるようにしているところですが、時間とコストをより軽減する方法を考えなければなりません。
このふたつが、海外展開をしていく上で向き合う必要がある課題ですね。
求めるのは“リスク管理能力”
御社において活躍できている人の特徴をお教え頂けますでしょうか?
細合 俊一:
積極性があり、リスク管理ができることです。弊社はまだ財務基盤が十分でなく、大きなリスクを取れません。だから、ただ単にチャレンジすれば良いということでもありません。リスクを最小にした中でどこまで積極的に動けるかということが、弊社で活躍できている人の特徴だと思います。
御社が求める人材についてお教え頂けますでしょうか?
細合 俊一:
会社の目標に沿って自分の役割を認識し、計画的に行動し、行動を振り返り、振り返りの中で自分の仕事が会社の目標に沿っているかを再確認し、振り返りの結果を次の仕事の精度を上げることに繋ぐことが出来る人ですね。
変化し続ける会社と共に、変化し続ける人材を育成する
人材への評価制度について、方針をお聞かせください。
細合 俊一:
社員の頑張る方向と会社の目指す方向がずれないようにしています。そのためには上司が部下に対して望む方向性、量、質などを、分かりやすく伝え行動させるということを繰り返しています。そうすることで社員の努力が会社の目標に繋がり、会社の目標に貢献することが評価のアップに繋がることになります。
組織の拡大や会社の成熟度に応じて、求められる人材像が変化しますが、その都度、評価制度は変えていかれるのでしょうか?
細合 俊一:
会社の成長に寄与する行動を高く評価するという評価制度の基本は変わらないでしょう。弊社はまだ創業13年で、これからまだまだチャレンジを続け、変化し続けていきますので、その時点の会社の目標をしっかりと認識し、そこに向かって積極的に行動する人材を常に必要としています。
変わり続ける覚悟を持つ
強い組織として、理想とされる姿はどんなものでしょうか?
細合 俊一:
会社のステージと社会状況によって組織の形は変わります。10年経った時に、どんな価値観が世界を支配しているかなんて分かりません。だから、強い組織であるためには、変化に対応して変わり続けるしかないと思っています。
その時の情勢にうまくマッチするように変化出来れば大きく成長することができます。その理想像に近づくために必要なのは、「変わり続ける覚悟」と「状況は変化するものだという認識」と「どういう変化なのかを感じる感受性」だと思います。
そのために、気を付けていらっしゃることはございますか?
細合 俊一:
情報共有です。情報はきちんと共有しておかなければ社員の努力が会社の成長に繋がりにくくなります。ですので、例えば会議を行った場合議事録を作るなどして、共有するべき事をきちんと確認出来るように気を付けています。
編集後記
取材中、印象に残っていたことがある。社員のことを話す時に、細合社長が一貫して使われていた、「子供」という言葉だ。会社の「父親」として、「子供」と一緒に成長していきたいという、経営者としてのそこはかとなく深い愛情を感じた。投資の入門としてのFXは、消費者の認知度が深まるにつれて伸びていくという。社会の変化をしっかりと見据えながら、弛むことなくチャレンジし続ける“父親”の背中を見て、“子供たち”は成長し続けるのかもしれない。