【ナレーター】
ハンバーガーチェーン『モスバーガー』を始めとした飲食店を国内外に1700店舗以上展開するモスフードサービス。
2016年に社長に抜擢された中村栄輔氏は改革と銘打ち、『激辛テリヤキチキンバーガー』や『海老天七味マヨ』などこれまでにない切り口の商品を次々と世に送り出し、当時下降傾向だった集客数を見事回復させる。
近年ではテイクアウト専門店の出店や高級食パンの販売など、「地域になくてはならない存在」になるべく、挑戦を続けている。
飽くなき挑戦心で『モスバーガー』を復活させた経営者の軌跡と、その原動力に迫る。
【ナレーター】
日本生まれ、日本育ちのハンバーガーチェーン『モスバーガー』。
『テリヤキバーガー』や『モスライスバーガー』など、日本人の味覚に合うハンバーガーを初めて世に送り出し、「医食同源」の考え方に沿った商品づくりを追求し続けている。
【中村】
やっぱりモスはおいしいよねとお客様に思ってもらうのが一番嬉しいんですね。安全安心な食材を使っておいしい商品、そして結果的に健康にもつながるような、健康を考えたようなバランスの良い商品を提供したい。これが商品に対する考え方のメインですね。
【ナレーター】
『モスバーガー』は1986年、他のハンバーガーチェーンに先駆けて、47都道府県に店舗を拡大。地域に根ざした店舗づくりにこだわっていることも、『モスバーガー』の特徴のひとつだ。
【中村】
地元の加盟店さん、オーナーさんがやっぱり地元が好きで。地元のために何か貢献したいという思いの強い方は多いです。
そういう地域密着を大切にして、地元のおいしいものをハンバーガーに活用できないのかとか、デザートに活用できないのかと考えることもありますし、やっぱり地元にモスがなくてはならないような存在になるということを大切にしていきたいなと思っています。
【ナレーター】
元々は人を助けるような仕事に就きたいと考えていた中村。弁護士の道を志し、浪人生活の中で偶然立ち寄ったのが『モスバーガー』との最初の出会いだった。
【中村】
お腹が空いていたので、世田谷桜町店というお店に偶然入って、メニューを見たらモスバーガーとあったので食べてみようかなと。
そう思って『モスバーガー』を食べたところ「うまいな」と。「これはうまい、本当にうまい」と本当に3回ぐらい言ったんですね。それ以来時々通うようになりました。
【ナレーター】
その後、司法試験に挑み続けるも合格までの道のりは遠く、就職も視野に入れて活動する中、知人に紹介されたのが『モスバーガー』を運営するモスフードサービスだった。
法務課へ配属された中村は、入社早々に大仕事を任されることとなる。
【中村】
法務課に配属されてちょうど7日後に株主総会があったんです。とにかく株主総会の準備があるから手伝ってほしいということで手伝いました。
実際、本番の時には創業者、当時は社長だったんですけれども、株主総会で色々な質問が出た時にしっかり書記をするというポジションで、議長の横に机が据えられてそこで筆記をするという役を担いました。当時はまさかそんなことをするとは思いもしなかったです。
たまたま法律を勉強していましたから、株主総会で出るような法律用語とかを聞いて分かりますから、そういうポジションで。
社長ともすごく接近したような仕事をしましたし、そういう意味ではとてもありがたかったことでした。
【ナレーター】
当時の社長であった創業者の櫻田 慧氏との印象深いエピソードとは。
【中村】
レポートを書いたときに「社長が仰ることの1つ目の部分はもう仰るとおりだと思います。2番目も私も同じように考えます。三つ目も同じだと考えます」と書いた上で、後は余計なことを書かなければいいんですけれども、4番目の設問に対して、「社内はそういう雰囲気ではないのではと思います」的なことを書いたんですね。
そうしたらそのレポートを書いた翌日、社長が私の席に見えて「中村さんいる?」って尋ねてきたらしいんです。私振替休日もらっていましたので「今日は振替休日ですよ」と上司が答えました。
翌日出社したら「中村さん、昨日社長が見えたんだけど何かあった?」と上司から言われて。「あるわけないじゃないですか。全然関係ないですし、何もないですよ。社長が見えたんですか?」と答えました。
それで他のフロアへ行ってたまたま社長と出会ったので「中村です。昨日私の席にいらっしゃったらしいのですが」「ああ、中村さんか。今大丈夫?」と言われて「はい」と答え、「じゃあちょっと座って」と言われて座って。
「昨日レポートを読んだんだけど、1番目から3番目は非常に分かりましたと。4番目に書いてあった内容、あれどういうことか少し詳しく説明してくれない?」と言われたんで、こう答えました。
「社長は夢を持って仕事に取り組んで、そしてもっと自分の大きな夢を持ってトライしていいと言われますけれど、私は司法試験の勉強をしていまして、もう少し続けて勉強を続けたいんですね。せっかく会社に入れていただきましたけど、9時から6時までは、人の2倍、3倍一生懸命働いて6時になったら上がって予備校みたいなところへ行きたいんです」と言ったところ「いいじゃないか。全然間違っていないし、夢を追って受けたいんだったら司法試験を受けていい」と。
「ただ社長、どうも6時に上がろうとすると、新人がなぜこの時間に上がろうとするんだみたいな、何か冷たい視線、雰囲気を感じるんです。だから僕は、社長がおっしゃっていることと社内の雰囲気が少し違うんじゃないのかなとちらっと書きました」と言ったら「全然中村さんは間違っていない。それでいい、やりたいだったらやっていい」と仰ってくれて。
「ただ中村さん、あなたの言うように9時から6時までの2倍、3倍集中して仕事をすると、いつの間にか7時、8時になるのが仕事だからね。それじゃあ頑張ってね」と言ってニコニコで去って行かれたんですね。やっぱりすごいな社長はと思いました(笑)。
経営者プロフィール
氏名 | 中村 栄輔 |
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役職 | 代表取締役社長 |
生年月日 | 1958年6月13日 |
出身地 | 福岡県 |
座右の銘 | 「熱い心と冷静な頭」「一生勉強一生青春」 |
愛読書 | 経営書全般 |
尊敬する人物 | モスフードサービス創業者 櫻田慧 |
2001年開発本部長、2005年執行役員 営業企画本部長、
2008年㈱モスフードサービス関西 代表取締役社長、
2011年取締役執行役員 開発本部長 、
2012年取締役執行役員 国内モスバーガー事業 営業本部長、
2014年常務取締役 事業統括執行役員
2016年代表取締役社長
会社概要
社名 | 株式会社モスフードサービス |
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本社所在地 | 東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower 4階 |
設立 | 1972 |
業種分類 | 卸売業 |
代表者名 |
中村 栄輔
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従業員数 | 1,399名(2023年3月末現在) |
WEBサイト | https://www.mos.co.jp/company/ |
事業概要 | フランチャイズチェーンによるハンバーガー専門店 「モスバーガー」の全国展開、その他飲食事業など |