【ナレーター】
その後、管理職へ昇格し、会議の中で創業者から言われたある言葉が、中村の運命を変える転機となった。
【中村】
「アントレプレナーシップを持って仕事をしてほしい」ということを当時の創業者が管理職に言ったんです。
私はその意味がわからなくて、そういう経営用語も知らないのではまずいなと思って、夜間の大学に行ったんですね。
夜間の大学に行ってちょうど修了したときに社長室長になったので、会社にも言っていませんでしたから、恐らく創業者も知らなかったと思いますけれども、その時に社長室長になったのでとてもうれしかったですね。創業者の元で仕事ができると。
それで修了証を当時会長になっていましたけれど「会長、少しお時間いいですか」と言って、修了証を持ってピッと開けたんですよ。
そうしたら「お、中村よくなったな!」と、すごい手を強く握ってもらったのを覚えています。
【ナレーター】
管理職である以上、その責務を果たさなければならない。この強い責任感の根幹を成すものとは何なのか。
【中村】
人を助けるための仕事に就きたいと弁護士という道を目指して、司法試験に受からなかったから企業に入って。少しでもみんなのためになるのであればと思ってマニュアルを一生懸命つくったり色々なことをやったんですね。
そうするとみんな喜んでくれるので。「中村さん、これ、おかげで助かったよ」と、そう言われるのは嬉しいので一生懸命そういう作業をやっていて。
そうすると役職も結構早めに上げてもらえたのですが、そこでそういうふうに評価されているからといって、流していって本当にいいのかなと思いましたよね。
管理職としての責任感プラス、法律の道は結局もうそれで終わったわけですね。違う道に行こうとしたらやっぱりそっちの方を極めるというか、一生懸命勉強しなければいけないのではないかと素直に思ったということですね。
【ナレーター】
順調にキャリアを積んだ中村は2016年に代表取締役社長に就任。当時行なった取り組みとは。
【中村】
もともと心+科学と言っていたんですね。科学とはどういうことかといったら一言で言うと再現可能性、検証可能性ということで、その部分が当社は弱いのではないのかなと。ですから仕事の仕方ですよね。
あるいはなぜこれはうまくいかなかったんだろうと確認できる、検証できるとか、そのためには書いて残しておくとか、もともとどういう目的のためにやるんだろうかとか、目標は何かとか、そういう部分が弱いのではないのかなということで、心の部分はそのままで、科学の部分をしっかり強めていこうと。仕事のやり方の部分を強めていこうというふうに考えました。
私が必ず言っていたのは心の部分を小さくしていいとは私は言っていませんよと。この部分をすごく強調したりチームワークを強調したり、「私がやります」とさっきアントレプレナーシップと出しましたけど、自分自身で一生懸命考えようということと自分自身で意志を決定しようということと自分自身でリスクを負って仕事をしようという3つがポイントなんです。
それに加えてまさに一歩踏み出すということです。行動するということ。これがアントレプレナーシップそのものだと僕は思っています。
【ナレーター】
2022年に創業50周年を迎えるモスフードサービス。そこに向けた取り組みと海外展開について、中村は次のように語る。
【中村】
50周年に向けては、今までの50年に対しての感謝とともに、これからの50年、そして100年企業になるためにはどのように夢を追っていくのかということを、みんなでつくり上げて、共通認識を持ってそういう新しいチームの形としてもう一段歩み始めるような機会にしたいなと思っています。
海外につきましては、アジアを中心にしっかりと足場を固めてといいますか、アジアを中心に今出て行っていますので、その路線をしっかりと進めていって出店を加速していきたいなと思っています。
【ナレーター】
求める人材像について、価値観の共有ができることを挙げた中村。その理由とは。
【中村】
どういう価値観かというと「感謝する仕事をしよう」というのが経営理念、創業の心なんです。
そうするとやっぱりどうせ仕事するんだったら感謝される仕事をしようという思いで取り組める人。そして周りでありがとうという言葉が飛び交うようなことがすごくうれしいと素直に受け止められるような人。
そして、飲食業である以上やっぱり食べ物が好きで。飲食業というのは単なる物販と違いますから。食べ物は好きなだけじゃなくて、私どもの商品を食べておいしいと言って喜んでくださるお客様の顔を見てニタッと思わず自分が嬉しくなる。そういう人が求める人材像だと思いますね。
-視聴者へのメッセージ-
【中村】
私が仕事をするうえで大切にしている言葉を紹介します。「アントレプレナーシップ」という言葉です。モスの創業者から会議の中で聞いた言葉です。「皆さん、アントレプレナーシップを持って仕事をしてください」という言葉を聞きました。
アントレプレナーシップ、これはどんな意味なのだろう。私はその意味さえわかりませんでした。そのために夜間大学院に行って学びました。起業家精神と訳されていますが起業家活動と訳すのが正しいと学びました。
その起業家精神、起業家活動の具体的内容については、私は次のように理解しています。1つ、自分自身で一生懸命考えること。1つ、自分自身で意志を決定すること。1つ、自分自身でリスクを負って仕事をすること。加えて一歩を踏み出す「行動」です。このように考え常に意識して私は行動しています。
緊急事態だけではなく常日頃でも何が起きているのだろう。ここで役立つことは何かな。人、お客様は何を考え、感じ、必要とし、望んでいるのだろう。私に何ができるのかな、今何をするのがベストかなと考えて実行する。
そんな思いや考え方を共有し行動できる人と一緒に仕事をして周りの人々を笑顔にしたい。そのように思っています。
経営者プロフィール
氏名 | 中村 栄輔 |
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役職 | 代表取締役社長 |
生年月日 | 1958年6月13日 |
出身地 | 福岡県 |
座右の銘 | 「熱い心と冷静な頭」「一生勉強一生青春」 |
愛読書 | 経営書全般 |
尊敬する人物 | モスフードサービス創業者 櫻田慧 |
2001年開発本部長、2005年執行役員 営業企画本部長、
2008年㈱モスフードサービス関西 代表取締役社長、
2011年取締役執行役員 開発本部長 、
2012年取締役執行役員 国内モスバーガー事業 営業本部長、
2014年常務取締役 事業統括執行役員
2016年代表取締役社長
会社概要
社名 | 株式会社モスフードサービス |
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本社所在地 | 東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower 4階 |
設立 | 1972 |
業種分類 | 卸売業 |
代表者名 |
中村 栄輔
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従業員数 | 1,410人(2024年3月末現在) |
WEBサイト | https://www.mos.co.jp/company/ |
事業概要 | フランチャイズチェーンによるハンバーガー専門店 「モスバーガー」の全国展開、その他飲食事業など |