【ナレーター】
テクノロジー領域とメディカル領域を中心に、革新的なITソリューションサービスを提供する「株式会社Ubicomホールディングス」。
英語と日本語に堪能な約900名のエンジニアを擁し、国内外の、主に医療・金融・自動車・製造などの領域における主要企業の開発パートナーとして、自動化や分析などの先進技術を搭載したソリューション開発を行っている。
また、近年ではAIを活用した新たな医療サービスの開発やM&Aを積極的に推進しており、さらなる事業拡大に向けた挑戦を続けている。
確固たる思いのもと、事業を立ち上げ、成長させた創業者の軌跡と、思い描く成長戦略に迫る。
【ナレーター】
自社の強みについて、青木は約30年にわたり取り組んできた実績にあると言い切る。
【青木】
今900人以上のエンジニアがいますが、これには、かれこれ30年の歴史があります。フィリピンには、もともと日本語の教育課程がありません。その中で、私たちは社内スクールを各拠点に設け、日本語の先生とIT技術の先生が両方のスキルセット、ケイパビリティをしっかりと高めています。これは普通はできないことで、我々の大きな強みだと考えています。
メディカル事業については、リカーリングモデル(いわゆるサブスクリプションモデル)を採用しており、65%の利益率を上げています。
一方で、電子カルテが導入されていないと利用できない商品も我々は持っています。電子カルテというと、多くのクリニックや病院に導入されていると思われるかもしれませんが、実情は半分程度しか入っていません。
これに対し、厚生労働省は2030年に向けて電子カルテの普及を推進しています。背景にはマイナポータルと保険証のリンクがあり、皆様のカルテ情報などがAPI連携されていきます。これが実現すれば、患者さんのアレルギーや既往症といった情報が即座に共有され、迅速な処置が可能になります。我々はまさに、そちらにも目を向けています。医療データベースを30年間持ち続けてきた強みが、ここにあります。
【ナレーター】
青木の経営者としての原点は、1995年に発生した阪神・淡路大震災だった。大手アパレルメーカーの子会社に就職したが、震災の影響でサービスの提供ができない中、本社への異動とともに、新規事業部門を任される。当時の状況を踏まえて、青木が着目したのがITだった。
【青木】
当時はまだ「IT」という言葉すらない時代でしたから、どこかと組もうという話になりました。そこでフォーバルの大久保社長と出会う機会があり、ワールドとフォーバルの合弁会社(出資比率60対40)が設立されました。フォーバルはもともとOA機器販売や携帯電話の販売などを手がけていらっしゃいました。その情報通信部の方々と話す機会が非常に多くなりました。
そこで出てきたのが「人材」、つまり「IT人材がこれから相当必要になる」という課題です。日本がまさしく少子高齢化に突入するタイミングでしたから、日本人だけでは足りないだろうと。そこで東南アジアを回ったところ、フィリピンの会社が売りに出ているという話があり、初めてM&Aを実行してグループに迎え入れました。
ところが、本体からすると、どういうビジネスを展開するのかよく分からないという話になり、「それなら私が引き継いでやります」と。他の方に経営をお任せし、そしてAWSという会社を創業しました。
【ナレーター】
晴れて、社長としての第一歩を踏み出した青木。当時から現在に至るまで、大事にしていることがあるという。
【青木】
ビジネスが右肩上がりで進む姿を描きながら経営するわけですが、当然ながらボラティリティ(変動)は出てきます。アップステージ(上昇局面)の時は皆が一生懸命やりますが、私が一番のポイントだと思うのは、ローダウン(下降局面)になった時です。
私自身は根っから明るい性格だと思うので、「まだまだチャンスがあるな」と捉えるようにしています。これは今も経営において実践していることです。
やはり業績が落ち込んだ時に、いかにしてキャッチアップし、スケールモデルを作り直すか、ということにワクワクします。「大変だ」と感じる状況でも、そもそもの問題が何だったかを理解できれば、それを直すことで全て利益に変えられます。ですから、それを常日頃から考え、繰り返していくわけです。
幹部も問題があれば当然頭を悩ませますが、「一番大事な原因を追求をして改善すれば、必ず利益につながる」という意識で、それぞれのディビジョン(部門)で実践してくれていると思います。
「今が得か、先が得か」という2つの概念があると思います。「今が得」というのは、仮に、目先の数字を達成することが得につながるという考え方です。しかし、我々は「先々、もっと細かく社会貢献をして事業を大きくするんだ」という、夢のようですが現実化すべき目標を持っています。そのためにどれだけアンテナを張り、どれだけ道筋を作れるかが非常に大事です。
ただ、道は一つしか進めません。ですから、常日頃から2本、3本の道を考えながら進んでいくことが大切です。それが、当社の「Unique Beyond Comparison(他社の追随を許さない独自性)」、すなわちUbicomの一番のコアコンピタンスだと思います。