【ナレーター】
2020年11月、「個人間寄付プラットフォーム」という画期的な事業モデルを引っ提げ、産声を上げた株式会社ARIGATOBANK。
日本最大級のファッション通販サイト『ZOZOTOWN』などを展開する株式会社ZOZOの創業者、前澤友作氏が株主となり、「お金に困っている人をゼロにする」というビジョンのもと、寄付プラットフォーム『kifutown』を2021年7月にリリース。
リリースから約半年でアプリの累計インストール数は600万を突破し、寄付文化の醸成に向けその歩みを着実に進めている。
代表取締役を務める白石陽介氏は、過去にヤフー株式会社の決済プロダクトの統括責任者を担い、4500万人以上のユーザー登録者数を誇る決済サービス『PayPay』を立ち上げた実績を持つ、FinTechのプロフェッショナルだ。
新たなお金の流れを世につくるため、前澤氏とともに立ち上がった白石社長の軌跡と、挑戦に込めた想いに迫る。
【ナレーター】
世間の注目を集めた『kifutown』はどのように生まれたのか。知られざる開発の裏側に迫った。
【白石】
「なんとかペイ」みたいなサービスって世の中に乱立していると思うんですけれど、もう一回同じようなものをつくってもしょうがないよなと思っていたのがひとつ。
もうひとつは、企業がインセンティブを出すタイプのペイメントサービス、そういうサービスというのはひとつの企業の中でユーザーを囲い込んでいて、サービスのインセンティブをユーザーが享受するというこの構造は当然変わらないんですよね。
これが良い悪いというよりは、もう少しユーザー同士の循環によって、サービスが成り立つようなものってできないのかなと(事業を)模索していたんですよね。
前澤さんと話していく中で「寄付」というようなキーワードや、寄付をする、されるみたいな関係性における循環って、寄付された人がまた寄付をすることも当然ありますし、そういうサービスってつくりうるんじゃないかなというのが今回の『kifutown』に至った経緯のひとつではありますね。
【ナレーター】
ARIGATOBANKをけん引する白石の原点は、中学受験合格のお祝いとして父親に買い与えられた1台のコンピューターだった。
かねてから関心があった白石少年は、すぐに熱中。コンピューター関連の仕事に就きたいと考え始めたのもこの頃だったという。
【白石】
父親と将来どういう仕事に就くのがいいかという話を確か中学生ぐらいの頃にしたときに言われたのが、「一番好きなことじゃなくて、人より一番得意なことを仕事にしたほうがいい」と。
父は車が好きで車屋になった結果、結構苦労していたんで、やっぱりコンピューター関係の仕事に就くのがいいのかなというのは、当時からおぼろげには思っていましたね。
【ナレーター】
しかし高校進学後、1年で自主退学を決断。その背景にあったのはある違和感だった。
【白石】
進学校だったので高校に入ると大学受験向けにカリキュラムが結構変わっていくんですよ。
みんなどの大学へ行くとか、選考どうするみたいな雰囲気になっていて。でも僕は大学に行くかどうか、高校1年生の段階では決められてなかったんですよ。
自分がゴールを定めてないのに、そこに向かっていくというのがすごい違和感があったし、多分、性格的に大学に行くのが僕にとっていいんだって思えていない状態で努力することができない人間だろうなと思っていたので。
そうであれば、一回時間の使い方を変えようと思って、学校を辞めて。コンピューターならコンピューターのスキルを上げたり、コンピューターを使ってお金を稼いだりということを一度自分でやってみようって思ったのが15歳ぐらいの時ですかね。
【ナレーター】
退学後、Web制作会社の立ち上げなどを経て、大手IT企業へエンジニアとして就職。入社3年目にプロジェクトマネージメントを担う部署へと異動し、アシスタント業務に従事。
その中で、今でも強烈に覚えているというエピソードとは。
【白石】
当時の先輩にプロジェクトのキックオフミーティングに参加しておいた方がいいのではないかと言われて、一緒に参加して議事録を取るみたいなことをやっていたんですよ。
その1週間後か2週間後ぐらいに先輩が交通事故に遭って、全治1ヶ月半~2ヶ月と診断されて。
自分はまだ3年目なので、他の先輩というか他のコンサルタントの人が来て、プロジェクトマネージメントやるんだろうなと思ったんですけれど、役員に呼ばれて、「白石、お前がやれ」と。「えっ?」となって (笑)
もう何をしたらいいかもわからないし、その先輩やクライアントに話をしにいっても、23~24歳の若手で、「PMです」と言われても「なんの冗談だ」みたいな感じになりますよね。
やっぱり最初は信頼関係がなかなかつくれなくて。でも自分にできるのはもうとにかくがむしゃらに働くことだけだなと思って。
リーダーシップマネージメントができないじゃないですか。周りから見ても明らかに若輩で経験も実際ないですから。
今思えばフォロワーシップのマネージメントスタイルしか無理だろうなと思って。それをがむしゃらにやって、非常に大変だった思い出はありますね。