【ナレーター】
総合不動産会社としてさまざまなビジネスを展開する株式会社ジェクトワン。
社会課題である空き家問題にいち早く取り組み、2016年に業界初の空き家活用サービス『アキサポ』をリリース。
空き家を借り受け、所有者の自己負担額ゼロでリノベーション工事を行い、一定期間転貸するという前例のないビジネスモデルを構築し、その存在感を際立たせている。
2022年4月には、新潟県三条市と「地域活性化起業人制度」を活用した協定の締結を発表。地域活性化にも積極的に取り組んでおり、その事業領域の拡大にも余念がない。
「『空き家』を“AKIYA”に変えていく未来創造企業」という企業ビジョンの実現に向け、邁進し続ける創業者の挑戦と、思い描く未来像とは。
【ナレーター】
自社の強みについて、大河は「飽きない仕事づくりをする環境だ」と言い切る。
【大河】
弊社の強みは、「従業員が楽しんで仕事ができている」ということです。
いろいろな事業ができるような体制にして、仕事に飽きないような環境にしています。要は、単一の事業だけではなくて、さまざまなことにチャレンジしているということです。
あとは、やはりどんどん新しいことに挑戦していくベンチャー体質であり続けることもポイントです。社員から挙がった新しい提案も、どんどん受け入れて前向きにやっていくという面白さが弊社の強みかと思います。
【ナレーター】
大河の原点は大学卒業後に就職した大手商社だった。当時経験したあることが、経営者を志すきっかけになったと大河は語る。
【大河】
大手商社に勤務していた当時は、電車に乗って浜松町まで通っていました。
常に電車内は混んでおり、座れないどころか「吊り革が持てれば今日はラッキーな日だ」なんて思うほどだったんです。気付いたら持っていたカバンの本体が外れて、ハンドル部分だけ手元に残っている、なんてこともありました(笑)。
そんな経験を経て「将来は電車で会社に通いたくないな」と思ったんです。
「車でゆっくり行ける、あるいはすいているところにゆっくり行ける、家から近いところにある会社にゆっくり行ける生活がしてみたい」と思ったのが、経営者を志すことになった一番大きなきっかけです。
【ナレーター】
約1年半の勤務を経て、不動産デベロッパーに転職した。「不動産業界で生きていくと覚悟を決めた」と振り返る大河の胸に、今でも残るエピソードとは。
【大河】
不動産デベロッパーとして自分で担当した物件が、初めて建物としてでき上がったときはものすごく感動しました。
何にもなかった場所に自分がきっかけになって建物ができて、そこで人が生活しているという光景に「不動産デベロッパーって、こんなにすごい面白い仕事なんだ!」と感じましたね。
当時25歳ぐらいだったのですが、その際に「不動産の仕事は一生やっていこう」「こんなに面白い仕事はもう絶対にないから、一生やっていこう」と思いました。
【ナレーター】
その後、2003年に友人と不動産会社を共同創業。しかし、リーマンショックにより経営が悪化し、撤退を余儀なくされ、2009年、再起を図るべく立ち上げたのがジェクトワンだった。
当初、不動産開発事業を中心にビジネスを展開していたが、2015年に、「空き家等対策特別措置法」が施行。それが、現在の主力事業のひとつである空き家ビジネスの着想を得たきっかけになった。
【大河】
当時、大きな社会問題となっていた空き家の増加や放置。この問題を解決する手法を考えた際に、空き家ビジネスについて調べるようになりました。
その結果、大きく2種類のビジネスがあることが判明しました。1つ目は、“空き家管理”です。しかしこれは、ただ単に空き家を管理するだけで、減らすことにはつながらないと感じました。
もう1つは“空き家セミナー”ですが、これも業者が「空き家を売買しましょう」と言って仲介を促し、契約を結んで売っているだけだったため、「本来の空き家問題の対策にはならない」と思いました。
そこで、「自分が空き家の所有者だったらどんなビジネスが心に刺さるだろう」という視点で考えてみたんです。
私だったら、「自分が所有している空き家が何の費用も掛けずに、いつの間にかきれいに再生されている」、もしくは「空き家がリノベーションされて人に使われる」「一定期間経過後に、また空き家が戻ってくる」のが一番嬉しいと思ったんですね。
そんな経緯でいろいろビジネスモデルを考えて、思いついたのが、現在の主力事業のひとつである空き家を活用した『アキサポ』です。
【ナレーター】
そして、2016年に空き家活用サービス『アキサポ』をリリース。当時は空き家を活用するというビジネスモデルの前例が存在せず、社内外から大反対を受けていた。しかし、大河はこのビジネスが成功する手応えを感じていたという。
【大河】
その頃、日本には空き家ビジネスに関するマーケットが、9兆円ほどありました。私は、それが10年後にはどんどん拡大し、20兆円近くになっていくと予測したんです。
これだけ膨らみ続けるマーケットに対してビジネスモデルが何もなかったのはあり得ないなと思いました。
また、不動産デベロッパーの事業において、新たにBtoCのマーケットをつくりたかったという思いもあります。
不動産デベロッパーの仕事は、ほとんどの案件がBtoBです。デベロッパーは主に不動産会社から、不動産に関する情報をご提供いただき、それをもとにマンションの建設をしています。
しかし、私は不動産デベロッパーのマーケットがBtoBだけで成り立つとはどうしても思えなくて。
『アキサポ』を展開することにより、デベロッパーが企業ではなくて、初めて個人から情報を提供してもらえるようになり、事業が拡大していけるのではないかと考えたんです。
たとえば、空き家に関するお問い合わせをいただいても、全ての空き家が活用できるわけではありません。中には、活用をご提案できない場合もあります。
しかし、もし活用できなかったとしても、その空き家の持ち主の方たちは「じゃあもういいや、ほっといて」「元の何もしない空き家の所有者に戻ろう」という方はあまりいらっしゃらないんです。
「じゃあこの際だから売却します」「解体して駐車場にして管理してください」というようなご要望をいただく機会が多いため、そこから第2・第3のビジネスが生まれると考えました。
ただし、『アキサポ』をリリースしたのはマネタイズ目的だけではありません。
空き家を活用することでマネタイズするのは全体の目的の何割かだけで、「業界のポートフォリオを変えていきたい」「空き家に対するマインドを変えていきたい」という思いの方が大きいのです。
当時はそういった空き家活用ビジネスが業界になかったため、社内外の大反対を押し切って、「5年間思い切ってやってみて、脈がなかったらやめよう!」というところで事業をスタートさせました。
ちょうど5年目ぐらいに、あるメディアに取り上げられたことを機に非常に注目いただき、「もっと続けてみよう!」ということで、今も継続しています。