【ナレーター】
5Gの実用化や新たな生活様式への適用などにより、推進が加速するデジタルトランスフォーメーション。日々進化するテクノロジーの力により、新たなグローバルスタンダードが生まれる時代へと突入しようとしている。
そんな中、分散技術や暗号化技術に端を発して、独自開発したシステムを活用したサービスを展開し、注目を集める企業がある。株式会社ビットキーだ。
「テクノロジーの力であらゆるものを安全で便利で気持ちよく「つなげる」ことをミッションに掲げ、自社の認証認可基盤『bitkey platform』を応用して開発したスマートロック『bitlock』を皮切りに、暮らし・働く場、非日常の場であらゆるものをつなげて利用できるプラットフォーム「homehub」「workhub」「experiencehub」などのサービスを次々に開発。「コネクト」を軸に事業を展開している。
ビットキーの提供するシステムでは拡張性の高さ、従来よりも高いセキュリティ、かつ低コストでのID管理・連携・認証を実現し、創業2年で累計資金調達額は50億円を突破。あらゆるサービスをシームレスに利用できる社会の実現に向け、規模を拡大させている。
成長を続けるスタートアップを牽引する創業者の軌跡と、その成長の秘密に迫る。
【ナレーター】
中学、高校時代からデザインに興味があった江尻は、大学で建築デザインを専攻。しかし、就職先として選んだのは当時勢いがあったコンサルティング会社だった。その理由について、江尻は次のように語る。
【江尻】
建築とある意味、少し似ているのです。施主がいて、実際建物と土地があって周りの建物は所与の条件じゃないですか。その部分にどういう要望があるか、どういう狙いなどがあるかを与しながら、答えは何でもいいわけですよね。
それをプレゼンテーションする機会があって、模型などをつくってシュミレーションしてみてやるというのはプロジェクトとかコンサルティングとかに結構近い部分を何となく肌で感じていて。
そういう機会があったらいいなと思い、当時一番、勢いがあったリンクアンドモチベーショングループに入社しました。
【ナレーター】
内定後、約1年間のインターンシップを経て晴れて正社員として入社。当時携わっていた仕事と、そこから得た学びとは。
【江尻】
リンクアンドモチベーショングループには入社前から関わっていて、入社後も携わったプロジェクトで大きいものが、数百億をかけて行なった広告代理店のオフィス移転プロジェクトです。
電気関係の方、工事関係の方、デザイン関係の方、大体100社以上が関わってくるのですが、スケジュール管理をしたり、実際のレポートをつくったりするということを内定者の頃からやらせていただいていて。
今でもやっている、複雑なプロジェクトの中でどういうふうに人が動くのか、1つの遅れがどう影響を及ぼすか、情報共有をどうしなければいけないかなど、そういったことは大変勉強になりましたね。
【ナレーター】
仕事をする中で、より企業の成長に直接的に貢献できる仕事に就きたいと考えるようになった江尻は、企業用ソフトウェアメーカー大手の株式会社ワークスアプリケーションズへ転職。当時の仕事内容と、最も印象に残っている仕事とは。
【江尻】
僕はまず、人事プロジェクト、給与プロジェクト、勤怠プロジェクト、会計プロジェクト、会計は債権もあれば債務もあれば、資産の管理などもあります。
後はサプライチェーン、在庫管理や生産管理、販売管理、Eコマースのプロジェクト、ID管理のプロジェクトなど、相当数こなしてきました。
ひと通りシステムが絡まない会社の業務は今、とても少ないですけども、それをひと通り、やらせていただいたという経験がとても今に生きています。
ワークスアプリケーションズ在籍時で一番面白かった仕事は、当時社長を務めていた牧野さん(牧野正幸氏)と一緒に数百億円の資金調達する時に、アメリカ人とシンガポール人のファンドマネージャー、がいるところになぜか僕が相対しまして。
「ワークスのビジネスモデル」という資料を僕がつくって、一緒に説明するということをやらせていただいたのが印象に残っていますね。
【ナレーター】
順風満帆な日々を過ごしていた江尻だったが、なぜ起業に至ったのか。知られざるエピソードに迫った。
【江尻】
これは偶発なんですけれども、創業者の1人である寳槻(ほうつき)とアメリカで一緒に仕事をしていた時に、食事をしながら色々なアイデアを思いついたんです。
加えて、プライベートで色々な技術研究とか簡単なアプリとシステムづくりみたいなことをやっていた時に、こういう技術とかこういう領域がすごく穴なのではないかと議論をしていました。
世の中にこれがあることでこういう価値が生み出せるのではないか、みたいなテクノロジーの部分を思いついたということが重なった結果として、次に事業としての価値を世の中につくっていくと意味があるものなのではないかと思いまして。
後は僕自身が、それであれば結構普遍なので、20年とか30年変わらずに楽しみ続けられるのではないかと思えたのが初めの創業のきっかけですかね。
【ナレーター】
そして2018年、株式会社ビットキーを現COOの福澤氏とCCOの寳槻氏と共同創業。初のプロダクトとして、スマートロック『bitlock(ビットロック)』を開発・提供し、創業から2年足らずで累計資金調達額は50億円を突破。
掲げているミッションについて、江尻は次のように語る。
【江尻】
あらゆるモノ同士を安全で便利で気持ちよくつなげる、“コネクトする”ということです。安全性と利便性と体験性の3つが、その適用領域によってバランスが保たれ、すべて併存した形でのコネクトが大事だと思っています。
やはりデジタル化すると、それとそれがつながっていくということが、今以上に価値を持つことが多くなると思っていまして。その時に安全性に寄ると非常に面倒だったり、体験性が悪くなったりみたいなこともあります。
逆に体験性とか利便性に振ると、いつの間にか自分の個人情報が売られてたり、知らないところで使われていて気持ちが悪かったり、安全じゃなかったりみたいな話がありますよね。
ここ最近で言いますとキャッシュレスで、銀行とまさにコネクトしていた企業が双方で管理を任せていたら、実は失敗していて安全性がなくて、知らない間に引き出されていた、みたいなこともありますし。
デジタルにつながる時というのは、非常に安全性も重要だと思うのです。それを実現していくというのが、我々のミッションとして普遍に掲げているものですね。