株式会社エンパワー 2年間の成長率は400％超。買取専門店「買取大吉」を全国に800店舗以上展開 株式会社エンパワー 代表取締役 増井 俊介　 (2023年8月取材)

【ナレーター】
貴金属やブランド品を中心にしたリユース品の買取専門店を全国47都道府県、770店舗以上展開(2023年8月時点)する、株式会社エンパワー。

同社が運営する買取専門店『買取大吉』は、出店後の店舗継続率、買取満足度、買取価格支持率において業界トップクラスを誇る。

2023年5月には、募金事業でNPOや社会福祉協議会など約120団体との提携を発表するなど、社会貢献活動も精力的に行っており、快進撃を続けている。

倒産寸前の企業を蘇らせた経営者の波乱万丈の軌跡と、思い描く成長戦略に迫る。

【ナレーター】
自社の強みについて、増井は次のように語る。

【増井】
店舗の継続率の高さが当社の第1の強みです。同業他社では出店後1年目に撤退率が数十パーセントを超えるなど、なかなか競争が激しい業界ではありますが、当社の場合は直近3年連続でわずか2.7％以下です。

第2の強みは接客の質の高さです。私がこの仕事を始めた当時、買取店の多くは、接客の質があまりよくありませんでした。お客様に対して上から目線で「買ってやるよ」というようなスタンスの店舗が多かったのです。

そこで、その接客の部分さえしっかりできれば我々にも勝機はあるだろうと考えました。そのため当社では、たとえば身だしなみひとつとっても、全従業員にネクタイ着用を必須とし、毎朝、責任者が全店舗に設置されたカメラで従業員の服装をチェックするなど、接客の質の向上に取り組んでいます。

そういうところからしっかりと行う当社の姿勢をお客様にご評価いただいた結果として、現在のような全国展開ができているのだろうと考えています。

【ナレーター】
増井の原点は少年時代にある。小学校の卒業文集に「将来は大企業の社長になる」と書いていたと振り返る。当時思い描いていた経営者像とは。

【増井】
私は大阪府の出身です。小学生の頃、大阪随一の繁華街である難波に電車で行く機会が多くありました。

その時によく思っていたのが「これほどたくさんの会社やお店があるということは、その数だけ社長がいるんだろう」ということです。

そして「こんなに多くの社長がいるんだったら、自分も経営者になれるはずだ」と根拠のない自信を持っていたように思います。

【ナレーター】
大学卒業後、大手通信会社に就職。続々と起業していく先輩たちの姿を見て、独立への思いが強くなった増井は退職を決断し、2012年にコールセンター事業を起こした。その取引先の1社がエンパワーであり、創業社長との再会が増井の運命を大きく変える転機となった。

【増井】
実は、エンパワーは私が新卒で入社した会社の後輩が立ち上げた企業です。その彼からある日、私の携帯電話に久しぶりに電話が掛かってきました。その時の第一声が「増井さん、仕事の依頼です」というもので、てっきりまた仕事を依頼いただけるのかと思いましたが、話を聞くと「いや、違うんです」とのことでした。

「エンパワーに副社長として入社し、組織の改革を担当してほしい」「業績が芳しくないから、当社を立て直してほしい」というオファーだったわけです。入社前に打ち合わせを重ねる中、創業社長が「自分が退任した方が立て直しは早く進むのではないか」ということをおっしゃるようになりました。

私としては、彼の下で副社長として仕事することを想定していましたので「何を言ってるんですか、一緒に頑張りましょう」とお伝えしましたが、入社前日になって「やはり副社長ではなく、社長として入社してほしい」というお話をいただきました。フランチャイズ事業は未経験でしたし、ブランド品についての知識も少ない中でそのように言われ、正直なところ、少し悩みました。

しかし、その時に「副社長として入社したら取り組もうと考えていたことはあるが、社長として入社したら何をするのだろう」と考えてみたところ、結局やることは一緒だということに気が付きました。そこで「やります」とお返事し、最終的に社長としての入社が決まりました。

【ナレーター】
代表取締役社長に就任した増井は、当初のミッションであった組織の立て直しに着手。どのように改革を進めていったのか。

【増井】
真っ先に取り組んだのはコストカットです。

直接売り上げにつながらない部署はいったん閉鎖するなど、部署の解体を行いました。社用車として使われていた2台の高級車は売却し、幹部陣へのボーナスも全額カットするなど、コストの見直しから始めました。

また、従業員のマインドを利益追求に比重を置いたものに変えていくため、私自身が全国にあるフランチャイズ先を一店舗ずつ訪ね、今後の会社の事業方針を従業員に説明して回ることもしました。

さらに、人柄に重点を置いた従来の人事評価制度を全て撤廃し、完全な成果主義に変更しました。

ほかにも、非常に不足していた責任者の育成にはかなり重点的に取り組みました。たとえば、「次期責任者候補食事会」を1週間に3回程度開催し、責任者候補の社員と一緒に食事をしながら会社の未来像について話し合うというようなことを、入社以降2年ほど続けました。