【ナレーター】
業務用、家庭用ごま油において、国内シェアトップを誇る老舗メーカー、かどや製油株式会社。
純正ごま油を中心に、食用油やサプリメント、保湿用ジェルクリームなど、多様なニーズに応じた製品づくりを推進している。
近年では、カフェ業態への進出や、業界初となるトクホのごま油を開発・販売する。海外展開にも積極的に取り組んでおり、さらなる成長に向け、その歩みを着実に進めている。
「変革と挑戦!健康と笑顔を届けるNo.1を目指す!」をグループ長期ビジョンに掲げ、躍動する経営者が思い描く、成長戦略に迫る。
【ナレーター】
自社の強みについて、久米は、地道な取り組みによって自社製品が一般家庭へ浸透していることだと語る。
【久米】
家庭用のごま油というのを当社が初めて販売したというのが50年ちょっと前になるわけですけど、それまでごま油というのは、天ぷら屋さん、特に関東の天ぷら屋さん、それから高級料理店で使われるプロの品物だったんですね。
我々も当然そういうところへの販売はしておりましたけれども、家庭用で売っていこうという大きな決断をして、小売店さんのところに回って実際に実演販売をしたり、あるいは当時としては会社の規模から比べると大変な広告費用だったと思いますけども、テレビコマーシャルを作って、有名な女優の方に出ていただいたりして、そういう地道な取り組みがご家庭の中に浸透していった。
かどやという名前を知らなくても、「黄色いキャップのくびれた瓶ね」ということで、皆さんのご家庭にあるという、当たり前になっているというのが、うちの一番の強みなんじゃないですかね。
【ナレーター】
久米のファーストキャリアは大手商社だった。2018年、取引先だったかどや製油の当時の社長にスカウトされ、同社に入社。社内から見た当時のかどや製油の印象について、次のように振り返る。
副社長というポジションでいろんな部署を見させていただいて、いろんな人ともお話をする機会がありましたので、その時の印象からすると、老舗企業ということで国内のシェアもトップシェアということで、立派な会社だなという印象とともに、従業員の方がとても真面目に働いているという印象は強く受けました。
ただ、そういった従業員の献身的な働きとか、そういうものに支えられているということが、逆にですね、今までと同じものを頑張って作るぞという、そういう伝統の部分は大事なんですけど、新たなことに頑張って挑戦しようとか、そういうことを会社全体として後押ししているという感じではなかったかなという印象ですね。
【ナレーター】
入社2年目の2019年、代表取締役社長に就任した久米は社内の改革に着手する。その際、全社員に3つのメッセージを送ったという。
【久米】
一つはやはり先人が築いてくれた伝統をしっかりと守って引き継いでいく。我々の根っこですので、これはしっかりとやってくださいということと、それから逆に「これちょっとおかしいな」とか、「こうした方がいいんじゃないか」というような足元をもう一度見つめ直して、変えるべきことがあればスピード感を持って変えていきましょうと。変革という言葉になりますけども、それを2番目にお願いして。
そして、3番目に失敗してもいいので、新しいこともやってみようよと、挑戦しましょうというのを社長メッセージとして出しました。
実は中期経営計画というのもですね、実際にちゃんとしたものを作ったことがなかったんですね。
それで社長になった時に、中堅を7人、男性4人の女性3人でチームを作ってもらいまして、中期経営計画のベースとなる長期ビジョンを考えてもらって、出てきたのが「変革と挑戦!健康と笑顔を届ける№1を目指す!」というのが長期ビジョンとして位置づけて始めました。その後に中期経営計画というのを1年ぐらいかけて、作ったということになります。
【ナレーター】
挑戦を成功させるためには「失敗を受け入れる環境づくり」が重要だと言い切る。
【久米】
挑戦するにあたっては、いろいろな下調べをしたり、いろいろなことを検討してやるんですけれども、じゃあやってみようと言って、会社の予算なりリソースを使ってやるわけですから、最後うまくいかなかった時には許可した人の責任ですので、失敗したら怒られるとか、そういうことがないように、周りは失敗を受け入れるというのが大事なことだろうなというふうに思います。
いくら変えよう、変えようと言っても、みんながそれを受け入れない社風なり文化だと、変えたいという人たちもだんだんと声を上げなくなるわけですから、会社全体として変えていくんだというメッセージを、いろいろな場所、いろいろな機会に伝え続けていくということが大事かなと思います。
伝統というのは創業の時から何も変わっていないかというと、いろいろな変遷を経て今日があるわけですね。家庭用のごま油も昭和42年に発売して、これももともとは家庭用になかったものを当社が初めて家庭用に売り出したと。
それからペットボトルも実は400グラムとかいうのも瓶だったんです。大変重いということで、ペットボトルに切り替えました。
これも当社がごま油業界では最初だと思います。そういういろいろなことをチャレンジしてきたというのも含めてですね、伝統の一つになっていると思いますので、もう一度社員に「うちの会社ってこうやって挑戦しながら大きくなってきた会社なんだよ」ということを知ってもらうというのも大事なことかなと思います。