※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

株式会社NEWONE(ニューワン)は、エンゲージメント向上を支援するために、企業研修・人事コンサルティングを提供する企業である。同社は、働く人が前向きになれる環境を創出し、組織のエンゲージメントを向上させることを目指している。創業者であり代表取締役社長でもある上林周平氏に、事業コンセプトやこれまでの経緯、今後の展望について詳しくうかがった。上林社長の理念と情熱がどのように現在の事業に反映されているのか、その詳細に迫る。

「チャレンジし続けたい」思いからスピンアウトして創業へ

ーーまずは上林社長の経歴を教えていただけますか?

上林周平:
最初はアンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア株式会社)で働き、企業向けのコンサルティングを担当する中で、どんなに戦略が良くても、働く人が前向きでなければ成果は上がらないことを実感しました。社員がポジティブに働けるように支援したいと考えていたときに、株式会社シェイクが人材育成に注力する方針に転換したことを知り、2002年に事業立ち上げメンバーとして移ったのです。シェイクでは、特に新人教育を中心に企業研修を手がけ、会社の成長に貢献することができました。

ーーNEWONE設立のきっかけについてお聞かせいただけますか?

上林周平:
シェイクで副社長まで務めた頃、社長ほどの最終責任は持たなくとも、ある一定の権限がある立場でしたので、楽しく仕事をしておりました。しかし、成長し安定してきた組織ではチャレンジしにくいと感じ、自分で責任をとる仕事をしたいという思いに至りました。当時の社長にスピンアウト(※)を支援していただいて、2017年に株式会社NEWONEを設立したのです。働くことが楽しいと思える会社、可能性があると思える組織をつくるという思いは、社長になって一層強まりました。

(※)スピンアウト:会社の一部事業を切り離し、新たな会社とすること。

変化し続ける時流の中で、最前線を走る

ーー貴社の事業内容について具体的に教えていただけますか?

上林周平:
個人と組織が互いに貢献しあう状態に変わりつつある中、働く人々のエンゲージメント(※)がますます重要になっています。この変革を支援するのが弊社のコンセプトです。具体的には、一方的に教えて学ぶ研修というよりも、人々の意識を変えるようなワークショップ型の企業研修を提供したり、各社様が抱える人事課題を解決するためのコンサルティングを行ったりしています。

(※)エンゲージメント:ワーク・エンゲージメントとも。仕事にやりがいを感じて熱心に取り組み、仕事から活力を得ていきいきしている状態のこと。

ーーNEWONEの強みはどのような点にありますか?

上林周平:
1つ目は、エンゲージメントの高い組織をつくることに特化している点。2つ目は、人の自律性・主体性を信じ、変わりたいと思える場をつくり、前向きな気づきを得られるメソッドを構築していること。3つ目は、1人の担当者が営業から企画提案、ワークショップや研修等の提供まで担当することです。企業のパートナーとして変革を後押しすることで、信頼をいただいています。その結果、グループ会社を紹介していただくなど、新たな顧客獲得にもつながっています。社員の業務範囲が広くなるため、人材育成にも力を入れてきました。創立初年度から新卒採用を行い、役職問わず全員が直接教育に携わることで、OJTを徹底する文化が形成されています。

ーー経営する上で大切にしていることは何ですか?

上林周平:
人と組織の関係性がどんどん変わっていく時流の中で、最前線を走り続けることを組織として大切にしています。最新のテーマをいち早くとらえ、トレンドになる前の段階から積極的にセミナーを開催しています。このように、常に最先端にいることで、競合が少ない段階から意欲のある企業や人事担当者にアピールでき、見つけてもらうことができるのです。ときには共同で研修プログラムを開発・実行し、それを横展開することもあります。

カルチャーを大切に、生成AI時代にも対応するサービスを提供

ーー今後の展望について教えていただけますか?

上林周平:
研修を受けて個人が前向きになっても、組織に適合した制度がなければ全体としてはうまくいきません。この問題を解決するために始めたのが、制度的にも戦略的にも変革していくための人事コンサルティングです。この分野に力を入れ、まずは全国各地に、いずれはグローバルに価値を提供し、「働くことは楽しい」と広めていきたいですね。

組織が拡大していく中で、新たな支店を設置することは、顧客獲得を拡大し、支店長の座を増やして多様なキャリアパスを社員に提供できるメリットがありますが、一方で、弊社が大切にする「一体感のある風通しの良い社風」が失われる懸念もあります。オンライン化が進む中、デメリットを解消してメリットを活かせるかどうか、検証を続ける予定です。

ーー社内の取り組みについて重視していることを教えてください。

上林周平:
1つは幹部人材育成です。人と組織の可能性を広げるために、社員には多様なポジションを経験してもらいたいと考えています。業務を通じて幹部育成プログラムの内容を全社員に周知し、マネジメントに何を求めているかを明確に伝えていることが、育成に良い影響を与えています。

2つ目は新商品の開発です。より確かな変革を目指し、新しいサービスを組み合わせて、幅広くサポートしていくために、新商品開発にも力を入れております。

また今後、生成AIの登場によって変わる働き方にも注目しています。社名の「NEWONE」のとおり、新たな課題に対し、最初に解決策を考えるのは私たちの使命だと考えています。

ーー採用についての考えをお聞かせください。

上林周平:
これからは採用力の強い会社にしたいと考えています。新卒採用の方は、会社のカルチャーを吸収する点で優れています。会社が社員の長所を伸ばすように徹底することと、社員は会社を一緒につくっていくのだという意識を持つように伝えていくことを心がけています。

中途採用の方には会社の利益につながる専門性を期待していますが、こちらも会社のカルチャーにマッチすることが最も重要です。弊社が求めるのは、人に関心があり、誠実である方です。AIにはできない、人の心の機微を捉えて後押しする仕事をしたい方を求めています。

また、成長意欲があって、変わることをポジティブに捉えられる方、会社のチャレンジの中で、自分から積極的に何か仕掛けていきたいと思うような方が望ましいですね。

編集後記

打てば響くように整理された回答が返ってくる。事業の全体が、しっかりとしたコンセプトと根拠に裏打ちされていると感じた。変化が多い現代において、今後は生成AI時代を見据えて商品開発を行っていくという同社。どんな時代が来ても、人にしかできない、同社にしかできないサービスを見つけ、「1番前を走って」成長を続けていくに違いない。株式会社NEWONEの新たな展開に注目だ。

上林周平/1978年、奈良県生まれ。大阪大学人間科学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社し、さまざまなプロジェクトに従事したのち、2002年、株式会社シェイクに入社。2015年より、株式会社シェイク代表取締役に就任。2017年、株式会社NEWONEを設立。書籍:2022年7月『人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書』2024年6月『組織の未来は「従業員体験」で変わる』