※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

1953年に和歌山市で設立された福興建設株式会社。港の防波堤や護岸工事など、海や河川に関わる工事をメイン事業とする建設業者だ。会社の強みや仕事の魅力、今後の展望について、代表取締役社長の松井良樹氏に話をうかがった。

次期後継者として奮闘した20代とフレッシュな視点で挑んだ社内改革

ーー福興建設に入社する前はどのような業務に就いていましたか。

松井良樹:
私は24歳で福興建設のグループ会社に入社しました。後継者がいない問題について、創業家と関わりのあった私の父が相談を受けたことがきっかけです。入社後は、海上や河川など「水辺の工事に特化した建設会社」という特殊性に魅力を感じていました。

現場作業にも携わりましたが、主に担当していたのは営業面です。創業者が和歌山県建設業協会の会長を歴任していた方だったので、営業先で警戒されることはなかったものの、将来の経営者として認めていただくために足繁く通うこともありました。まだ20代だったことから、父と同世代の経営者の方にご指導いただけた点は今の糧になっています。

小さい組織だったので、総務や経理の仕事も担っていました。父は放任主義だったとも言えますが、今思うと究極の「次世代経営者の育て方」だったのかもしれません。やらなければいけない状況が自身の成長につながりました。父からは「後ろ指を指される営業だけはするな」と一言だけ告げられました。岐路に立ったときはその言葉を思い出し、進む道を選んでいます。

ーー福興建設の社長就任後に行った改革について教えてください。

松井良樹:
社員に自ら考える力をつけてもらうため、不要な会議を減らしました。大きな定例会議を開くまでは、自分の意思で動ける体制をつくりたかったのです。小さい組織だからこそ、一人ひとりのパーソナリティをとても大切にしています。

次の現場が始まるまでの待機期間は、ベテランが若手に技術的指導をしますが、今では若手がベテランに最新機器の使い方などをレクチャーすることもあります。それぞれの得意分野を教え合う風土づくりをすることで、社内における情報と知識の共有を推進しています。

また、現場のスタッフには「私は社長として社内を掃除するから、現場は自分たちできれいにしなさい」と伝えています。業務のミス回避や現場の事故防止など、整理整頓は日々のすべてに良い影響を与えるものです。建設業のイメージアップにもなる「美意識」に基づいた行動を、みんなで少しずつ実践できていると思います。

「グループの総合力×小規模組織」を強みに幅広い案件を獲得

ーー建設会社としての強みをお聞かせください。

松井良樹:
社員全員が互いに助け合えることは小さい会社ならではの強みだと思いますね。また、弊社はグループ会社の一員であるがゆえに「作業船」と呼ばれるさまざまな種類の船舶を保有しています。公共工事を行う建設会社の中でも、業務の幅が広いことは大きな特徴だと言えるでしょう。

さらに、建設業界の中でもいち早く働き方改革に取り組んできました。週休2日を4週にわたってバランス良く確保する必要がある一方で、現場の作業ペースは気象や海象(波の状況)に左右されます。采配が難しい時もありますが、経営者としてのやりがいは大きいですね。勤務内の時間配分が苦手な社員もいましたが、近年は誰もが定時に退社できるほど意識改革が進んでいます。生産性の向上を含めて、会社が良い方向に成長しました。

公共工事へのプライド・やりがいを発信――SNSでファンを獲得

ーー貴社の事業のやりがいについてお聞かせください。

松井良樹:
私たちが手掛ける仕事は、税金が投じられる公共工事が中心です。防災につながる重要な仕事であり、予算を出していただくからには良い構造物をつくる責務があります。SNSなどで私たちが工事を施した場所が好意的に取り上げられると、喜びやチャレンジする意欲が湧き上がります。年齢や経験を積んでいくほど、その実感は強まっていますね。公共工事が世の中からなくなることはないため、技術者として生き残りやすい点も魅力だといえるでしょう。

ーー採用活動ではどのような点に注力していますか。

松井良樹:
私は2024年で50歳となり、事業承継について考える機会が増えました。業務を遂行する中で後継者にふさわしい人材が現れることを信じつつ、今後も採用を強化していく予定です。誠実かつ品質の高い施工を評価していただくことが最終的に会社の利益につながるため、SNSでの定期的な情報発信も採用活動の一つだと考えます。

Instagramのフォロワー数は2,000人を超え、建設業の中では多い数字となっています。就職活動ではご家庭で会社の印象を話し合うケースもあります。ご縁を得るためには親御さん世代に向けても会社をアピールし、弊社の事業について知っていただくことが大切です。

建設業を「みんなに選ばれる仕事」にするために

ーー今後の展望をお聞かせいただけますか。

松井良樹:
建設業を「みんなが憧れる基幹産業の一つ」に戻したいと考えています。建設業の面白さを理解していただくことで入職者も増えると考えているため、弊社というよりも業界全体の魅力を伝えていきたいのです。工業高校の生徒さんを招いた現場見学会は非常に好感触でした。社員のやる気アップにもつながるので、今後も続けていきたい取り組みの一つです。

2024年2月に行われた「和歌山県優良工事表彰式」では、弊社が行った「和歌山下津港港湾施設整備」の工事が表彰されました。また、2024年7月に「和歌山市長表彰」もいただきました。1年間の会社の成果や改善点がわかる機会ですので、これからも年間目標の一つとしていきます。

編集後記

がむしゃらに働いた日々を駆け抜け、「建設業の未来の担い手問題」に目を向けるようになった松井社長。時代にそぐわない働き方を変え、SNSを活用して業界のPRをコツコツと続けてきた。どんな仕事や活動においても、しっかりと「人」と向き合い、誠実さを重ねるという社長のポリシーが一貫していると感じた。

松井良樹/1974年、和歌山県生まれ。1998年に近畿大学卒業。1998年、共和海建株式会社に入社。約4年間で主に関西国際空港2期工事に従事。2002年、福興建設株式会社に入社(転籍)。2016年に代表取締役社長に就任。ロータリークラブ活動にも注力している。2024年からは和歌山ロータリークラブの幹事に就任(任期1年)。