清掃業界に新風を吹き込むリ・プロダクツ株式会社。代表取締役を務める髙奥要輔氏は父が創業した同社を中学生の頃から手伝い、はじめはアルバイトとして入社した。現在は、BtoBのお掃除ロボットレンタル事業「おそうじレンタル」を運営し、全国展開を目指している。清掃の枠を超え、快適空間の創造へと事業を進化させる同社の戦略と、髙奥社長が描く未来像について話を聞いた。
学生アルバイトとして入社した翌年には北陸エリアの責任者へ
ーー髙奥社長と貴社との関わりはいつ頃から始まったのでしょうか。
髙奥要輔:
私がリ・プロダクツの業務に関わり始めたのは中学生の頃です。父が立ち上げた会社で、最初は配達の手伝いなどをしていました。当時は、自分が経営を引き継ぐことは、考えていませんでしたが学生だった1992年にアルバイトで入社し、翌年には北陸での商業施設の立ち上げと清掃管理業務を任されることになりました。
ーーどのような経緯でアルバイトから1年で重要な仕事を任されるようになったのでしょうか。
髙奥要輔:
実は、北陸での事業展開にあたり、創業者の父が「すぐに行ってくれ」と依頼できる人が私しかいなかったのだそうです。あまりに急な話であったため、社員には頼みづらく、息子の私になら「行ってこい」と気軽に言えたというわけです。
北陸にはじめて訪れた時は、言葉の違いに苦労しました。特に富山の方言は特徴的で慣れるのに時間がかかり、加えて年配の方とのコミュニケーションも難しく、なかなか地域に受け入れられませんでした。少しずつ地域の方々とコミュニケーションを取ったりして、徐々に打ち解けていったのです。さらに休日も一緒に食事に行くなど、さまざまな努力を経て関係を築いていったことを覚えています。
清掃から「クレンリネス(清潔)」へ
ーー改めて貴社の事業内容について教えてください。
髙奥要輔:
弊社は清掃資機材の販売から始まり、次に清掃業務の請負へと進化してきました。現在は、「清掃」から「快適空間の提供」へと視野を広げています。つまり単に清掃するだけでなく、その結果として清潔さを生み出し、快適な空間を提供するという視座に変わりつつあるのです。
また、環境への取り組みも重視しています。2001年からISO14001を取得し、滋賀県という琵琶湖のある地域の企業として、環境保護にも力を入れており、昨年は清掃サービスでエコマークも取得しています。
ーーそのような中で始めた「おそうじレンタル」とはどのような事業でしょうか。
髙奥要輔:
「おそうじレンタル」は、人手不足という課題から生まれたサービスです。最初は高額な業務用清掃ロボットを導入しましたが、コストが見合わず、家庭用ロボット掃除機に着目し、業務用としての可能性を探りました。さまざまな製品をテストして、業務用に使える機種を厳選したうえで、レンタルサービスとして展開し始めたのです。
この事業には別の狙いもあります。大手企業のビルなどは、関連会社が清掃を担当することが多く、直接サービスを提供する機会が限られていました。しかし、「おそうじレンタル」を展開して、エンドユーザーに直接アプローチすることで、より良いサービスを提供できるようになります。
まだ見ぬプロフェッショナルの地位確立を目指して
ーー貴社の強みや差別化ポイントはどこにあると考えていますか。
髙奥要輔:
弊社の最大の強みは、長年培ってきた清掃業務の知見によって、お客様の声を直接聞き、ソリューションを提供できる点です。「おそうじレンタル」でも、単にロボットを貸し出すだけでなく、快適空間をどう創出するかという観点からサポートしています。
たとえば、ロボット導入時の設定や使い方の指導をオンラインで行い、清掃のプロとしての知識を活かし、お客様の施設に最適な使用方法を提案することが可能です。清掃業務について熟知しているからこそできる強みだと自負しています。
ーー今後の事業展開や注力テーマについてお聞かせください。
髙奥要輔:
私たちが目指しているのは、「クレンリネスのプロフェッショナル」としての地位を確立することです。飲食店にはクオリティのプロ、サービスのプロがいますが、クレンリネスのプロはまだ聞いたことがありません。その立ち位置を私たちが築いていきたいと考えています。
具体的には、お客様の声を集めて分析し、新しい商品やサービスを開発する仕組みを構築中です。たとえば、施設を利用するお客様の声を、その施設の運営者にフィードバックできるようなシステムの開発に取り組んでおり、清掃のDXとして、ITシステムやアプリを活用したデータ収集・分析も進めているところです。
また、経営者として「会社の健康」を大切にしています。人間と同じで、会社も健康でなければ良い考えのもとに前に進むことはできません。私自身も、健康管理に気を付けています。それが会社経営にも良い影響を与えていると感じることもあり、健康な会社だからこそ、新しいチャレンジができるのだと信じています。
編集後記
髙奥社長の言葉からは、清掃業界に新たな価値を創造しようとする強い意志が感じられた。中学生の頃から家業に携わり、アルバイトから社長にまで上り詰めたキャリアがそれを証明しているのではないだろうか。「おそうじレンタル」という革新的なサービスは、人手不足に悩む清掃業界に新たな可能性をもたらすだろう。テクノロジーと人の力を融合させ、単なる清掃から快適空間の創造へと事業を進化させる同社の今後の展開に注目したい。
髙奥要輔/滋賀県出身。1992年、リ・プロダクツ株式会社にアルバイトとして入社。1993年より北陸での商業施設の立ち上げおよび清掃管理業務を担う。2018年、先代から事業を引き継ぎ代表取締役に就任。2000年以降、現在の首都圏営業所・北陸営業所や関連会社のS&Cビルマネジメント株式会社を立ち上げる。BtoBのお掃除ロボットレンタル事業「おそうじレンタル」などの新サービス開発で滋賀から全国へ事業展開を推進中。