※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

株式会社沖宮工業は、機械組立、機械加工、製缶溶接といった一連の作業を、設計から納品、さらには設置工事やメンテナンスに至るまで一貫して行う企業だ。代表取締役社長の沖田明彦氏は、強い“想い”を持ってモノづくりに挑戦し、その機械で世界が豊かになることを心から願っている。今回は、沖田氏にご自身の入社経緯やこれから注力していきたい分野、会社が求める人材、そして将来の展望について話をうかがった。

組み立てから溶接まで、業界をリードする一貫製造力

ーー会社を継ぐまでの経緯をお聞かせください。

沖田明彦:
当時、会社はまだ小規模でしたが、父の事業が成長を見せるにつれて、自然とその仕事を意識するようになりました。しかし、会社を継ぐことについては具体的に考えていたわけではありません。高校を卒業後、今と同じ業界で5年間修行を積んだ頃、父から「そろそろうちに来るか」と声がかかったことで、入社する決意が固まりました。

組み立てや溶接の仕事を中心に行っていましたが、当時は休みも少なく、長時間の労働が続き、体力的にもかなり厳しい状況でした。しかし、その中でも、厳しい納期の案件を無事に達成し、お客様から「良い仕事をしてくれた」と感謝の言葉をいただいたときの喜びは、今でも鮮明に覚えています。現在も一緒に働いている仲間たちと、当時からともに困難を乗り越えてきました。

ーー現在の事業内容について教えてください。

沖田明彦:
弊社は、産業機械全般の組み立てを中心に事業を展開しています。具体的には、組み立て工場、製缶溶接工場、レーザー工場、機械工場、第二機械工場、そして奈良工場と、各種工場を備えています。

事業内容としては、主に機械加工製缶、溶接に力を入れており、マシニングやNC旋盤を使用した加工が中心です。また、自社工場で全ての工程を完結できる体制を整えているため、図面が届けば全工程を自社内で行うことができることは弊社の強みです。

ーー社長に就任後、どのような改革を行いましたか?

沖田明彦:
弊社の技術力には確固たる自信を持っていますが、それでも限界は存在するため、業務が過剰になる前に、外注を活用するようにしています。たとえば、仕入品については、少しでも現場の負担を軽減するため、効率的な仕入れ方法を選択しています。

溶接などで使用する部材についても、これまで社内で行っていた切断工程を外部に委託することで、現場での作業時間を短縮し、効率を向上させました。人手不足の状況下では、時間を節約するためにコストをかけることも必要だと考えています。

責任感のあるリーダーを育成し、トップダウン経営ではなく組織作りを重視

ーーこれから会社として特に力を入れていきたいことは何でしょうか?

沖田明彦:
今後の最重要課題は、人材の確保だと考えています。社内では世代交代が進行しており、やる気と根気を持って長期的に取り組める人材が必要です。創業者が築いた基盤を活用し、次世代のリーダーとなる人材を育成することが私の責任です。今後は、各工場のリーダーとなる若手社員を育て、各自が責任を持って会社を運営できる組織を目指していきます。

会議では各拠点のリーダーを集めて、スケジュールや計画を緻密に打ち合わせ、その結果、私が直接指示を出さなくても、各工場で自律的に段取りを進められる組織を作り上げることが理想です。

もちろん、トップダウンの決定が必要な場合もありますが、基本的には現場のリーダーが責任を持ち、部下からの意見を尊重する組織作りを理想とし、上下関係を強調しないフラットな社風を大切にしています。

ーー近年、モノづくり業界に対する若者の関心が低下していると言われていますが、その影響は感じていますか?

沖田明彦:
若者のモノづくり離れが進んでいることを強く感じています。しかし、昔ながらのアナログな仕事が無くなることはないため、若者がその重要性を再認識することが求められると考えています。

たとえば、ビルを建てる際、鉄骨をクレーンで吊り上げてつなげる作業がありますが、それは“人”が担う作業であり、風が吹けば鉄骨が揺れる中での繊細な技術が求められます。同じように、弊社のような製造業でも、機械や玉掛け、クレーンの操作には高度な技術が必要になるのです。

ーー外国人労働者の雇用について、どのような取り組みをしていますか?

沖田明彦:
現在、弊社には7名のベトナム人社員が在籍しています。日本人の新卒社員の離職率が高い中で会社を維持するために、ベトナム人社員の採用を積極的に行っています。彼らは非常に真面目で、仕事に対して責任感が強く、遅刻や欠勤がほとんどなく、今では弊社にとって欠かせない存在となっています。

採用は大切ですが、無理をしない範囲で、会社に合った人材を探し、彼らを大切にしていくことが重要だと考えています。永住権を取得したベトナム人社員には工場の課長を任せており、責任感の強い彼らが今後の会社運営を支えてくれることを期待しています。

評価制度の構築と新しい軸で仕事を展開

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

沖田明彦:
貢献度や勤務態度、技術レベルなどを給料やボーナスの査定に反映する人事評価制度を整えていきたいと考えています。また、製造業の主軸に加えて新しい事業の柱を築いていくことも視野に入れています。

弊社の技術力を活かし、新しい分野での事業展開を目指していくことが、今後の大きな目標です。専門的な技術を持つ人材を採用することで、社員の技術力をさらに高め、業務の幅を広げていきたいと考えています。

編集後記

株式会社沖宮工業が持つ技術力と、それを支える人材育成への熱意は、日本のモノづくりの未来に大きな希望を感じさせる。沖田社長が語る「人を大切にする」姿勢は、単なる企業の成功にとどまらず、社会全体に貢献するものである。デジタル化が進む中で、アナログな技術の価値が再認識されることを願い、これからも同社は日本のモノづくりを牽引していくだろう。

沖田明彦/1972年兵庫県生まれ。株式会社沖宮工業の二代目として生を受ける。高校卒業後、大阪の製造業に就職。5年間の修業を経て1995年、株式会社沖宮工業に入社。2015年に同社代表取締役社長に就任。