ダンサーを発掘し発信するウェブメディア「ビジョトダンス」。同メディアを運営するのは、ダンス・ヒップホップミュージックに特化した雑誌やWEBの編集、動画制作、イベント企画運営、PR、キャスティングを手掛ける株式会社bashmentだ。創業者である代表取締役の角政光氏に、創業の背景やダンス・ヒップホップへの思いについて話をうかがった。
「日本人ラッパーを世に知らしめたい」という思いから映像・雑誌業界へ
ーー雑誌編集の世界に飛び込んだ経緯を教えてください。
角政光:
父親が自営業だったこともあり、大学時代にはいずれ社長になりたいという漠然とした思いをもちつつ、ラッパーになりたいという強い願望も抱いていました。そんな中、本場のヒップホップを肌で感じたいと訪れたニューヨークで、才能あるすばらしい日本人ラッパーに出会ったのです。
自分の才能に限界を感じる一方で、「日本人ラッパーを世に知らしめたい」と強く思いました。まだ日本でヒップホップが広まっていなかった、2000年前後のことです。そこで、映像や雑誌の方面に進みたいと考え就職したのが、ストリートダンス系フリーペーパー「movement」を発行する会社でした。
ーーmovement編集部で取り組んだことは何ですか?
角政光:
入社時の社長面接で、「3年間営業と編集を学び、独立したい」と明言して入社しました。ダンス・エンターテインメント業界の中で、営業や編集を学びたいと考え、当時知名度が低かった「movement」をナンバーワンのフリーペーパーに育てることを目標にしました。
広告を集め編集にも積極的に携わった結果、クラブ系フリーペーパーの中でトップクラスにまで成長させることができたんです。私自身も編集長として「movement」の担当ができて本当に良かったと、心の底から感じています。
情熱が生み出す、ダンサー・ラッパーたちの未来
ーーbashment設立の経緯と、苦労や嬉しかったことをお聞かせください。
角政光:
movement編集部には成果を上げながら、約5年弱在籍しました。その後、30代を前にして自分の道を進もうと決心し、設立したのが編集プロダクションである株式会社bashmentです。
設立直後はリーマン・ショックや、スマ―トフォンの普及に伴う紙媒体の需要減少に苦しみました。現在は売り上げも伸び、創業当時から知っている人たちが、今や第一線で活躍している姿を見るたび、胸が熱くなる思いです。
ーー事業内容を教えてください。
角政光:
もともとの中心業務は編集プロダクションで、顧客企業からのさまざまなご相談にも柔軟に対応し、事業化してきました。現在は編集業務、PR委託、キャスティング、イベント事業の4つが主要な事業です。
自社メディア「ビジョトダンス」も運営しており、編集業務が全体の約4割近くを占めています。雑誌だけでなく、動画制作などほかのメディアも増えてきました。イベント企画制作もまた同じくらいの割合を占めています。
弊社の強みは、特定の個人や派閥に肩入れせず、常にフラットな立場を保ち続けてきたことです。そのおかげで、横のつながりが広がり、顧客企業のニーズに合った国内外ダンサー、ラッパーなどをキャスティングすることが可能です。
ーー「ビジョトダンス」について詳しく教えてください。
角政光:
「ビジョトダンス」は、ダンサーが簡単に自分のプロフィールや履歴書を作成し、企業とマッチングできるようにすること、そして企業のメディアパートナーとして機能するダンスメディアを構築すること、この2つの軸で立ち上げたメディアです。
企業とダンサーをつなぎ、ヒーローやヒロインを生み出すメディアに育てたいと考えています。「ビジョトダンス」を見た企業の皆様の中で、ビジョトダンスとのタイアップ企画やYouTubeチャンネルでのコラボなどにご興味があれば、ぜひお問い合わせください。企画やニーズに合ったダンサーをプロデュースします。
流派を超えたダンス・ヒップホップ界の架け橋として
ーー今後の目標やビジョンはどのようなものですか?
角政光:
ダンスやヒップホップは、認知度が高まってきていますが、まだ世間に知られていない優れたダンサーやラッパーがたくさんいます。弊社は今後も、特定の流派に偏らず、多様なダンサーやラッパーを取り上げることで、業界全体を支える存在になりたいです。
今はスニーカーを中心としたファッションブランド「atmos(アトモス)」が展開する、女性向けのコンセプトショップatomos pinkのWEBメディア「DANCERS FILE」やダンスワークショップなどの企画制作も行っています。
ダンスやヒップホップに興味のある企業であれば、どのような分野であっても、ぜひ弊社にメディアの立ち上げやイベント企画運営、ダンサーキャスティング、ダンスを使ったPRなどの支援をお任せください。
編集後記
ダンス・ヒップホップに対する「とにかく興味を持ってほしい、多くの人に広めたい」という熱い思いがひしひしと伝わってくるインタビューだった。実際、角社長の熱意に触れ、その姿勢に共感して依頼する顧客企業も少なくないという。
特定のダンサーではなく、ダンス業界全体を盛り上げようとする姿勢も、依頼企業側にとってニーズに合った提案を受けられる大きなメリットだ。その業界への熱意は今後も日本の企業を動かし、やがてダンス・ヒップホップがもっと身近なものになる世界が生まれるに違いない。その未来をつくるキープレーヤーとしての株式会社bashmentの活躍が楽しみだ。
角政光/1977年生まれ 神奈川県川崎市出身。映像特殊機材会社を経て、ストリートダンス系フリーペーパー「movement」を発行する会社で営業編集、編集長を経験。2007年、株式会社bashmentを設立し代表取締役に就任。