
自然素材を活かした注文住宅で、心地よい暮らしを提供する株式会社アットナチュレ。無垢材の床や漆喰の壁を標準仕様とし、自社施工・自社管理による適切なコスト管理を徹底することでこだわりの住空間を実現している。2023年には、モデルハウスとカフェを併設した「nature kurasi town(ナチュレ クラシ タウン)」をオープン。1万4000人のインスタグラムフォロワーを抱え、20〜30代の支持も集めている同社。
まるでカフェのような住まいから、手軽にアレンジできる「kurasi Lab(クラシ ラボ)」まで、時代のニーズを捉えたブランド展開をする代表取締役の山口秀典氏に話をうかがった。
「カフェのような居心地の良い家」を目指して起業
ーーなぜ注文住宅の分野で起業しようと考えたのですか?
山口秀典:
私はもともとカフェ巡りが好きで、特に自然素材を基調とする空間に憧れを持っていました。前職がハウスビルダーの営業職だったので、「自然素材を専門に扱い、ナチュラルな雰囲気の住宅を提供する会社があれば面白いのではないか」と考えたことが、起業のきっかけとなりました。
弊社では、「自然素材を多用した家づくり」というコンセプトを掲げています。無垢材の床や漆喰の壁を標準仕様として、お客さまに快適な住空間を提供することが目標です。「まるでカフェにいるような居心地の良い家をつくりたい」という思いが、弊社の事業の原形になりました。
ーー創業後はどのようにして事業を拡大されたのですか?
山口秀典:
2012年に創業したばかりのころは知名度がまったくなかったので、まずは注文住宅の雑誌やインターネットに広告を出すことから始めました。ちょうどナチュラルなインテリアが流行っている時期だったので、幸運なことに創業1年目から黒字を出すことができました。
この黒字経営が現在に至るまでずっと続いているのは、本当にありがたいことです。創業当時は営業や図面作成、経理などをすべて私1人で行っていたのですが、お客さまのご来場が予想以上に多く、嬉しい悲鳴を上げていました。
SNSの活用とカフェ併設モデルハウスで若年層にもアプローチ
ーー事業の強みや他社との差別化ポイントを教えてください。
山口秀典:
弊社は自社施工・自社管理を行うことで、コストマージンを抑えることに成功しています。下請け会社に施工を依頼すると、そのコストをエンドユーザーであるお客さまへの販売価格に上乗せすることになります。
弊社はお客さまの目標金額をなるべく変更せず、こだわりをそのまま形にしてもらえるように、素材や施工、管理などを一括で受注し、全体コストを抑えています。このような企業努力をお客さまに還元し、適切な利益を上げているところが強みといえるでしょう。自社施工することで、高い品質を維持することにも成功しています。
ーー20~30代の方に認知してもらうために、どのような施策を行っていますか?
山口秀典:
ホームページのつくり込みや、SNSを活用した集客に力を入れています。特にインスタグラムの運用に注力し、1年でフォロワーを3000〜4000人増やすことを目標にしていました。現在は、1万4000人のフォロワーを獲得しています。デザインに統一感を持たせるなど、家の魅力が伝わるように工夫した写真を掲載しているほか、住宅購入を検討している方の目にとまるように、弊社の広報が工夫を重ねたおかげで成果につながりました。
ーーSNSの運用以外には、どのような集客を行っていますか?
山口秀典:
2023年に、弊社は2タイプのモデルハウスと、カフェを併設した「nature kurasi town」をオープンしました。モデルハウスのみだと敷居が高く感じられ、来場されるお客さまが少なくなりがちです。そこで、カフェを運営することで、お客さまが気軽に足を運べる場をつくろうと考えたのです。
実際に、カフェにご来店いただいたお客さまが建築を依頼してくださったり、そのお客さまがご友人をご紹介してくださったりと、集客や受注につながっています。
楽しい暮らしを提案できる営業力で、埼玉県トップを目指す!

ーー今後はどのようなことに注力されますか?
山口秀典:
営業スタッフによって受注率に差異があるので、もう少し平均化したいですね。弊社の営業スタッフは、前職で住宅販売の経験がある人と、未経験で入社して頑張っている人の両方がいます。
スタッフの経験知によって受注率に差が出てしまうのは仕方ないのですが、未経験のスタッフでも受注できるシステムづくりをしなければなりません。現在も営業職の研修や勉強会などを行っていますが、そういった取り組みを今後も継続します。
そうした取り組みと並行して、人材の獲得にも力を入れていくつもりです。売上を上げることよりも、インテリアや内装など、お客さまが求めていることを汲み取れる人が理想的です。住宅のことだけではなく、インテリアや雑貨、カフェ風の空間づくりなど、一軒家での楽しい暮らしを提案できる営業職になってほしいと考えています。
ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。
山口秀典:
「kurasi Lab」という、シンプルに暮らしたい人に向けたブランドを強化していきたいと思っています。「kurasi Lab」は弊社が2年前に始めたブランドで、「シンデレラフィットする収納スペースがほしい」「自分好みにアレンジした家で暮らしたい」など、お客さまのニーズに応えられる、すっきりとしたデザインの住宅です。
近年のシンプル志向と相まって需要が増えているので、このブランドをブラッシュアップして、いずれ事業の柱になるくらいに成長させるつもりです。
また、事業を成長させるためには、引き続き認知度を向上させることが必要なので、広告宣伝も含めてさまざまなことをやっていきたいと考えています。埼玉県でトップクラスのハウスビルダーとして、「埼玉県の注文住宅と言えば、アットナチュレだ」と言われるようになれたら嬉しいですね。
編集後記
デジタルマーケティングの重要性が叫ばれて久しい現代。そんな中、山口社長はSNSでの情報発信にとどまらず、モデルハウスにカフェという体験を組み合わせることで、独自の集客モデルを確立している。創業時から貫く自然素材へのこだわりと、時代に合わせたマーケティング手法の融合。そこには、理想の住まいづくりを追求する情熱と、ビジネスパーソンとしての冷静な判断力が同居していた。

山口秀典/1975年、埼玉県生まれ。インテリア商社、不動産会社、ハウスビルダーに勤務後、2012年、株式会社アットナチュレを設立。代表取締役に就任。