※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

耐久性が高く、さまざまなシーンでも使いやすいジーンズ。多くの人が1本は持っているのではないだろうか。何年も穿き続けられるもので、穿くほどにエイジングによって味わいが出てくるので、自然と愛着が湧いてくる。

そんな奥深いジーンズの老舗企業である株式会社エドウインは、長年にわたって日本のジーンズ業界を牽引してきた。代表取締役社長の俵修一氏に、今後のブランドについての在り方や、次の世代へつなぐ挑戦についてうかがった。

ジーンズに関わる人はこだわりが強そう?そんなイメージを覆す現場の情熱

ーーこれまでの経歴を教えてください。

俵修一:
伊藤忠商事では、繊維カンパニーに所属し、営業を主体に約30年間業務に携わってまいりました。その間、全カンパニー横断での開発マネジメントや経営企画、アパレル会社への出向など、多岐にわたる環境で多くの経験を積むことが出来ました。

これらの経験を通じて、右から左の従属的な仕事ではなく、自らが主導権をもってビジネスを牽引することの重要性を、身をもって深く学んでまいりました。

エドウインとの接点は、2014年の伊藤忠商事の出資後に事業管理の業務に携わったことがきっかけですが、以後、エドウインへの出向や、主管部長として、立場は変わりながらも、絶えずエドウインとの関わりは続いていました。ですので、2023年に社長就任の内示を受けた際は、まさに天命だと感じ、自然と覚悟が決まりました。

ーー伊藤忠商事からエドウインに異動して、感じたことはありますか。

俵修一:
もともとファッションが好きだったこともあり、デニムやジーンズには馴染みがありました。ただ当初は、「デニムに関わる人はこだわりが強く、少し取っつきにくそうだ」という先入観を持っていたのは確かです。しかし実際に接してみると、社員は確かにこだわりが強いですが、それは「物事を真剣に考え、素直で真面目に仕事に取り組んでいることの裏返しなんだ」と思うようになりました。

EDWINというブランドへの信頼感を次代に引き継ぐ使命

ーーEDWINというブランドについて教えてください。

俵修一:
EDWINは1961年に日本で誕生し、60年以上の歴史を持つブランドです。もともとはアメリカ製のジーンズを輸入して販売していましたが、もっと日本人の体型にあった、穿きやすいジーンズを自分たちの手で創ろうと思い、日本国内の工場でデニムの製造を始めました。

今では古着のような中古加工のジーンズは当たり前になっていますが、実はEDWINが先駆者なんです。1975年に古着独特の色落ち感を再現した中古加工ジーンズ「OLD WASH」を発売、1980年に石とミキシングマシーンによるジーンズの加工「Stone Wash」を発売、と常にデニムの新たな可能性を切り開いてきました。

日本のジーンズにおけるリーディングカンパニーとして、品質が高く、手に取りやすい価格の商品を提供するために、高品質で安定した生産を実現する国内自社工場を持っている点が弊社の強みでもあり、昨今のジャパンデニム・ブームにつながっているのではないかと思います。

ーー社長に就任されたときの決意をお聞かせください。

俵修一:
社長就任の内示を受けた際、身震いするほどの重圧を感じました。新型コロナウイルスの影響以前から、エドウインを取り巻く販売環境は厳しい状況にありました。しかしながら、以前に実施したブランド調査で、エドウインの知名度と信頼度が非常に高いことは認識していました。

60年以上の歴史を持ち、高い知名度と信頼度を誇るブランドを継承することは、大変な重責ではありますが、このブランド、そして会社を次の100年に繋げるべく、ブランド価値を高め、次世代にも選ばれるブランドとして継承していくことが、私の使命であると強く感じました。

日本のデニムカルチャー創造企業として、世界に挑むオンリーワンの存在に

ーーブランド価値向上のために挑戦したいことを教えてください。

俵修一:
私たちはこれまで、卸し先の店頭に商品を届けるところまでが仕事でした。しかし、店頭で売れないと、その先の追加発注はありません。お客様が買いたくなるためにはどのようにするべきか、私たちの価値を伝えるためにはどうするべきかを考えなければなりません。今の時代、「店頭に届けるまでが仕事」というやり方では、私たちの価値を直接お客様に伝えきれません。

また、EDWINというブランドの知名度はありますが、様々な店舗に商品が置かれていることで、消費者にとってはブランドイメージが分かりにくい状態になっていることが推測されます。そういったことを解決するために、今後はDtoCを強化し、直接お客様に商品とともにブランド価値を伝えていかなければならないと感じています。

ーー海外の市場に関してはどのように考えていますか。

俵修一:
各国のパートナーと協力し、ブランドメッセージを明確にし、私たちが主導してビジネスを展開したいと考えています。ディストリビューションを中心に展開していきたいですが、ライセンス契約も組み合わせ、うまく現地に適合(ローカライゼーション)していく必要があると思っています。

ヨーロッパでは直営店舗も含め展開出来ていますが、まだまだ拡大できる余地があると見ています。特に、現時点でほとんど手つかずの中国市場や、難しいとされるアメリカ市場に重点を置き、積極的に取り組んでいきたいと思っています。

ーー今後、どんな会社に成長させたいですか。

俵修一:
昨年、CREDO(行動規範)と企業ビジョンを改めて見直しました。企業ビジョンは「日本のデニムカルチャー創造企業として、世界に挑む唯一無二の存在へ。」です。これまで築き上げてきたブランドへの誇りを持ちながらも、慢心することなく、次の未来に向けて挑戦を続ける意思を込めました。

「挑戦なくして成長なし」という信念のもと、強い意志を持って進めていきたいと思います。これらの課題を乗り越え、次の世代へEDWINの価値を高めていくことを目指しています。

編集後記

60年以上の歴史を誇るエドウインは、圧倒的な知名度と信頼を武器にしながら、決して現状に甘んじることなく、常により良い商品を提供し続けている。ジーンズ業界の変化を的確に捉え、新たな市場へ果敢に挑むその姿勢には、ブランド価値をさらに高め、次世代へと受け継いでいく強い意志が感じられる。その挑戦は、日本発のジーンズブランドとして世界へ飛躍する未来を確かなものにするだろう。

俵修一/鳥取県出身。1993年、一橋大学経済学部卒業、伊藤忠商事株式会社入社。2017年、株式会社エドウイン取締役。2023年、同社代表取締役社長に就任。