※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

株式会社ライフメイトは、動物病院の運営を通じ、動物とその家族の幸せを追求している企業である。同社の強みは、かかりつけ医としての一次診療から救急診療、専門的な高度医療まで、多岐にわたる獣医療ニーズにワンストップで対応できる体制だ。代表取締役社長の稲垣武彦氏は、獣医師の知見と公認会計士としての経営スキルを併せ持つ。同氏は「動物とその家族にとっての幸せとは何か」という根源的な問いを常に胸に抱き、事業を展開している。獣医療の未来を牽引する稲垣氏の情熱と、業界が抱える課題解決への強い思いに迫る。

運命を決めた一頭の競走馬 獣医師を志した学生時代

ーー獣医学に興味を持たれたきっかけについて、おうかがいできますか。

稲垣武彦:
幼い頃から動物が好きで犬も飼っていましたが、一番のきっかけは中学時代に競馬にはまったことです。テレビで見たJRAの「マヤノトップガン」という馬の、早く走るために特化した筋肉質な体が非常に美しいと感じました。この世界を知り、そこに携わる仕事をしてみたいという気持ちが芽生えました。もともと動物好きだったこともあり、獣医師という道を考え始めたのです。

ーーその後の進路はどのように選ばれましたか。

稲垣武彦:
中学時代に獣医師を目指そうと考え、大学入試では獣医学科がある大学を受験しました。レベルの高いところで学びたいという思いと、関東に住んでいたこともあり、大学は東京大学を選んだ次第です。

東京大学には、入学してから1年半の教養課程の成績をもとに、3年次から進む学部・学科を選択できる「進振り(現在の名称は進学選択)」という制度があり、多くの学生は入学後に進路を選択します。その中で、私は獣医師になるという明確な目的を持って入学した、少し珍しいケースかもしれません。大学時代は馬術部に所属し、馬と共に過ごす毎日でした。

獣医療と経営へ 会計士の知見を携え、再び業界の最前線へ

ーー大学卒業後の経歴をお聞かせください。

稲垣武彦:
就職活動時には馬の獣医師を目指したものの、非常に狭き門で叶わず、大学卒業後は犬や猫を専門とする「日本動物高度医療センター」に研修医として入社しました。そこで8年間、臨床経験を積みながら、32歳の時に自身のキャリアを考え直したのです。

このまま獣医療という世界だけでキャリアを終えるのではなく、より広く社会の仕組みを学びたいという思いがありました。しかし、他業界での経験やスキルが何もない状況で、30代からの転職は簡単ではありません。そこで、自分の市場価値を高め、より高いレベルで仕事をするために、難易度の高い国家資格の取得が必要だと考え、数ある資格の中で公認会計士を選びました。試験科目にあった財務会計や会社法、経営学といった知識が、将来経営に携わる上で不可欠な知識を体系的に学べる、最適な選択肢だったからです。

ーーその当時から、将来は経営に携わりたいと考えていたのですか。

稲垣武彦:
いずれは経営サイドに立って会社を動かしていきたいという思いはありました。それが社長という立場なのか、あるいはCFOのような役職なのか、具体的な形までは定めていませんでしたが、経営の中枢に入って事業を動かしたいという気持ちはその頃から持っていました。

ーーその後の歩みと、現在の役職に就かれた経緯をお聞かせください。

稲垣武彦:
資格取得後は、まず監査法人に就職しました。将来、経営サイドに立ったときのために、監査人という客観的な立場で多くの会社の仕組みや数字の流れを見ておきたかったのです。その後、より実践的な経験を求めてIPOを目指すスタートアップへ転職し、何もないところからルールを創り上げていく経験を積みました。

その会社での役割を全うしたと感じていたタイミングで、獣医師時代にお世話になった先輩から「ライフメイトの代表として力を貸してくれないか」と声がかかりました。業界への恩返しをしたいという気持ちや、見学に訪れた際に旧知のメンバーと再会したご縁もあり、このお話をお受けすることにしたのです。

獣医師としての成長を後押しするグループ内の施設連携

ーー貴社の事業内容と強みについてお聞かせください。

稲垣武彦:
事業内容としては、動物病院の運営です。複数の病院で、日常的な病気やけがに対応する「かかりつけ医」としての役割を担っています。それに加え、一般的な動物病院では対応が難しい救急医療や、専門的な「高度医療」も提供しています。これらを通じて、動物の命とご家族との絆をつなぐことが私たちの使命です。

弊社の強みは、かかりつけ医となる一次診療施設、救急診療を提供する施設、そして高度医療を提供する施設が、すべてグループの中に揃っている点です。この3つが揃っていることで、獣医療に求められるさまざまなニーズにグループ内で一貫して対応できます。これは飼い主さんにとって大きなメリットです。

ーー貴社で働くことで、どのような成長が期待できますか。

稲垣武彦:
当グループの中でさまざまな経験ができるというのは、特に若いうち、獣医師であっても看護師であっても非常に大きな経験になるでしょう。獣医師は20代半ばで卒業して約30年から35年働くため、最初の10年をどう過ごすかは非常に重要です。その最初の10年の中で、さまざまなタイプの病院で多様な経験ができるのは大きなアドバンテージです。

地域のかかりつけの動物病院であっても、病院の規模によって日々の業務内容や来院される患者様のタイプまで全く異なります。救急や高度医療という専門的な知識を身につけることは、10年後のキャリアにおいて大きな強みになると考えています。そのため、そういった経験を早めに積んでいきたい人にとっては非常に良い環境です。

また、指導体制も充実しています。当グループの高度医療施設には多くの専門医が在籍しており、彼らから直接指導を受けられます。このような環境は、日本では非常に貴重だと考えています。貴重な経験を積める、恵まれた環境と言えるでしょう。若いうちに地域のかかりつけの動物病院、救急、高度医療のすべてを経験することは、獣医師としての対応力の幅を身につけるうえで非常に重要です。また、これまでにない動物病院グループへと成長していくためには、病院だけでなく、それを支えるコーポレート組織の成長が必要不可欠です。コーポレート人材にとってもM&Aによるダイナミックな事業拡大を目の当たりにでき、新たな諸制度を自分で整備・運用していくことができるので、大きな成長機会があると考えています。

獣医療業界の課題解決へ向けた成長戦略

ーー今後の展望についてお聞かせください。

稲垣武彦:
今後5年を目途に、現在の2〜3倍の事業規模へと拡大していきたいと考えています。当社グループとしては、単に病院数を増やすだけではなく、動物病院事業全体を支えるインフラ的な役割にも注目しています。特に、病院で使用する医療機器や医療材料、備品の製造販売や物流といった領域をグループ内で展開し、自らの病院を支えると同時に、業界全体にとっても不可欠な基盤として機能するような事業を手掛けていきたいと考えています。

編集後記

稲垣社長のキャリアパスは、獣医師として動物医療に深く携わった経験と、公認会計士として経営に関する専門知識が見事に融合したものだ。特に「動物とその家族の幸せとは何か」という問いを追求する姿勢には、獣医師としての深い愛情と洞察が感じられた。単に治療を提供するだけでなく、動物と家族の関係性を重視する視点は、多くの飼い主にとって共感を呼ぶことだろう。今後の獣医療業界の発展と、ライフメイトが描く未来に注目だ。

稲垣武彦/1982年千葉県松戸市生まれ。東京大学農学部獣医学課程卒業。株式会社日本動物高度医療センターにて約8年間臨床獣医師を経験し、在職中に公認会計士試験論文式試験に合格、2019年公認会計士登録。合格後は四大監査法人やIPOを目指すスタートアップ企業での経営管理業務を経て、2023年に株式会社ライフメイト代表取締役社長に就任。ライフワークは保護犬の里親になること(現在犬二頭を飼育)。