【ナレーター】
モバイルバッテリーのシェアリングサービスを提供するスタートアップ企業「株式会社INFORICH」。
2018年4月に日本初のスマホ充電レンタルサービスとしてリリースした『ChargeSPOT(チャージスポット)』は、現在、駅や空港、コンビニエンスストア、飲食店など、全国で約40,000台のバッテリースタンドを展開し、国内トップシェアを誇る。
2022年に東証グロース市場へと上場を果たし、以降は、アジアへの展開や、自転車や傘といった新たなシェアリングサービスのプラットフォームを構築するなど、その事業領域を拡大させている。
垣根を越えて世界を繋いでいく、創業者の軌跡と、その挑戦に込められた思いに迫る。
【ナレーター】
『ChargeSPOT』は、ただのモバイルシェアリングサービスにあらずと秋山は語る。
【秋山】
弊社のバッテリースタンドには全てサイネージが付いているため、レンタル業だけでなく、広告販売も可能です。
サイネージの付いているバッテリースタンドは国内には約40,000台、海外に設置しているものを含めますと約60,000台有しているため、バッテリースタンドの設置も弊社の1つの資産だと思っております。
その他にも、ソフトウェアビーコンと連携して人流データを取得できることや、プッシュ通知機能を備えているのも『ChargeSPOT』のサービスの特徴といえるでしょう。
また、シェアバイクやシェアルーム、カーシェアリングといったChargeSPOT以外にもシェアリングサービスを統括しました。
弊社が確認しているデータによりますと、モバイルバッテリー以外のシェアリングサービスを利用されているChargeSPOTのユーザーは約3割です。
このデータに基づいて「複数のシェアリングサービスを1個のプラットフォームで使えたらもっと面白いんじゃないか」という考えから、様々なサービスを一つにするスーパーアプリ化したプラットフォームも既にリリースしており、アップセル要素を見出しております。
“日本で生み出してブラッシュアップをし、海外に橋掛けをしていく”――。そんなネットワークとエコシステムを提供できる会社でありたい、と考えております。
【ナレーター】
秋山の原点は学生時代にある。かねてから音楽が好きだった秋山は、友人の影響でHIPHOPに傾倒し、ラッパーとして2007年にユニバーサルミュージックからメジャーデビューを果たす。このときの経験は、今にも活きていると振り返る。
【秋山】
僕はHIPHOPのカルチャーにおいて、直接的な表現ができるという点がすごく好きなんです。
胸襟を開いて、飾らないありのままの思いを何でも話すことは、信頼に繋がっていく。これは、経営においても大切だと感じており、自分を表現する方法ではないかと思います。
【ナレーター】
その後、アーティスト活動で培った海外ブランディングの経験を活かすため、2012年にコンサルティング会社を設立。なぜ経営者の道を歩むことになったのか。
【秋山】
僕の音楽っていうのは表現であり、“日本と中国の橋掛け”を目的とした1つの手段でした。アーティスト活動中は“日本と中国の間にどういう風に橋掛けをしていけるのか”と常に考えていましたね。
その後、経営者になって何ができるのか考えた際に思い付いたのが、香港に進出する日本企業の誘致支援です。
ただし、香港誘致はあくまで第一歩。ゆくゆくは“日本を中心としたアジアの橋渡し的な存在になりたい”という思いで、コンサルティング業を展開するになりました。
【ナレーター】
日本と香港のクロスボーダービジネスを中心に海外事業展開、ブランディング、企業買収、海外上場の実務に携わるなど、数多くの実績を残してきた秋山。
さらなる発展のため、2015年にINFORICHを設立し、2018年4月に日本初のモバイルバッテリーシェアリング『ChargeSPOT』を発表した。認知を広げるために秋山が強烈に意識したこととは。
【秋山】
『ChargeSPOT』のサービス開始に伴い強く意識したことは、設置スピードの速さです。
モバイルバッテリーのシェアリングサービスは海外で既に展開されており、日本で展開させるのはスピード勝負だと思っていましたので、バッテリースタンドを全て無料で設置できるようにしました。例えば設置に関して月額料金を設けてしまうと導入スピードがダウンしてしまいますので。
ただ、無料で設置できるとなると「こんなうまい話あるの?詐欺なんじゃないの?」という意見もありました。しかし、サービスを成功させるためにはスピードが重要だと考えていたため、当時は全ての知恵を絞って最速で設置していける方法を探していましたね。
【ナレーター】
秋山の戦略が功を奏し、『ChargeSPOT』は現在約40,000台と、国内では8割を超えるシェアを有するほどに成長を遂げた。様々な挑戦をしてきた秋山は、苦境にこそ奮起するという。
【秋山】
僕は「もう駄目だ」と思ったところからがスタートだと思っております。苦境に陥っている際に、いかに希望を持って前進していけるかが大切。状況は徐々に変わるものではなく、「駄目だ」と思ったところから奮起してスタートすると考えています。
“闇は暁を求めて”という言葉が僕はすごく好きなんです。
空は夜明け直前が一番暗いもの。朝日が昇ることを確信して、そこを踏ん張れたら朝日が見える。そのため、「今までで一番無理だ」と思う局面が迎えたら、「一番成功が近い」と思い、何事にも臨んでいます。