
1997年、新卒一期生として飛び込んだのは、当時まだ無名だった株式会社長栄。マンション管理の最前線で顧客と向き合い折衝力を磨き上げたのが、現在代表取締役を務める舩井渉氏だ。同社は現在、約29,000室を管理し、圧倒的な入居者ファーストの姿勢で選ばれ続けている。「不動産屋ではなくサービス会社」と言い切る舩井氏に、現場で培ったマインドと、お客様の生活にワクワクを届ける独自の生存戦略、そして未来のビジョンをうかがった。
新卒一期生から社長への軌跡 退路を断ち現場で磨いた「折衝力」
ーーまずは、貴社に入社された経緯から教えてください。
舩井渉:
私は1997年の入社ですが、その頃は就職氷河期でした。さらに私の場合、社会福祉学部で学んでいたものの自分は福祉には向いていないと感じており、確固たる目標もないまま就職活動をしていました。そんな中、さまざまな企業を回った末、一番最後に参加したのが弊社の説明会でした。当時は社員数も少ない小さな会社でしたが、当時の社長(現会長)の話を聞いて、マンション管理という仕事に大きな可能性と魅力を感じ、入社を決意しました。
ーー入社後はどのような業務を経験されましたか。
舩井渉:
新卒一期生として入社し、最初はマンション管理の現場実務、緊急作業などありとあらゆることをやりました。マンション管理は、入居者様のお困りごとに対応するクレーム産業の側面もあります。利益が相反するオーナー様と入居者様の間に立ち、丸腰で折衝するような場面も多々ありました。しかし、逃げずに真っ向から取り組むことで相手に通ずるものがあり、うまく処理できたときには自分の折衝力が上がっていくのを感じました。
毎日いろいろなことが起こり、同じ日がない変化に富んだ環境で、気づけば20数年があっという間に過ぎていましたね。精神的にしんどい時もありましたが、つらいことは自分が望まなければ長くは続かないものです。四六時中どうすればよくなるかを考え抜くような厳しい環境に身を置いていると、ふとした瞬間にパッと閃くものがあり、そうやってワクワクしながら仕事に向き合ってきました。
「小さな積み重ね」と圧倒的な入居者ファーストが選ばれる理由

ーー多くのオーナー様や入居者様に選ばれ続ける、一番の強みは何でしょうか。
舩井渉:
現在、弊社は管理物件数を伸ばし、約2万9000室を管理するまでになりました。私たちは自らを不動産屋ではなく、「日々の住環境を快適にするサービス会社」だと捉えています。オーナー様にとって一番大事なお客様は入居者様です。ですから、弊社の最大の強みは入居者サービスの充実に注力していること、つまり「できるだけよいお客様に、長く住んでいただくこと」を最重要視している点にあります。
ーー入居者サービスとは具体的にどのようなものですか。
舩井渉:
お困りごとがあった際、いかに迅速に対応できるかが極めて重要です。弊社では、夜間であっても自社の担当者が直接現場へ向かいます。修理や応急処置をすぐに行い、その場で対応が難しいものは後日しっかり対応する旨をお伝えする。こうした他社に真似できない現場での迅速な対応力と、日々の些細な困りごとにすぐ駆けつける「小さなことの積み重ね」こそが、数あるマンション管理会社のなかから弊社が選ばれ続ける最大の秘訣です。
自主性を重んじる社風と3年かけて育てる人材育成
ーー社内の評価制度や社風について教えてください。
舩井渉:
「やる人はより多く、やらない人はそれなりに」という、公平な評価基準が長年続いています。人の道に反することや他人に迷惑をかけること以外であれば、何でも挑戦してよい会社です。時代の変化に合わせて自分で考え、社内ベンチャーのようなマインドで動ける人を歓迎していますし、実際に社員が主体となって入居者サービスの会社を立ち上げた実績もあります。
ーー若手社員の育成についてはどのようにお考えですか。
舩井渉:
新卒で入社した社員が、一人で現場を回せるようになるまでには大体3年程度かかると考えています。マンション管理は、春夏秋冬の季節ごと、あるいは学生向けかファミリー向けか、エリアや物件の種別によっても対応が異なります。そのため、年間を通じてさまざまな経験をし、それを一通り身につけるにはやはり3年が必要です。時間をかけてじっくり育成し、質の高いサービスを提供できるスタッフを育てる体制を大切にしています。
生活のインフラとしてお客様の人生に関わる企業へ
ーー今後のビジョンや展望についてお話いただけますか。
舩井渉:
単なるハード面の管理にとどまらず、「長栄の物件での暮らしは楽しい」と思ってもらえるようなワクワク感を提供していきたいです。その一環として、イチゴ狩りや水族館の貸切など、入居者の皆様に喜んでいただけるイベントを開催しています。今後は、こうした独自のイベントを関西圏にとどめることなく、各拠点で単独開催できる体制を目指し、全国の管理物件数をさらに拡大させていくという具体的な展望を描いています。
ーーお客様との関わり方も今後変わっていくのでしょうか。
舩井渉:
今後は、さらにお客様との接点を増やしていくつもりです。ハード面のお困りごとを解決するだけでなく、お客様の生活のあらゆる場面で頼りにしていただける企業を目指していきます。さらには、全国に拠点を広げることで、弊社の管理物件間であれば、ホテルを替えるような感覚で、自由に、手軽に引っ越しができる仕組み「借り+(カリタス)」も広げていきたいですね。将来的には、日本クオリティの管理サービスを海外へ展開することも視野に入れ、挑戦を続けていきます。
編集後記
無名だった時代の同社に新卒一期生として飛び込み、現場の最前線で泥臭く折衝力を磨き上げてきた舩井氏。その言葉の端々には、現場への深い理解と、入居者一人ひとりの生活を豊かにしたいという強い思いが溢れていた。クレーム産業と言われる業界において、「不動産屋ではなくサービス会社」と言い切る同氏の姿勢は、業界の常識を覆す力強さを持っている。全国展開、そして海外へと広がる同社のワクワクするような挑戦から、今後も目が離せない。

舩井渉/1975年生まれ、大阪府高槻市出身。花園大学社会福祉学部卒業。1997年に新卒採用第一期生として株式会社長栄に入社。主要事業である不動産管理事業を中心に、営業部門の責任者として長年にわたり同社を牽引してきた。管理部長、常務取締役、取締役専務執行役員などを経て、2025年6月に代表取締役に就任。子会社2社の代表取締役を兼任する。趣味は休日の農作業。