※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

徳島県で創業して再生可能エネルギー事業を展開し、いち早く上場を果たした株式会社グリーンエナジー&カンパニー。現在は東京と徳島の2本社体制で全国に事業を拡大し、「新しい常識で、地球と人をグリーンにする。」というパーパスのもと、系統用蓄電所の開発から個人向けのエネルギーサービスまで多角的な事業を推進している。大手住宅メーカーでの営業や、厳しい経営環境にあった地方建設会社の再建担当役員というキャリアを持つ代表取締役社長の鈴江崇文氏。地方の活性化を起点に日本のエネルギーインフラを変革しようと挑む同氏に、その使命感と戦略、経営の根底にある美学に迫った。

「当たり前」を徹底する企業再建から学んだ経営の本質

ーーまずは、起業されるまでのご経歴を教えてください。

鈴江崇文:
大学卒業後は大手住宅メーカーに就職し、消費税増税後の厳しい市場環境の中で住宅営業の道を歩み始めました。私自身の根底には「与えられた役割をまっとうする」という生き方があり、いかに成果を上げるかをとことん考え抜いてきた自負があります。その後、29歳で経営不振に陥っていた地方建設会社の再生担当役員に任命され、6年間の再建業務に向き合うことになりました。

これらの経験を通じて得た現在の経営の基盤、それは「当たり前のことを徹底する」という教訓です。業績が悪化する理由はシンプルで、当たり前のことを着実に実行していない事実に尽きます。私は本質からずれることが嫌いで、何事も原則に則って成し遂げてきました。事業再生も起業も、本質は変わらないと実感しています。

ーー貴社を創業した背景には、再建業務の経験がどう影響していますか。

鈴江崇文:
業界の古い体質を自らの手で変えたいという強い思いです。再建業務に関わる中で、地方の建設業や不動産業界の閉鎖的な面を目の当たりにしました。その原体験から「自分が何かを変えなければいけない」という使命感を抱き、再生の経験を活かして起業したのです。

創業後、最初に手がけたのはコンパクト住宅です。高い断熱性と省エネ設備で消費を抑え、再生可能エネルギーによって年間のエネルギー収支を実質ゼロにする「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」という、当時はまだ高価だったこの高機能住宅を一般家庭にも購入しやすい価格設定で提供することで、新たな市場を切り拓いてきました。この事業が現在の基盤のひとつになっています。

「社会の役に立つ×お金をかせぐ」使命感と戦略の両輪

ーー新たな市場を切り拓く中で掲げたパーパスにはどのような思いが込められていますか。

鈴江崇文:
パーパスの原点の話になりますが、私は起業家として何を成すべきかと深く思考しました。その結果、「社会の役に立つ×お金をかせぐ」の両立に行き着いたのです。会社や社員、お客様を守って利益を上げることは大前提です。しかし、私はそれ以上に、経済的な波及効果と社会的意義の双方を追求したいと考えました。その中で、私たちの強みを活かしながら、地方の活性化を通じて社会に変革をもたらすことができる巨大な産業が、再生可能エネルギーだったのです。

ーー事業を展開する上で、地方というフィールドを重視する理由は何でしたか。

鈴江崇文:
地方市場に注力することには、私たちの使命感と戦略の両方が込められています。日本の人口の3分の2は地方に住んでおり、一つの巨大な市場を形成しています。人口減少により縮小していく社会においては、新しい挑戦を続け、常識を更新していかなければなりません。地方創生という理想論だけでなく、確実な経済効果を生み出せる緻密な戦略があるからこそ、私たちは地方というフィールドを重要視しているのです。「社会の役に立つ」と「お金をかせぐ」のどちらか一方だけでは、いつか無理が生じて自らを偽ることになります。私は嘘をつくのが嫌なので、思い切り稼ぎ、思い切り社会の役に立つ事業を展開したいのです。

インフラ構築から個人への還元へ 貫かれる社長の「美学」

ーーその使命感と戦略を具現化するために、現在どのような事業に注力していますか。

鈴江崇文:
誰もが小さなグリーン発電所を持ち、そこから得られる収益で人生の選択肢を増やせるようなサービスの構築に注力しています。具体的には、インフラ整備として系統用蓄電所の開発を進めており、2029年までに全国で125箇所設置することを目標としています。電気が余る昼間に電力を蓄え、不足する夜間に供給することでエネルギーの無駄を防ぐ事業です。

ただ、これは第一段階に過ぎません。私たちが目指すのは、多くの人々が自らエネルギーをつくり、それを活かして稼げる社会の実現です。中大型の蓄電所を普及させてコストを下げ、将来的には一般家庭にも導入しやすい環境を整えます。環境への配慮と、個人の人生を豊かにする収益性の両輪を回す仕組みをつくっているのです。

ーー環境への配慮と収益性の両立という事業構築の根底にある信念を教えてください。

鈴江崇文:
「強くないといけないけど、優しくないといけない」という言葉が、私の揺るぎない美学です。強さがなければ仲間や家族、社員を守ることはできません。しかし、強いだけでは価値がないのです。会社組織も同様で、ビジネスとして確実に稼ぐ「強さ」と、社会や地球環境に貢献する「優しさ」の両方が絶対に欠かせません。この美学は、私たちの会社の方向性と一致しています。

ーー最後に、今後の展望と求める人物像についてお聞かせいただけますか。

鈴江崇文:
まずは、エネルギー分野を代表する事業規模への成長を目指しています。社会に対して発言権を持ち、日本を変革していくためには、少なくとも売上高にして1000億円の事業規模が必要だからです。

そして、今後の組織拡大において私たちが求めているのは「起業家精神のある人」です。カンパニーという言葉の語源は「一緒にパンを食べる仲間」だといわれています。主体的に思考し、未知への挑戦をいとわない人とともに語り合い、新たな事業を創出していきたいと考えています。エネルギーをグリーンで稼げる環境に優しい資産に変え、社会に実装していく。そんな未来をともに面白がれる仲間を待っています。

編集後記

「嘘をつくのが嫌だ」と語る鈴江社長の言葉には、確かな説得力と全くぶれない軸があった。インタビューを通して最も強く感じたのは、一切の綺麗事を排し、物事の本質だけを見つめようとするその真っ直ぐな姿勢である。一見相反するように思える「優しさ」と「強さ」を妥協なく追求し、一つのビジネスモデルとして昇華させる手腕には、社長自身の確固たる信念が息づいている。エネルギーの常識を覆し、人々の選択肢を豊かにしていく同社の未来が、取材を終えた今、非常に楽しみでならない。

鈴江崇文/大手住宅メーカー勤務や企業再建を経て、2009年に株式会社フィット(現グリーンエナジー&カンパニーグループの基盤)を創業。再生可能エネルギー事業を展開し、徳島県企業として初めて東証マザーズ(現グロース)市場へ上場。地域や個人が参加する分散型エネルギー社会「マイクロGX」を提唱し、系統用蓄電所事業を推進。「新しい常識で、地球と人をグリーンにする」をパーパスに掲げている。EO瀬戸内第6期会長、徳島大学非常勤講師。