
工場の自動化に不可欠な電気設備を、設計から施工まで一貫して手がける株式会社サコテック。関東から九州まで広がるネットワークと、顧客の要望に迅速に応えるフットワークの軽さを強みとする。同社を率いる代表取締役社長の迫裕一郎氏は、社長の役割を「社員が働きやすい環境を整えること」と語り、予算から施工管理まで現場に大きな裁量を与えるスタイルを貫く。社員一人ひとりの自主性を重んじ、人との繋がりを経営の核に据える同氏に、その経営理念と会社の未来像について話を聞いた。
家業の継承を見据えた製造現場での研鑽
ーー貴社に入社されるまでの経歴についてお聞かせください。
迫裕一郎:
大学卒業後はすぐに家業へ入らず、一度留学に出た後に恩師の方に紹介いただいた製缶会社に入社をしました。というのも、将来的に家業へ戻ることを見据えて、まずは「ものづくりの現場」を自分の目で見ておきたいという思いがあったのです。その会社では、新入社員として現場の調整のような業務を担当しており、そこで得た知見や人脈は現在においても大きな糧となっています。そして3年間勤務した後に、25歳のタイミングでサコテックに入社しました。
ーー貴社に戻られてからの経験と、社長就任の経緯について教えていただけますか。
迫裕一郎:
こちらに戻ってきて、まずは工場の現場に入りました。私の専門が電気ということもあり、この会社の基盤となる電気関係の仕事から始めました。途中からは現場の所長なども経験し、さまざまなお客様のところへ足を運びながら仕事の幅を広げていきました。
そして、会社が40期を迎えるタイミングで社長を交代しました。社員やお客様とはこれまでも付き合いがあったので、その点の心配はありませんでしたが、いざ就任となると正直、プレッシャーや不安の方が大きかったです。社長という職責の重さを理解していたからこそ、「これから会社をどう舵取りしていけばいいのか」という漠然とした不安がありました。
社員の裁量を最大化する「任せる」経営
ーーご自身が考える「社長の仕事」とは何でしょうか。
迫裕一郎:
私が考える社長の仕事は、従業員の幸福を追求すること、その一点に尽きます。そして、その幸福を実現するためには、もちろん会社を成長させていかなければなりません。
お客様への貢献や、事業領域を拡大すること、そして若手の育成も重要な経営課題ですが、これらは幹部が責任を持って実行してくれます。私の役割は、幹部や社員が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整備すること、そして自律的に仕事に取り組めるように支援することだと考えています。社長の私が最前線ですべてを行うのではなく、権限を委譲し、社員一人ひとりの力を最大限に引き出すための基盤を作ることが、私の務めだと捉えています。
ーー社員の方とのコミュニケーションで配慮されていることはありますか。
迫裕一郎:
業務後、一緒に食事やお酒の席を共にし、そこでさまざまな対話をします。キャリアの話はもちろん、社員たちは誰もが社長相手にしても気兼ねなく、自由に意見を発信してくれます。私も自身の考えは伝えますが、どちらかと言えば聞き役に徹しているかもしれません。互いに本音で語り合えるフラットな関係が築けていることが、弊社の強みだと感じています。
このコミュニケーションの基盤があるからこそ、社員には主体的に考えて動いてもらうのが一番だと考えています。お客様の開拓から予算の策定、受注から施工、職人の段取りまで、基本的にすべてを任せています。一人ひとりが持つ裁量は、かなり大きいと思います。もちろん、売上などに大きな変動があった時には確認しますが、トラブル発生時以外は現場からの相談がほとんどないほど、個々の判断を尊重しています。
小規模組織ならではの迅速な意思決定の強み

ーー貴社の事業内容と、他社と比較した際の強みについて教えてください。
迫裕一郎:
工場の電気設備全般を手がけ、お客様からのご相談を受け、設計、製作、工事、そして試運転まで一貫して対応できる体制を整えています。
小規模な会社ならではのフットワークの軽さが最大の強みです。また、関東から九州まで支社、支店を構えているため、広範囲のエリアに対応できる点もお客様からご評価いただいています。業界としては、特に食品関係のお客様とのお付き合いが深く、多くの実績があります。
ーーフットワークの軽さは、具体的にどのような場面で発揮されますか。
迫裕一郎:
大企業と比較すると、判断のスピード感も、社員に任されている裁量のレベルも全く異なります。大手さんだと、担当者は業務の一部分しかわかっていないということもあるかもしれませんが、弊社は社員が全体を把握しています。だからこそ、トラブルがあった時などにも迅速に対応できるのです。業務を一貫して任せているからこそ、お客様からのご相談にもすぐに応えることができます。
失敗を恐れず未経験に挑戦する次世代育成
ーー今後、会社として特に注力していきたいテーマは何ですか。
迫裕一郎:
現在お付き合いのあるお客様を大切にすることは当然として、事業規模をさらに拡大していきたいという思いがあります。食品や鉄鋼に加え、自動車など、今後はさらに多様な産業分野へも貢献の幅を広げ、バランスの取れた事業構成を目指したいと考えています。
また、技術的な面では、省人化や、次々と出てくる新しい技術に積極的に取り組んでいく方針です。特に、製造現場における自動化は引き続き重要なテーマであり、既存のお客様に対しても、より観測域を広げた自動化の提案を強化していきます。新しいものが次々と誕生する中で、従来のやり方にとどまらず、新しい技術を取り入れながら、さらなる成長を目指していきます。
ーー次世代の育成、今後の採用についてどのようにお考えでしょうか。
迫裕一郎:
次世代の育成においては、何よりもまず「経験を積んでもらうこと」を重視しています。社員には失敗を恐れずにチャレンジしてほしいと伝えており、未経験の業務にも果敢に挑戦してもらっています。たとえば、新設工場の立ち上げといった大規模な案件を若手に任せることもあります。できることなら失敗はしてほしくありませんが、失敗を恐れてチャレンジしない社員からは、新しいアイデアは生まれてこないと考えています。もちろん、最終的な責任は私たちが負い、万全のバックアップ体制を敷いています。
そして、そのような環境で活躍できるのは、向上心を持っている方です。弊社は裁量が大きく、自律的に仕事を進めていくスタイルですので、向上心があれば技術でも人間関係でも飛躍的に成長できます。逆に言えば、成長意欲がなければ、後輩に追い越されてしまうこともあるかもしれません。「何かを成し遂げたい」というモチベーションで入社された方には、その分、やりがいがある環境だと考えています。
ーー5年後、10年後を見据えた会社の将来像をお聞かせください。
迫裕一郎:
様々な業種のお客様と共に、多様な仕事に挑戦し続けていきたいです。現在のお客様を大切にしながらも、発展していくような会社とはずっとお付き合いをしていきたいと考えています。新しいことに挑戦されているお客様とご一緒することで、私たち自身も成長できますし、そこから新たな出会いや学びが生まれます。多様な経験を積む方が、仕事は間違いなく面白くなります。「電気設備」と言っても分野は幅広いですから、現在展開している分野以外もどんどん開拓し、企業としてさらに成長していきたいと考えています。
ーー最後に、会社経営において最も大切にされていることは何でしょうか。
迫裕一郎:
何よりも「人」です。企業の成長を支えるのは、まさに「人材」であり「人財」にほかならないと考えています。社員同士の「和」を大切に育みながら、私が定年を迎えるまでに従業員100名体制を築き上げるのが具体的な目標です。
特に、今の時代は転職が当たり前になり、社員の「和」を作るのが難しいと感じています。だからこそ、新年会や社員旅行、業務後の食事といった交流の場を大切にし、社員同士はもちろん、協力会社やお客様とのつながりも深めていくことが、会社を支える強固な基盤になると信じています。
編集後記
「すべて任せる」という迫氏の思いの根底には、社員一人ひとりの主体性に対する深い信頼がある。社長の役割を「社員が働きやすい環境を整えること」と定義し、予算策定から現場管理までを任せる独自の組織論は、社員が自己成長と企業成長を同時に実現できる、強い自律分散型の組織を生み出している。成長意欲を持つ個人に大きな裁量と舞台を提供する同社の挑戦は、これからキャリアを築こうとする求職者にとって、まさに飛躍の機会となるだろう。

迫裕一郎/1975年5月生まれ、大阪府出身。大阪工業大学を卒業後、製缶会社に入社。3年間務めた後に、25歳で株式会社サコテックに入社。趣味はゴルフとアウトドア。