※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

1988年に設立された東日本ニューハウスを前身とする、ヒノキヤグループ。「桧家住宅」「パパまるハウス」「レスコハウス」などの住宅事業を展開するほか、断熱材事業、不動産投資事業、リフォーム事業を手掛ける企業だ。今回は、代表取締役社長の近藤昭氏に、看板商品である全館空調「Z空調(ゼックウチョウ)」や断熱材「アクアフォーム」の魅力、経営理念、今後の展望をうかがった。

グループを強化したのち、自身の体験をもとに低コストの全館空調を開発

ーー社長就任後の取り組みをお聞かせください。

近藤昭:
社長就任後、2009年に断熱材・防水材メーカーの日本アクアを子会社化しました。日本アクアが開発した、省エネ性能をアップする現場発泡断熱材に巡り合い、「これからの日本の家づくりに必要なものだ」と直感したことが大きな理由です。弊社が手がけるすべての建築に「アクアフォーム」を使用しています。

2001年に初めて木造一戸建ての自宅を建ててから、冬は寒くて夏は暑いといった、日本の住宅事情と向き合うようになりました。また、世の中の流れにおいても、地球温暖化の防止策として、省エネやCO2排出削減が提唱され始めた頃だったといえます。

住宅の高気密・高断熱化を叶えて、消費電力を減らせる「アクアフォーム」は、まさに時代のニーズに合った建築材料です。硬質吹付けウレタンフォームの市場では、国内トップシェアを誇り、ヒノキヤグループの成長においても重要な役割を果たしました。

ーー「Z空調」が誕生した背景もうかがえますか?

近藤昭:
アイデアが生まれたきっかけは、2011年に2度目の自宅を建てるにあたって、全館空調を導入したことです。一年を通して家全体が適温となる快適さは想像以上だった一方で、導入コストと毎月の電気代がかさむこともわかりました。

いくら快適でも、導入のハードルが高いものは弊社の商材には適しません。自社で扱うならば、コストダウンと省エネを実現する全館空調をつくろうと考え、開発を始めたのです。

2016年の販売開始以来、3万件以上の住宅に提供してきた「Z空調(ゼックウチョウ)」は、3社の技術がコラボレーションした全館空調です。建物の断熱・気密には「ヒノキヤグループ」、空調には「ダイキン」、換気には「協立エアテック」の高度な技術が採用されています。

住宅において、部屋ごとにエアコンを設ける日本は先進国の中で特殊です。私は「Z空調」を皮切りに、ガラパゴス化した日本の状況を世界的な標準に変えていきたいと思っています。

「家づくりで社会に役立つ」という思いを社員と共有

ーー社長が大切にしている心得や経営理念を教えてください。

近藤昭:
自分の仕事が、いかに社会に役立っているかを常に考えてきました。今は家づくりという事業を通して、日本のさまざまな問題解決に貢献することを大切にしています。高性能断熱材や全館空調の開発も、世の中に良い影響やインパクトを与える取り組みの一環です。

私の考え方は弊社の商品に反映されていますし、もちろん社員とも共有しています。家づくりに対する思いや社会貢献のあり方は、自分たちなりに築いてきたものです。決して他社の真似ではない、魂の部分が伝わることで、多くのお客様に選んでいただけると確信しています。

ーー理念の共有は採用活動にも表れているのでしょうか?

近藤昭:
思い・こだわりを大事にする会社なので、そこに共感してもらえることが前提ですね。住宅業界に興味があるだけでなく、ヒノキヤグループの方針を理解した上で、世の中に商品を広めていきたいと思ってくれる方を求めています。

例年、新卒が約60名だった場合、中途は100~150名を採用しています。カムバック採用も多く、採用フローの簡略化など、2024年に制度化したことも弊社の特徴です。

業界全体の傾向として、特に営業職は隣の芝生が青く見えるので、早期に転職する人は少なくありません。カムバック採用について私としては、一度弊社から離れたとしても、戻ってきた際に他社での学びを活かしてもらえると前向きに捉えています。

事業の存在感を高めて住宅業界を牽引するグループへ

ーー最後に今後の展望をお聞かせください。

近藤昭:
「ヒノキヤグループ2030ビジョン」と称した目標の一つとして、断熱材や空調環境といった機能面が不十分な日本の住宅を、世界レベルに引き上げていきたいと思います。

ヒノキヤグループの取り組みが影響を及ぼす形で、「アクアフォーム」や「Z空調」に近い設備が他社でも当たり前になり、日本のすべての新築住宅に導入される時代にしたいのです。ゆくゆくは、私たちが業界のリーディングカンパニーとして存在感を発揮できるとベストです。

ビジョン達成のためには、業界のイメージアップや人材の確保・育成も課題です。お客様のご都合に合わせて稼働することが多い業界だからこそ、弊社では社員が疲弊しないように業務の効率化を進めています。

会社としては、世の中の動きや日常からヒントを得ながら、自由な活動をしていく組織でありたいですね。これからも、キャリアや年代がさまざまな人たちが混在し続けると思うので、年功序列がなく、みんなに活躍のチャンスがある環境を守っていきます。

編集後記

自らの体験をもとに、グループの看板となりうる設備を開発してきた近藤社長。目の前の数字だけを追うのではなく、自分が心から納得できる商品を売る姿勢が、彼の発想力を日々育てているのだろう。人生の一大イベントである住居の購入。設備の機能性はもちろん、家づくりへの思いを共有できるという付加価値で、ヒノキヤグループは顧客の心を掴み続ける。

近藤昭/1967年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、大手生命保険会社や外資系保険会社に勤務。2001年、株式会社ヒノキヤグループの前身である株式会社東日本ニューハウスに入社。専務取締役、副社長を経て、2009年に株式会社桧家住宅(現・株式会社ヒノキヤグループ)の代表取締役社長に就任、現在に至る。