
インフラという人々の生活の根幹を支える設備業界。2000年の創業以来、水回りやエアコンといったライフラインの工事・保守を担い、お客様の困りごとにどこよりも迅速に応え続けてきたのが株式会社明保設備だ。同社を率いてきた代表取締役会長の田村正明氏は、「社員は家族」「会社は選ばれる立場」という信念のもと、温かい組織づくりと地域貢献を実践している。苦難の独立劇から地域社会への恩返しに至るまで、田村氏の情熱と感謝に満ちた軌跡に迫った。
独立の背景と覚悟 共倒れを防ぐための苦渋の決断と周囲の助けによる再起
ーーまずは、独立に至るまでの歩みについて聞かせていただけますか。
田村正明:
私は15歳の頃、地元で大変お世話になっていた先輩を追いかける形で設備業界に飛び込みました。最初は現場で穴を掘る職人仕事からスタートし、その後24、25歳の頃には独学で図面を引く勉強をするなど、無我夢中で技術と知識を身につけていきました。しかし30代を過ぎた頃、職場環境の変化もあり、今後を考えた末に「独立」という決断を下すことになったのです。
当時は既に32歳を迎えていて厳しい船出でしたが、当時の社長としっかりと話し合い、筋を通した上で前に進むための覚悟の選択でした。そんな私を助けてくれたのが、一緒についてきてくれた協力業者の方々や、困ったときに手を差し伸べてくれていたお客様の存在です。本当に人に恵まれてここまで来られたのだと痛感しています。
ーー独立後、事業を軌道に乗せることができた最大の要因は何だったのでしょうか。
田村正明:
私たちが一番大切にしてきた「相手の立場に立って迅速に対応する」という姿勢です。設備という仕事は、水漏れやエアコンの故障など、お客様が困ったときに連絡が来ます。特にホテルなどの施設では、水が止まれば部屋が使えなくなり、営業上の大きな損害につながりかねません。
だからこそ、人が足りなければたとえ夜中でも私が現場へ駆けつけていました。相手の立場になれば、今すぐ動くべきだということは明確にわかります。その愚直な姿勢を評価していただき、ホテル業界のオーナー様や設計事務所の方々が新しいお客様を次々と紹介してくださったのです。
現在も官公庁など幅広くお取引をいただいていますが、エンドユーザー様との直取引が全体の50%を下回ることはありません。中間業者を挟まず直接やり取りができれば、見積もりから施工までのタイムロスや費用負担を減らせます。「明保設備に任せれば安心だ」という信頼関係があるからこそ、スピーディーな対応が可能になります。創業から25年以上経った今でも、長年にわたり信頼を寄せてくださるお客様との絆が最大の財産です。
「社員は家族」という信念と人間的成長を後押しする資格取得のサポート

ーーお客様との絆を支える社員の育成や、環境づくりで意識していることは何でしょうか。
田村正明:
私は社員のことを「家族」だと考え、自分の「子ども」のように接しています。だからこそ、ただ作業をこなすだけの職人で終わってほしくありません。将来の選択肢を広げられるように、パソコン作業から施工管理、修理技術にいたるまで、幅広い技術や知識を覚えてほしいと考えています。
弊社は未経験で入社した社員であっても、本人の成長に合わせて資格取得を全面的にサポートしています。業務時間を調整して学校へ通わせるなど、挑戦できる機会を惜しみません。資格をとることで本人にも自信がつき、人間的にも大きく成長します。そうやって社員が一人前に育っていく姿を見ることが私の一番の喜びです。また、有給休暇もしっかりと取得できる環境を整え、働きやすい職場づくりを徹底しています。
独自の採用哲学 「選んでもらっている」という謙虚な姿勢
ーー新たな人材を迎える採用活動においては、どのような姿勢を大切にしていますか。
田村正明:
創業当時から一貫して変わらないのは謙虚な姿勢です。たとえば、採用にあたっては「会社が応募者を選んでいるのではなく、会社が選んでもらっている」という考えを持っています。どのような時代であっても、数ある企業の中から弊社を選んでくれたこと自体がありがたいことです。だからこそ、一方的に選考するのではなく、「この会社に入ってよかった」と思ってもらえる環境を用意したいと常に考えています。特別なスキルは求めておらず、誰かに対して熱い思いを持っていて周りのために行動できる人であれば、未経験からでもしっかりと育て上げていきます。
ーーボランティア活動など地域社会への貢献にも注力されているとのことですが、その理由をお聞かせください。
田村正明:
私自身、もともとは他所からやって来て東京の府中市で商売をさせていただいた人間ですから、地元への感謝と恩返しの気持ちは常に持っています。現在は商店街の副会長も務めており、その中でハロウィンイベントを企画し、今では子どもたちだけで1,200人以上が参加する大きな行事に成長しました。店舗を回ってスタンプを集める仕組みにし、普段通り過ぎるお店にも入ってもらうことで地域全体の活性化につなげています。
また、野球教室の開催や小中学校での講師、中学生の職場体験の受け入れなど、地域社会に貢献できる取り組みを精力的に続けています。子どもたちが「この街で育ってよかった」と思える思い出をつくることが、地域の未来の発展にもつながると信じています。
「人の心がわかる人間であれ」 周囲への感謝を忘れない経営姿勢
ーー最後に、次世代を担うリーダーなどに向けてメッセージをお願いします。
田村正明:
まず、次世代のリーダーたちには私をどんどん踏み台にして大きく成長してほしいと伝えたいですね。私が過去にした失敗談も隠さず共有することで、同じ回り道をせず、私を超えていってほしいと願っています。ただし、どんなに時代が変わっても絶対に外してほしくない経営の根幹があります。それは「人の心がわかる人間であれ」ということです。相手の立場に立ち、周りへの感謝を忘れないこと。これさえぶれなければ、どんな困難があっても必ず周囲が助けてくれます。同じ思いを持った仲間たちとともに、地域から愛され続ける企業をこれからもつくっていきたいと思います。
編集後記
「すべては人に恵まれたから」。インタビュー中、田村会長は何度もこの言葉を口にしていた。しかしその背景には、お客様のSOSに夜中でも駆けつけた誠実な行動と、相手の痛みを我が事として捉える深い思いやりがある。社員を「家族」として包み込む温かい愛情と、自らが選ばれる立場であるという謙虚さ。そして「人の心がわかる人間であれ」という揺るぎない信念。この温かく力強い思いが社員一人ひとりに浸透している限り、明保設備はこれからも地域に愛され、確かな歩みを続けていくに違いない。

田村正明/1968年2月生まれ。中学卒業後、設備会社に就職。17年間の経験後、2000年7月に有限会社明保設備を設立し、代表取締役社長に就任。2006年に商号変更。2020年に株式会社明保設備の代表取締役会長へ就任。地元ボランティア団体の会長も経験し、現在に至る。