【ナレーター】
プラントや水道など、人々のくらしや産業に不可欠な社会インフラ。地球規模での人口増加に伴い、新興国や途上国において急速に需要が増加している。
そんなインフラ整備に欠かせないポンプ技術を祖業とし、100年を超えて世界の産業と社会を支え続ける企業がある。株式会社荏原製作所だ。
風水力事業、環境プラント事業、精密・電子事業でインフラを支える設備や製品を開発、設計、製造し、海外売上比率は全体の5割以上。世界トップクラスの産業機械メーカーとして、優れた技術をグローバルに供給している。
自ら創意工夫する熱意で取り組み、誠心誠意これをやり遂げる心をもって仕事をする“熱と誠”を創業の精神として掲げ、イノベーションの伝統を今なお受け継ぎ続ける荏原製作所が見据える、次なる成長ビジョンに迫る。
【ナレーター】
1960年生まれ、東京都出身。少年時代に当時問題となっていた公害の深刻さを知った浅見は、いつか自分がその問題を解決しようと、環境保全に関する学科があった横浜国立大学へ進学。そこで出会った企業が荏原製作所だった。
当時のエピソードと入社の決め手とは。
【浅見】
荏原製作所から来られていた先輩がいらして、どういう会社なのだろうと資料を見ていたら、当時NOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)が、発電所で原料や重油を燃やした時に出てくる化学物質の中に入っていて、それを電子線を使って、外に出る前に処理できるというのを荏原がロールアウトしようとしていたのです。
そういうことが色々書いてあって、面白そうだなと思いました。あとは水の処理のことも書いてあり、「ここを受けて見ようかな」と思ったのが、今から思うと荏原製作所に入ったきっかけですね。
少年時代というか子どもの頃の原体験というのが、何か判断するという時には結構引っかかってくると言いますか、私にとって環境というのが、そのキーワードだったのかなとは思いますね。
【ナレーター】
荏原製作所へ入社後はLNGなどの極低温用ポンプの技術営業部に配属。キャリアを積み重ねていった浅見は、その実績を買われ、31歳の時に精密・電子事業で取り扱う半導体製造機器のアメリカでの拡販責任者に抜擢され、渡米する。
その経緯について、浅見は次のように語る。
【浅見】
日本の半導体メーカーが私どものお客様なのですが、そこに納入させていただいた製品を海外のメーカーが欲しいという機運が高まり、アメリカに工場つくったのです。
工場つくったけど、売れないとしょうがないよね、あなたが行って売ってくるんだぞと、現地の営業担当者と一緒にお客様のところへ行って売ってくるようにと命じられました。
日本の装置メーカーに販売したものがアメリカに入っているということはあったのですが、荏原製作所が直接アメリカで営業して販売したことは、当時が初めてでした。
【ナレーター】
ゼロからの営業活動だったが、時流も幸いし苦労は少なかったという。その中で、前会長であり当時上司であった矢後夏之助氏から得た、ビジネスパーソンとしての心得とは。
【浅見】
営業担当は当時私だけだったので、「あなたは会社の代表としてお客様のもとに行くのだから、あなたがお客様に言った言葉は、会社としての言葉になるよ」と言われました。
だから「YES」「NO」がはっきりしない場合は、いい加減な答えはするなと。「分かりませんので確認させて下さい」と言って時間をいただきなさいと。
なぜならば、お客様は私が言った言葉でアクションを起こし始める。その発言が間違っていた場合、お客様は間違った情報にもとづいてアクションをしてしまうので、とんでもないことになる可能性もある。
だからそれだけは絶対にしないで、相手が言っていることが分からなかったら、格好悪くてもいいから何回でも聞き直して、言葉を変えたり、ホワイトボードに書いたり、図を描いたりして、100%わかるまで「YES」「NO」は答えないという教えが、私の軸になっていると思いますね。
【ナレーター】
半導体業界は変化のスピードが早く、対応がしきれずに顧客から叱責されることも少なくなかった。しかし、この時の顧客と一緒に課題を乗り越えるという経験が今の自身をつくり、社員にも経験してほしいことでもあると浅見は言う。
【浅見】
お客様からは「すぐ持ってこい」と言われるので、最初はうまくいかないものです。「わかりました、ちゃんと持っていきます」と言って持っていっても、最初そういうことが起こると、お客様はとてもお怒りになります。
でもお客様が真剣に怒っていればいるほど、その製品がお客さんにとってどれほど大切な物なのかというのがわかるんですよね。問題を解決して、何とかお客様の望まれているようなものに仕上げられたあとは、本当に嬉しそうな顔をされるのです。
恐らく私はその経験があったから、今まで色々なことがあっても頑張ってこれたのだと思います。
社員を育てるのは、やはりお客様だなと思いました。そういう真剣な顔、怒った顔、喜んだ顔に触れることは、やはり人間に響くじゃないですか。答えようとしたり喜びが得られたりと、それで人間は変わっていきます。
そんな経験がそれこそ社員、人間を育てるのかなと思うので、そういう機会をなるべく社員には経験して欲しいと思っています。
【ナレーター】
その後も着実にキャリアを重ね、2019年、社内に設置された指名委員会からの指名により、代表執行役社長に就任。知られざる就任のエピソードに迫った。
【浅見】
全社目線での考えも含めた評価プロセスがあった上で、あなたが社長ですと指名されました。
元々主力の風水力事業は収益性もそれほど高くなく、課題を抱えているということもそのプロセスの中でわかった上で、これはなんとか収益性をあげて会社を変えてよくしなければならない、さらに100年、継続的に社会に貢献するような事業体で在り続けなければいけない。
そういった意識を持つようになり、今は使命感のように思っているので、選ばれた時には頑張ろうと思いました。
経営者プロフィール
氏名 | 浅見 正男 |
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役職 | 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 兼 COO |
生年月日 | 1960年4月7日 |
出身地 | 東京都 |
座右の銘 | 継続は力なり |
2010年4月 当社執行役員
2011年4月 当社精密・電子事業カンパニー営業統括部長
2014年4月 当社常務執行役員
2015年6月 当社執行役常務
2016年4月 当社精密・電子事業カンパニープレジデント
2019年3月 当社取締役(現在)
同 当社代表執行役社長(現在)
会社概要
社名 | 株式会社 荏原製作所 |
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本社所在地 | 東京都大田区羽田旭町11-1 |
設立 | 1920 |
業種分類 | 機械器具製造業 |
代表者名 |
浅見 正男
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従業員数 | 連結 19,095名 単体 4,287名 |
WEBサイト | https://www.ebara.co.jp/ |
事業概要 | 1912年の創業以来、水と空気と環境の分野で、優れた技術と最良のサービスを提供しつづけ、世界中の産業とくらしを支えてまいりました。 水の安定供給から水害防止など幅広く社会やインフラを支える風水力事業、エネルギーや資源の有効活用を追求し持続可能な社会の実現に貢献する環境事業、最先端の技術でくらしの進化を支える精密・電子事業で、時代ごとの社会課題を解決します。 |