【ナレーター】
そして2000年、山梨県にオキサイドを設立。しかし信頼や実績がなかったため資金集めが難航。その姿を見て支援を買って出たのが山梨県だった。
【古川】
私たちは製造業なので結晶をつくる装置が必要です。その装置って1台約5000万円するんですよ。2台必要なので合計で1億円。
仮に資金調達で装置を買ってもその後の運転資金なども必要ですよね。そのため、立ち上げ当時は、製品開発以前に資金調達ができずに苦労していました。
すると、山梨県から筑波の研究所を支援しようと申し出があったんです。しかも、山梨県は宝飾産業が盛んな地域です。地場産業の将来にもつながるし是非応援したい、と山梨県より約1億円の装置購入の支援をしてくださりました。
当社を信じて、それだけの判断をしてくれたことに本当に今でも感謝しています。
【ナレーター】
支援を経て、単結晶メーカーとしての歩みを着実に進めたオキサイド。成長を加速させるきっかけとなったある決断とは。
【古川】
ソニーが撤退したレーザーの事業の技術を買い取ると、従業員に言うと全員が反対しました。ソニーが赤字だった事業で、ましてや結晶のことしかわからない自分たちに装置のことができるわけがないと。
しかし私は、マイナス要素よりもプラス要素がたくさんあると考えました。
お金で解決できる以上にプラス要素があるということと、もし当社がやるのであれば、ソニーを退職してでも当社に移ってやりたいと言ってくれる人たちがいたのです。
それらを踏まえて、是非当社で一緒にやりましょうとレーザー事業への参入を決めました。その判断がとても良かったと思います。
志というか、やはり当社はこういうために存在しているんだと。大切な日本の技術をしっかりと守って、さらに成長させていかなければならないと思いました。
【ナレーター】
自身の経験を踏まえ、従業員にあることを繰り返し伝えているという。
【古川】
1年ではそんなに何度も厳しい経験はできないので、疑似体験をしなさいと伝えています。
たとえば本を読んで「こういうことがあるんだ」と疑似的に学ぶこと。あるいは諸先輩方の話を聞く、ですね。私自身も本を読んだり、人の話を聞いたり、自分自身を成長させるための行動を20年間やり続けています。
【ナレーター】
そして2021年4月、東証マザーズへと上場を果たしたオキサイド。古川が想うオキサイドの在り方とは。
【古川】
大切なのは、成功例をつくることだと思います。
やはり成功例があると、次に続く人がいるんですよね。当社は上場したため、株主やステークホルダーのためにもこれからどんどん成長させていきますが、会社を大きくすることが自分たちの役割だとは思っていません。
これから会社を立ち上げる人たちをサポートすることが、自分たちの役割かなと思っています。それが上手くいくと、いい循環を生み出します。そういったことに、これから10年は挑戦したいですね。
【ナレーター】
在るべき姿を実現させるため、現在オキサイドには多くの成長の場があると古川は語る。
【古川】
会社の仕事を通して、自分の価値を上げたいと努力する人であれば、今の当社の業務と丁度合ってなくとも、入社すればその人にとってプラスに働くと思います。
当社は研究開発型のベンチャー企業のため研究者もエンジニアの人もいますが、上場してからはアドミニストレーションや経理、財務や営業も必要です。
大手の企業で必要なさまざまな部門は、小さい企業でも必ず必要なもの。多種多様な業務を数人で兼務して行なうことで、仕事を通して様々な学びを得ることができると思います。
本当に、自分の専門範囲を広げたり、深掘りしたりしたい方には大きいチャンスがあると思っています。
-大切にしている言葉-
【古川】
会社を始めるときには迷っていましたが、以前スタンフォード大学でお世話になった先生に相談したところ「人生で一番大切なものは何か知ってるか」と言われました。
何なのか聞くと「リスクだと思ってリスクを取らないのが一番のリスクだ」と言われたんですよ。その先生はベンチャーをやりなさいと言ったのではなく、どんな職業を選択しても自分の先輩と同じことをやっていてはダメだと。
会社員でも公務員でも、つくられたシステムの上で仕事をしたくないと思うのなら、それとは異なることに挑戦してみなさいと言われました。今、思うと本当に良いことを教えてくれましたね。