株式会社アロバ 代表取締役社長
白砂 晃

白砂 晃(しらまさ あきら)/1974年広島県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。NTT、株式会社サイバーエージェント、株式会社シーエー・モバイルを経て、2002年株式会社フォトクリエイトを創業。2015年、株式会社ルクレから分社化した、株式会社アロバの代表取締役に就任。

今や至る所で見かけるようになった監視カメラ。その監視カメラを管理するソフトウェア事業で、8年連続で国内シェアNo.1を誇る会社がある。
2009年~2015年におけるネットワークカメラ(IPカメラ)の出荷台数の平均成長率は、世界で122.4%、日本で118.8%と、今後も高い成長が予測される。その市場拡大に伴ってますます発展を期待されている、株式会社アロバの白砂晃(しらまさあきら)社長を訪ねた。
インタビューでは国内シェアNo.1に上り詰めた同社の舞台裏や今後の目標などについて語っていただいた。

本ページ内の情報は2016年10月当時のものです。

導入は1万社以上、8年連続で国内シェアNo.1の実績

まずは御社の事業内容についてお伺いできますでしょうか?

白砂 晃:
当社は監視カメラ録画システム「アロバビュー」を提供している企業です。2007年にソフトウェア会社・ルクレの一事業部門として立ち上げ、2015年に分社化しました。当時、監視カメラはアナログカメラが主流でしたが、いずれデジタルに変わると確信していました。デジタルになるとそれに伴いソフトウェアが必要になります。そこでデジタルカメラによって撮れた画像を再生、保存できる機能を設けたソフトウェアの提供からスタートしました。

当社の強みはマルチベンダー対応です。通常は導入した監視カメラのメーカーが提供しているソフトウェアを使用しますが、当社はどのメーカーのカメラの映像も見ることができます。また火災報知機の作動時に、その周辺にズームして記録するなど、ほかのシステムと連動させたカスタマイズが可能というところも大きな特徴です。

国内でのシェアがNo.1だと伺いました。

白砂 晃:
お陰さまで1万箇所以上にご導入いただき、8年連続で国内シェア1位を達成致しました。世界的シェアではデンマークとカナダの2社がダントツですが、どちらもインターフェイスは英語で、詳細なカスタマイズにも対応していないと聞いています。当社は日本語のインターフェイスで、さらにお客様からの要望が高い、詳細なカスタマイズにも対応させていただいております。

かゆい所に手が届く、多様なニーズへの対応力

アロバの映像解析サービスは、クライアントのマーケティング・リサーチの一助を担っている。

トップを走り続けるために、どのようなことを大切にされていますか?

白砂 晃:
当社のシェアが伸びた背景として、監視カメラのメーカーがソフトウェアをアップデートし続けていくのはコスト面などでも大変なため、ソフトウェアのみを提供している企業から導入するという考え方が広まってきました。

市場自体はどんどん拡大しており、ハードウェアはどんどん安くなっていくため、ソフトウェアはそのニーズの多様化に対応していくことが大切です。

我々ベンチャー企業は、いかにお客様ごとのニーズをくみ取り、いかに早くそれに対応していくかがカギです。当社では技術者がどんどん開発し、すぐに製品化します。そのスピードが重要で、しかもそれを安価にご提供できれば他との差別化も図れます。

お客様のニーズはどのように多様化してきているのでしょうか?

白砂 晃:
分かりやすいところで言うと、監視カメラの導入によって「犯罪が起きないようにしたい」「映像の分析により売上を上げたい」などのご要望があります。

売上を上げるための方法としては、監視カメラは秒あたり何コマかの写真の連続で構成されていますが、その一コマずつを解析することで、さまざまなことが見えてきます。例えば小売店の監視カメラでは、この地域・この時間帯では、どの年齢層のどの性別の方が多いなどが分かります。それらの情報を解析し、マーケティングに活用していきます。

社風はベンチャーでありながらも落ち着いた雰囲気

御社の経営方針についてお聞かせください。

白砂 晃:
スピードと、常に業界内で先頭を走るということを大切にしています。市場が出来上がってくると、やはりそれを牽引し続けたい。そのためには、自分たちの戦える場所がどこかを認識しておく必要があります。巨大企業ができていない部分を探して、攻めていくことですね。より早く技術ギャップを見つけていくことで、どんどんビジネスチャンスは生まれます。

社員とは3ヶ月に一度面談を実施。社員一人ひとりが輝けるような職場づくりを目指している。

また人材の「材」は財産の「財」だと考えています。社員には、より人生が豊かになるように生きてほしいですね。まず一人ひとりが輝かないと、他者を幸せにはできません。社会を良くするためにも、まず個人の幸せ度が重要です。働くのは辛い部分も多くありますので、個人がその現実と向き合いながら、会社とベクトルを合わせて運営していくことを目指しています。

御社では何か特徴的な取り組みをされていますか?

白砂 晃:
社員会を月1回開いて、各部門から進捗状況などの報告をしていますね。あとは「四半期レビュー」ですね。目標管理制度で、個人が何を成し遂げたいかを決め、3カ月ごとに面談するという取り組みです。やはり自分が動きたいと思わないと実践できませんので、その内容と会社のベクトルを合わせるようベンチャーならではの柔軟性をもって進めています。ベンチャー企業でもだいたいレビューは半年ごとですので、それだけ当社は進化のスピードが速いということです。

また、採用については、技術者は技術力と、当社で幸せになれるかという点を考慮して選びますが、営業部門では、地頭の良さよりも性格の良さを重視します。明るさと向上心があるかが大切で、ミドル世代の営業マンが多い中で、何かを変えられるようなパワーを持っていることを重視しています。

グローバルに人に寄り添い、未来を見据える

社内での打ち合わせ風景。アロバでは個人ではなくチームでの成果にこだわる。

これから力を入れていきたいことは何でしょうか?

白砂 晃:
皆がプロ意識をもって、チームで動くことですね。これまでは個人で動くことが多かったため、一人ではできない仕事、チームでしか出せない成果を求めます。その仕事を通じて変わっていくということを今は重視しています。

また成果を出す上でも、数字が先に走ってはいけないと考えています。先にあるべきは自分たちがどうありたいかなどのポリシーです。数字だけを優先すると良くない方向に進むこともありますので。もちろんプロである以上数字は必要ですが、当社では個人の幸せと数字の両方が得られるようにしていきたいです。

今後の目標について教えてください。

白砂 晃:
監視カメラは人間の目の代わりとしてセキュリティーの役目を担います。今後もニーズに応じたカスタマイズは続けたいですね。世界的に犯罪の起きにくい社会を創りたいです。また個人商店などにも、監視カメラを用いた解析の重要性をもっと広めていきたいとも考えています。

さらに、実際にお店を利用しているお客様の“心地よさ”などを数値化し、よりよい空間づくりに活用したいと思っています。数値化することで目標達成に向けてのプロセスもすべて数字で把握でき、分かりやすい。そんなツールを作りたいですね。ただ、なんでも自動化・数値化しすぎると人の機微が失われるということにもなりかねません…。これからの時代「人間力」を身につけることも重要でしょう。

私は経営者に必要なのは、未来をよむ技術、数字で見る技術、人に寄り添う技術の3つの技術だと考えています。全世界70億人の人口を視野に、グローバルに人に寄り添って、未来を見据えて展開していきたいです。

編集後記

この取材中、白砂社長は「社会を良くしたい」「日本を良くしたい」「世界から見た日本の評価を良くしたい」と仰っていた。企業の利益だけでなく、社会全体、日本の発展のために事業を展開し、そのフィールドは確実に世界に向かっていると感じた。