2017年6月20日、東京都内の某レストランにて、株式会社オークローンマーケティング(ショップジャパン)代表取締役社長、ハリー・A・ヒル氏をゲストにお招きし、第1回『社長との懇親会』を開催しました。

当日は、20代のビジネスパーソンの方や、通販番組に携わられていらっしゃる方、ワーキングマザーの方など、さまざまな職種、立場の方が集まり、参加者の方の個性的な自己紹介や、ヒル社長の軽妙なトークで、終始和やかに会は進みました。

「ロングセラーを生み出すためには」「部下のモチベーションを上げるにはどうしたらいい?」など、ビジネスパーソンとして気になる質問が多く飛び交った今回の懇親会。当日の様子をまとめました。

『社長との懇親会』とは

メディアから注目される経営者の方に、ビジネスに関する疑問やプライベートの過ごし方まで、様々な質問を直接聞くことができる、少人数制の懇親会です。

オークローンマーケティング(ショップジャパン)社長 ハリー・A・ヒル氏とは

今回のゲスト、ヒル社長は、米コーネル大学卒業後、来日。1999年に通販番組『ショップジャパン』を運営するオークローンマーケティングに入社後、コールセンターを統括し24時間コールセンター制度を導入すべく自社でコールセンターを開設するなど、日本におけるテレビ通販業界の高品質なサービスの基礎を打ち立てました。2006年に代表取締役社長に就任後、『ビリーズブートキャンプ』や『ワンダーコア』など、多くのヒット商品を世に送り出してきました。

社会現象になった『ビリーズブートキャンプ』を振り返って

2007年に国内でも大ヒットし、社会現象を巻き起こした『ビリーズブートキャンプ』。ビリーが法被を羽織って来日した際には、ビートルズを彷彿とした人も多かったのではないでしょうか。主要キー局の生番組に出演し、東京ドームシティでのイベントも行った3日間、日本は『ビリーズブートキャンプ』旋風が巻き起こり、関連商品の売上も一気に伸びたそうです。

その年、195億円の売上を叩き出した『ビリーズブートキャンプ』でしたが、翌年には9000万円まで落ち込んでしまいました。そんな状況にも関わらず、オークローンマーケティングの経営が傾くことはありませんでした。

「ひとつの商品に頼っていることは危険です。常に新商品を舵取りしながら、ロングセラーを育成することが大切」とヒル社長は語ります。運営する『ショップジャパン』では、通販業界では異例となる多くのロングセラー商品を保有しています。どのように商品の魅力を顧客に届けているのか、その点についてもヒル社長ならではの戦略を知ることができました。

お客様を理解する

「テレビの視聴が減ってきている中、テレビショッピングを運営する上でどんな対策を取っていますか?」という質問に、ヒル社長は、オムニチャネルの有効活用のほかに、データに基づいた適切な導線を敷くことの重要性を話しました。

日本人は住んでいる地域や年齢層、職業などによって異なる属性を持っています。ヒル社長が震災復興で訪れた東北の漁師の方々は、朝3時に起きてテレビ通販番組を見ていると、ヒル社長に話したそうです。例えば、油を使わないフライヤ―であれば、健康を気にする5、60代のメインターゲットとは別に、3、40代は「揚げ物をする時間がない」という理由で“手軽さ”を求め購入します。

同じ商品を紹介するにも、この2つの購入層にはそれぞれ違ったメッセージを選択する必要があります。データを綿密に分析することで、どの商品がどの属性とマッチするかを把握し、各属性に届きやすいメッセージを送ることが重要になると言います。

「データに基づいてお客様を理解し、最適な商品、コンテンツ、値段、場所を融合させることが、我々の商売だと思います」


費用対効果と併せて、どのような導線を構築していくかを工夫するマーケティング戦略の重要性を改めて知ることができました。


「日本人は、属性や場所によって、特徴がすごくはっきりしていますよね。それを無視するのは、ビジネスパーソンとして勿体ない」


ヒル社長の言葉に、参加者の方々も大きく頷いていました。

企業が持つ存在意義

ある参加者の方の質問は、「希望する部署とは違う部署に配属になった新人社員が、モチベーションを無くしているため、どういう風に動機付けをしていったらいいか」というものでした。そのことについて、ヒル社長は、相談された参加者の方に逆に質問しました。

「あなたにとって、あなたの会社の存在意義は何ですか?」

ヒル社長は続けます。


「自分の会社の存在意義をしっかりと理解し、伝えることが大切です。その意義に共感できないなら、たぶん辞めた方がいいかもしれない。でも、共感できるなら、自分たちの仕事がその意義を成すための重要な要素であるということに気づき、モチベーションに繋がります。自分の存在意義が先にあって、『誰のために仕事をしているんだろう』と考えてしまうと、不安になってきてしまうのだと思います」


ビジネスパーソンにとっての1つの命題を、質問者の方はヒル社長から投げかけられたとも言えるでしょう。

目の前のことに集中せよ!

多くの質問が飛び交う中、「家族との時間と仕事の時間のバランスが上手く取れない」というワーク・ライフ・バランスに関するお悩みが聞かれました。それに対して5人のお子さんをお持ちのヒル社長は、目の前のことに集中することが大切だと伝えました。

「今、私は東京と、家族のいる名古屋を行き来していますが、名古屋にいるときは、余程のことがなければ家族に集中しています。外に出たら仕事に集中。ワーク・ライフ・バランスは、長いスパンで考えなければいけません。今月はどうしても……と言う時もあるでしょう。ただ、大切なのはパッと切り替える集中力です。ドアを開けて、子どもがいたら子どものことしか見ません。例え3時間であっても、集中したらその効果は1日分にもなると、私は信じています」

成功している人=多趣味な人!?

オークローンマーケティングに入社後、僅か7年で売上を3倍にまで引き上げたヒル社長のプライベートについても迫りました。


ヒル社長は、毎日5時前には起床しメールチェックを行った後、6時半から1時間、みっちりトレーニングをしてから出社されるそうです。トレーニングの内容は、日によって、キックボクシングや筋トレ、ヨガなど、1つの種目に絞って集中して行うそうです。少林寺拳法の有段者で、指導者の免許も保有されているヒル社長ならではのストイックな朝の日課に、参加者一同驚きを隠せずにいました。

「成功している人は、意外と多趣味な人が多い」とヒル社長。ご自身でも、劇団に所属され、舞台の稽古もされているそうです。

「特に若い人には、時間がないからと妥協せずに、全部できるんだと考えてほしい」と言います。

「良い習慣を作ること。そしてそれを継続すること。仕事でもプライベートでも、集中する。そして何よりも、自分の時間や人生を“自分で支配する”ことが大事です」

参加した方のご感想

Mさん(20代・会社員)

社会的にまだまだ若手として認識される年次の私にとって、第一線でご活躍される皆様とご一緒させて頂けたことは、大変貴重な経験となりました。「あなたの会社の社会的な存在意義は?」というお話が印象的で、狭い視点ではなく、社会全体から自社、並びに自分を俯瞰的に見ることが必要だと思いました。この度の経験を生かし、次に繋げたいと思います。本当にありがとうございました。

Tさん(30代・会社員)

大企業のトップと話せる・考えを聞けるというだけでも貴重なのに自分の悩みや疑問に答えて、それが説得力があるので、他では得られない体験でした。とても貴重でためになりましたので、第二回、第三回を希望します。

Aさん(40代・営業コンサルタント)

楽しい時間を過ごせて幸せでした。特に印象に残ったヒル社長の言葉は、パッション(情熱)です。「何事にも情熱を持って行動すれば、夢の扉が開く」ことを、改めて教えて頂いたヒル社長に感謝いたします。このような機会を与えていただき、本当に感謝いたします。

Mさん(40代・個人投資家)

同席の方々もユニークで非常に刺激ある時間を過ごすことができ楽しかったです。和気あいあいとした雰囲気の中、完璧な日本語を操るヒル社長もコミュニケーションを楽しんでいらっしゃいました。多忙なスケジュールにある社長の、仕事以外の一面に触れることもでき、また機会があれば参加してみたいと思います。

最後に

まだまだ話したいことがたくさんある中、あっという間に終了の時刻が来てしまいました。最後は記念撮影を行い、お開きとなりましたが、参加者の方々は興奮冷めやらぬといったようでした。参加者のそれぞれの悩みについて、真摯にアドバイスをくださったヒル社長。社長の多彩な経歴や豊富な経験から導き出される言葉は、どれも胸の中にストンと落ちてくるものでした。参加者の方たちにとって、これからのビジネスパーソンとしての人生をどう歩んでいくのか、そんなことを今一度立ち止まり、考える時間となった懇親会でした。