テクノロジーの進化に伴い、AIやIoTといった新しいビジネスが誕生するその裏で、日本の農業は衰退傾向にあります。農業を営むことにより得られる農業所得はピークだった1978年の5.4兆円から3.8兆円(2017年)と約30%減少しています。

さらに、2018年に農林水産省が発表した「農業就業人口及び基幹的農業従事者数」によると、農業従事者の平均年齢は66.6歳と高齢化が進み、その影響で耕作放棄地も増加するなど、深刻化しています。

これらの問題を解決に導くため、ITを駆使したビジネスを展開する「農業ベンチャー」に注目が集まっています。

今回はその中でも一際成長を続けるベンチャー企業を3社ご紹介します。

※本ページ内の情報は2019年12月時点のものです。

【目次】
1.株式会社農業総合研究所
2.株式会社アグリメディア
3.ベジタリア株式会社
まとめ

1.株式会社農業総合研究所

出典:農業×ITベンチャー企業 | 株式会社農業総合研究所

株式会社農業総合研究所は、北海道から沖縄まで92拠点を構え、8,700名を超える農産物の生産者と、1,400店舗以上の販売者(※)を繋げるプラットフォームを提供する農業ベンチャーです。

生産者自らが販売価格や出荷先を指定でき、地方にいながら都会のスーパーマーケットに自身が生産した商品の販売ができるという、全く新しい流通プラットフォームをつくり、農業の6次産業化に成功しました。

代表取締役会長CEOの及川智正氏は、会社員を6年間経験した後に妻の実家で新規就農。2年目に独立し、一時は廃業寸前になりながらも、販売先や顧客の要望を叶えることで生産者の価値が高められるという実体験に商機を見出し、現在の事業の着想を得ました。

及川会長はインタビューの中で、「今後、農業を他の業界よりも収益性が高く、かつ携わる人の成長が見られるビジネスへ昇華させ、魅力ある事業にしていきたい」と語ります。

生産者と販売者というお互いに大切であるにも関わらず遠い存在だったもの同士を、ITのプラットフォームでマッチングさせることで農業の新たな形を生み出した農業総合研究所。

同社が掲げる使命と、経営において大切にしている2つのポイントとは。詳細はインタビュー動画をご覧ください。

株式会社農業総合研究所 会長インタビュー動画

農業に情熱を!「IT×農業」成功の経験則

株式会社農業総合研究所 代表取締役会長CEO 及川 智正

2.株式会社アグリメディア

出典:株式会社アグリメディア 公式HP

株式会社アグリメディアは、都心部のお金が農家に流れず、農家の所得が上がらないという状況を打開するため、「都市と農業をつなぐ」をコンセプトに、全国93ヶ所運営している 農園がレンタルできる『シェア畑』や(※)、野菜の収穫から実食までの体験を提供する『ベジQ』など、農業に関する事業を多角的に展開する農業ベンチャーです。
※2019年9月時点

出典:農業を“儲かる”ビジネスに--都市と農業をつなぐアグリメディア - CNET Japan

代表取締役社長の諸藤貴志氏は大手不動産会社に入社後新規事業の立ち上げを任され、その成功経験から自らビジネスを始めようと、改善余地が大きいと感じた「農業」に注目し、農業を営む同級生とともに株式会社アグリメディアを設立しました。

「CNET Japan」のインタビューの中で、都心部と農業のつながりだけではなく、自治体との連携についてもこのように語っています。

「農業を通じて人を呼びたいというニーズがほとんど。地域に良いものがあっても、見せ方の問題で呼べていないことがある。2018年から道の駅の再生などもしながら、集客を支援していきたい」
引用元:農業を“儲かる”ビジネスに--都市と農業をつなぐアグリメディア - (page 2) - CNET Japan

農業に関連する様々なニーズを満たすために、積極的に新規事業に取り組む株式会社アグリメディア。

2019年11月には4.5億円の資金調達を実施しており、着実に事業規模を拡大しています。

3.ベジタリア株式会社

出典: ベジタリア株式会社 vegetalia, inc.

ベジタリア株式会社はロボット技術や情報通信技術を活用する「スマート農業」の先駆けで、IoTセンサーや人工知能、データ分析などの最新IT技術を使い、農業を経験則だけではなく気候などの情報をシステムで管理することで高品質な農産物の収穫を支援する農業ベンチャーです。

スマート農業だけではなく、世界で8億人分の食料が病虫害によって失われているという問題を解決すべく『ベジタリア植物病院』という病害虫防除のコンサルティングサービスも提供しています。

出典:history | ベジタリア株式会社 vegetalia, inc.

代表取締役社長の小池聡氏は、東証マザーズに上場しているIT企業ネットイヤーグループ株式会社の創業者でもある名経営者。2009年に就農し、そこでの経験から「これまでの農業の常識」を疑った小池社長。

そして、ITの力を使えば感覚に頼らずに持続可能な農業ができるのではないかと考え、2010年にベジタリア株式会社を設立しました。

小池社長は、自社サイト「HISTORY」の中で、農業を情報で管理することの有効性についてこのように語っています。

「IT業界に長く身を置いていた経験を生かし、私は“経験戦”ではなく、“情報戦”で農業に挑もうと考えました。温度・湿度、日射量、土壌水分など、農地の情報が計測できるセンサーはないかと「フィールドサーバ」を探し出し、農地に導入しました。その翌年、私の農園は豊作に恵まれました。私はこの経験を通し、科学的な方法が、経験則だけでは実現できない農業を可能にすることを知りました。」
引用元:history | ベジタリア株式会社 vegetalia, inc.

IT業界で大きな存在感を示していた小池社長が率いるベジタリア株式会社。ITと農業の融合により、どのような次世代農業が生まれるのか、今後も目が離せません。

まとめ

IT技術の導入により、光が再び照らされつつある農業。

ご紹介したどの会社にも共通するのは「農業をもっと素敵な業界にしたい」という想いでした。人手不足で儲からないというイメージからの脱却は時間の問題かもしれません。

参考サイト:
生産農業所得統計:農林水産省
農業労働力に関する統計:農林水産省
FY2019.8 決算説明資料-株式会社農業総合研究所
貸農園のアグリメディアが4.5億円調達 新規事業に  :日本経済新聞
アグリメディア諸藤「農業は行き詰まっている。だからチャンスなんだ」 | FastGrow
挑戦者2018:諸藤貴志 アグリメディア社長 都市近郊の遊休地を市民農園に | 週刊エコノミスト Online
農業を“儲かる”ビジネスに--都市と農業をつなぐアグリメディア - (page 2) - CNET Japan
病虫害や収穫時期も予測可能に AI活用が農業に起こす革命 | 月刊「事業構想」2017年4月号
history | ベジタリア株式会社 vegetalia, inc.