日本を代表する株式市場である東京証券取引所(以下、東証)。大企業が名を連ね、国内の90%以上の株式が取引される市場に上場することは、企業にとって事業成功のひとつの指標といっても過言ではありません。
近年ではスタートアップに対する支援が増える一方、上場直後に業績の下方修正を発表する会社が相次いだことから、新規上場の審査は厳しくなる傾向にあります。特に東証第一部では、上場企業の絞り込みも議論されています。
また、上場のタイミングは企業の将来性はもちろんのこと、その時代のマーケット環境にも大きく左右されるものです。
そこで今回、日本取引所グループが提供する東証新規上場会社数のデータを元に、2001年以降で新規上場社数の多い年の上位5つをランキング形式にまとめました。(※)
多くの企業が上場を果たした年には、どのような時代背景があったのか。1位から順にご紹介します。
※ランキングの新規上場会社数は東証の第一部・第二部、新興市場、TOKYO PRO Marketの合計で、IPO・経由上場・外国会社・テクニカル上場を含みます。
1位:2004年【153社】
最も新規上場社数が多かったのは2004年で「153社」。
この年は第一部・第二部に96社が上場したことに加え、マザーズに57社が加わりました。
日本経済が1990年代のバブル崩壊から徐々に持ち直し、株価が上昇に転じたのが2003年。2004年に上場社数が最多となったことは、景気が上向く当時の気配を表しているといえるでしょう。
同年開催されたアテネ五輪では水泳の北島康介選手らの活躍で過去最多16個の金メダルを獲得、20年ぶりの新札発行で千円札は野口英世、五千円札は樋口一葉に刷新されるといった出来事もありました。
この年に上場したのは、ネットリサーチの株式会社マクロミルや検索エンジン・ポータルサイトなどを運営するエキサイト株式会社などです。
ICT(情報通信)ベンチャーと呼ばれる企業の上場は28社にのぼり、2001年~2002年のITバブルが終焉してもICT企業への注目が続いていることがわかります。なお、米国ではグーグルが上場を果たした年でもあります。
2位:2003年【120社】
2位は1位の前年、2003年で「120社」。
第一部・第二部に87社、マザーズに33社が上場しています。
2002年と比べ、第一部・第二部の上場社数の増加は1社ですが、マザーズへの上場が8社から33社に急増したことが、合計数を押し上げる形となりました。2003年はイラク戦争が勃発し、日経平均株価がバブル後底値(7,607円)をつけた年でした。
しかしその後株価は急反発し、振り返れば上昇に転ずる機運が高まっていた年といえます。六本木ヒルズなど東京都心の大型ビルが続々と完成したのも2003年が中心でした。
2003年に上場したのは、価格比較サイトなどを運営する株式会社カカクコムや、ソフトバンク子会社のワイモバイル株式会社(当時はイー・アクセス株式会社)、100円ショップでお馴染みの株式会社セリアなどです。
ちなみに2003年と2004年はマザーズ上場が急激に増加した一方、10年後にはその30%の企業が上場廃止になっています。マザーズ上場は2003年から2006年まで特に活発でしたが、新興市場そのものが試行錯誤の時代であったともいえそうです。
3位:2018年【115社】
3位は2018年。
東証にジャスダックなどが加わったことも影響し、第一部・第二部に26社、新興市場(マザーズ、ジャスダック)に81社、プロ投資家向け市場のTOKYO PRO Market(2009年開設)に8社と、「計115社」の上場となりました。
経済界では11月の日産自動車のカルロス・ゴーン会長(当時)の逮捕に衝撃が走りましたが、リーマン・ショックから10年目となる2018年は、その後の回復基調が続いたことにより、リーマン・ショック以後の新規上場社数は最多となりました。
特にマザーズは、2009年の4社から2018年には66社に増加し、マザーズが1999年に開設されて以降最高の新規上場社数を記録しています。
この年に話題をさらった新規上場といえば、過去最大の市場調達額となったソフトバンク株式会社、日本発のユニコーン企業(企業評価額が10憶ドル以上の非上場ベンチャー企業)として期待が集まった株式会社メルカリが記憶に新しいところです。
全体としては法人向けのIT関連サービスなどを展開する企業が多く、サービス業と情報・通信業が合わせて6割を超えるとともに、低金利を背景に不動産業からの上場が1割を占める年となりました。