乳幼児に接する機会がある人ならば、ベビーカーやチャイルドシート、ベビー用品などに『Combi』のブランドネームを見つけたことがあるだろう。コンビ株式会社は、高品質なベビー用品の開発・販売を主軸に、日本の育児環境の向上をけん引している企業だ。

そして現在、その物流を支える基幹システムの保守・運用を、IT統括部主任の宮本力氏が担当している。新卒入社した宮本氏は、営業職に従事した3年後に全く未経験の分野である社内SE(システムエンジニア)を任され、基幹システムのリプレイスを成し遂げた。

想定外の人事にも、自分に求められていることを冷静に分析し行動する宮本氏が考える、社内SEに必要なスキルとは。

新人時代に心掛けていたこと

―早速ですが、宮本様の現在のお仕事をお聞かせいただけますか?

宮本 力:
社内SEとして、会社の主要な業務を支える基幹システムの販売・物流部門をメインに担当しています。お客様からの発注を受け、出荷から売上げまでの一連の作業を実施するシステムの保守・運用とユーザーサポートです。


―現在はIT統括部でご活躍されていますが、当初は営業として入社されたそうですね。

宮本 力:
もともと自社の製品を取り扱うことのできるメーカーの営業を志望しており、コンビに入社した当初はベビー用品の販売促進グループの営業職に配属されました。

毎日3~4店舗の小売店を回り、商品の説明をしたり販売方法の提案をしたりしていました。当時は、子どもはもちろん結婚もしていなかったので、ベビー用品の使用感をリアルに表現するためにベテラン社員の話をよく聞いて、自分に落とし込んでいきました。

営業では、社内外でコミュニケーションを密に取ることが売上げにも好循環をもたらすと体感できましたし、弊社は数字だけで個人の営業成績を判断するのではなく、そのプロセスを重視する社風だったので、先輩とお客様に育てていただきながら成長できたと思います。

コンビはユーザーにダイレクトに製品を届けることができますし、街中で使用してくださるお客様の姿を見ることもできるので、営業としての喜びを非常に感じていました。

経験ゼロの社内SEでも「成長できる」と確信できた理由

―そんな中、人事異動でIT統括部へ移られました。どのようなお気持ちでしたか?

宮本 力:
モノづくりをする企業で営業がしたいと入社して営業を3年間務め、日々充実していましたので、辞令を受けた当初はまだまだ営業をしたい気持ちが大きかったのは正直なところです。

SEは学生時代からIT経験が豊富な人材がなるものだとの思い込みがあり、具体的に何をする部署なのかも知らなかったので戸惑いはありました。

ただ、弊社の基幹システムへの開発は外部に委託しており、ITコンサルタントと提携を結び協力して業務改善を行う形を採っています。

ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)を採用した基幹システムのリプレイスの機会もあり、そのような場所で私に何が求められているのかと考えると、販売業務の経験を生かすことです。

弊社に必要な社内SEの能力は、現場の状況を理解した上での提案力や業務改善であり、営業経験が役に立つことは間違いないと思うことができました。


―それでも、未経験で基幹システムを変える作業に携わるのは大変なことだと思います。なぜ、やり続けることができたのでしょうか。

宮本 力:
システム関連の勉強は一からでしたし、新システム導入当初はやはりトラブルが多発するので、目の前の問題に必死に対応している状態でした。ただ、これをやり遂げればきっと自分自身が成長できるという確信があったのです。

様々な部署に関わり、調整し、業務提案していくことを一つのキャリアアップととらえることができましたし、大きな費用がかかるリプレイスに携わることに、やりがいと責任感を感じていたから続けられたと思います。だからこそ、3年かけた新システムを稼働できたのは、とてもうれしいことでした。

コミュニケーション能力を生かし、現場の悩みの本質を見抜く

―どのようなことを重視して、社内SEとして活動されているのでしょうか。

宮本 力:
ユーザーの業務をどれだけ理解できるかは非常に重要ですね。私の場合は主に販売に関わるユーザーがメインになりますが、その業務だけを見るのではなく、他のプロセスを含めた全体像を知って、初めて運用や改善の適切な提案ができるようになります。

動いて当たり前の存在であるシステム運用は、上手くいくか、いかないかの二択です。つつがなく運用するには、事前にプランを立てたりプロセスを知ったりすることが必要だと心掛けています。

それらを実践するために、営業で培ったコミュニケーション能力でユーザーと対話し、分析し、提案していく力はとても役に立っています。また、失敗してもそれをどのように生かしていくかは常に考えていることです。

培ったスキルを他部署でも生かせるコンビの風土

―全く異なる部署に思われても、培ったスキルを生かすことができるのですね。御社では、部署間の異動は多いのでしょうか。

宮本 力:
人事に希望を自己申告できる制度があり、営業から人事に異動した者もいるなど、部署間の異動はしやすい環境だと思います。私の場合は想定外でしたが、異動によって様々な業務を知ることができたのは大きなスキルアップになりました。

もともと部署間の垣根が低く、コミュニケーションが取りやすい職場なので、一から学ぶことが可能でしたし、私が社内SEとして他の部署のマネージャーなどに意見を言っても受け止めてもらいやすい環境だったと感じています。

現在は弊社でもグローバル化が進んでおり、工場のある中国や香港、韓国などとのやり取りもとても多くなっています。今後は英語ができる人材ならば特に、活躍できる場がさらに広がることでしょう。


―人事に関することのほか、御社の特色ある制度などはございますか?

宮本 力:
ほぼ定時で退社できるということでしょうか。もちろんトラブルが起これば対処しますが、基本皆18時までには帰ります。

プライベートな時間をつくれるから、充実感が増しますね。SEは勤務時間が不規則な印象がありますが、私はユーザーが稼働している時間にサポートしなくてはなりませんから同じような業務体制になっています。

弊社独自の制度としては、国の制度としての育休のほかに、子どもが生まれたら男性社員も2日間以上連続した休暇を取得します。業務にフィードバックできるまたとないチャンスでもあるので、私も機会ができたら活用したいと思っています。

“攻めるSE”として会社全体を動かせる存在に

―最後に、宮本様の今後の展望や課題をお聞かせください。

宮本 力:
今後の展望は、働き方改革や事業戦略につながるシステム運用をしていくことです。

システムにより自動化できる作業が増えれば、例えば営業の場合ならお客様を訪問する機会を増やすことができ、その関係をより強固にすることで売上アップの1つの要因として貢献ができるのではないかと考えます。

効率化には業務内容を深く知らなくてはなりませんが、他部署の仕事はよそにいては見えづらいものなので、改善提案をしつつ進めていくのは、やはりコミュニケーション能力が非常に重要になります。

それをさらに磨くとともに、各部署にIT関連の窓口を設けて、定期的にやり取りしながら課題を抽出し、提案し、システムに採用する流れをつくっていきたいと考えています。

社内SEは守りのポジションに見られることが多いものですが、私は自ら発信し、会社全体を動かせるような、攻めの姿勢を忘れずにいたいと思います。

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編集後記

黙々とパソコンに向かうイメージを持たれがちなSEだが、社内の悩みや要望を適切にシステムに反映するためには現場を理解することが欠かせず、人とのコミュニケーション能力が非常に求められる職種だ。

すでに営業でそのスキルを培っていた宮本氏だからこそ、社内SEとしての活躍も可能となり、広く業務提案に携われる力が生まれたのだと感じた。

宮本 力(みやもと・りき)/1986年生まれ、大東文化大学外国語学部卒業。2009年新卒でコンビ株式会社に入社。約3年間営業を経験し、人事異動によりIT統括部に異動。販売・物流を中心に基幹システム保守運用・サブシステム管理を担当する。IT統括部では、基幹システムリプレイスのシステム担当として導入にも尽力した。座右の銘は「試行錯誤」。趣味は筋トレ、フットサル。

※本ページ内の情報は2019年4月時点のものです。

この企業の社長のインタビュー動画

50年以上支持される「コンビブランド」の源泉と成長戦略

コンビ株式会社 代表取締役社長 五嶋 啓伸